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久しぶりに書きたくなったので悪役令嬢視点のお話を書いてみました。
不定期更新になりますので、暇つぶしにでもお付き合いいただけましたら幸いです。
事故に遭って異世界に転生するなんてよくある話。
でもそれはあくまでも漫画の中の話であって、現実にあるなんて思う訳ないじゃない?
それが今自分の身に降り掛かっている…のだと思う。
そうでなければ日本人として生きていたはずの自分が、目が覚めたら見知らぬ豪華な部屋の、これまた豪華なベッドで寝ているなんて理解できないもの。
しかもこれまでこの世界で生きてきた八歳分の記憶もあるの。
私の名前はフェリーナ・パードリー。
ここ、ヴィアイン王国の四大公爵家の一つであるパードリー公爵家の第三子で、昨日正式に第二王子であるゼレイン・ティア・ヴィアイン様の婚約者に内定したところ。
確かその時のお茶会で初めて殿下のお顔を拝見して、急に既視感を覚えたのよね。
それから一気に前世、と言うのかしら? 日本人だった時の記憶が頭の中に流れ込んできて。その時にこの世界が所謂乙女ゲームの世界なのだと知ったわ。
大学生だった頃に友達に勧められて始めたゲームで、タイトルは『夢色の舞う花びらに乗せて』だったはず。中身はごく普通の乙女ゲームで、ヒロインが平民から聖女になって、攻略対象の第二王子、側近インテリ、側近脳筋、学園の先生、幼馴染の商人と恋愛していく話ね。タイトルの花びらはどこに関係しているのかわからなくて、全ルート攻略した上に攻略サイトまで網羅したのに結局わからなかったから覚えているの。
もちろん私は第二王子ルートの悪役令嬢。
私の名前もゲームの中で聞き覚えがあるし、こうして現実で殿下にお会いして記憶を思い出した時点で関係ないはずがないわ。
つまり、私はこれから出会う聖女様と攻略対象の皆様のための恋のスパイスになれと言うことよね。
……どうしましょう、全く興味がないわ。
私は婚約破棄されようが、聖女様がどなたを選ばれようが、お好きになされば良いと思うの。
私が巻き込まれるのは第二王子ルートを選ばれた場合だけれど、ゲームのようにわざわざ虐めたりする予定もないですし。
そもそも貴族の政略結婚なのですからお互いに親愛は必要だけれど、苛烈な虐めを行うほどの愛情を持つとは思えないのよね。
ストーリーを知っているからといって、断罪を回避するために何かするつもりもないし。
かといって聖女様を応援するつもりもないわ。
私は私として、フェリーナとして幸せに過ごせたらそれで良いのだもの。
なるようになれだわ。
だから私のことは構わずに、皆様どうぞご自由に。
プロローグでした。
次話からは少しずつ登場人物が増えてきます。