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2話はじまり2

 どうやらこの補習を受ける最後の一人は、2-Aの女子生徒の大高春のようだった。黒髪の肩ほどまでの髪をリボンつきのヘアゴムでポニーテルにしている。スカートは学校規定の長さのもの、膝下まである靴下もこんな炎天下だというのにしっかりと履いていることから彼女が真面目な人だということがわかる。

 彼女はこの学校の同学年の生徒なら誰しもが知るほどに見た目が整っている女子生徒だ。彼女が有名人な訳あって俺は彼女がなぜ補習を受けるのかすぐに合点がいった。彼女は1学期の途中からずっと休んでいたため健太郎と同じく出席日数が足りないのだろう。

 もう1人は女性だったのか、話しかけるべきなのか、一人で補習を受けるのも寂しいよな? などと俺が逡巡していると、健太郎が彼女にあっさりと話しかけていた。


「なあなあ、一緒に受けねえ? この補講の受講者数3人らしいんだ。俺は健太郎、こっちは朝田勇気」


「え、いいの? 受ける受ける。私、大高春。よろしくね」


 いきなり男子に話しかけられた彼女は話しかけられた瞬間、少し緊張の色を浮かべていたが、その話の内容が一緒に補習を受けようという提案だとわかると安堵したようで、ニコリと笑った。

 そして、彼女は俺の隣の机の隣の床に鞄を置き座った。


「勇気くんもよろしくね」


 大高さんは俺に視点を合わせるように彼女は俺を覗き見るようにそう言いながら満面の笑みを浮かべた。俺はそんな大高さんにしどろもどろになりつつ、うんと返事をした。


「それにしても、受けるのが2人で良かったよ。私病気で学校休んでいたから心配で」


 大高さんは俺の前の席の椅子を俺たちの方向を向かせる形で座った。


「あー、なるほど。病気で休んでたんだ。俺はバイト優先にしちゃって出席日数足りなくて」


 バイトで学校にいない時間が長いせいか、健太郎はこの学校の有名人の大高さんのこともよく知らないみたいだった。


「俺はただの勉強不足」


 二人はそれぞれの事情から出席日数が足りなくて補習を受けることになっているのに、俺一人だけただ純粋に学力不足なことが恥ずかしく思い、少しぶっきらぼうかつ単純明快にそういう言うと、ふふっと大高さんは笑った。やはり一人だけ、純粋に学力不足ということにウケたのだろうか、と俺は顔が少し熱くなるのを感じた。


「あ、ごめんね」


 大高さんが胸の前で手を合わせて謝罪してきたので、俺も慌てて首を横に振って答えた。


「ううん、全然」


「なんか可愛くて笑っちゃったの」


「お、俺が?」


 うん、と彼女はまたしても笑った。

 男として女性に可愛いと言われることに複雑な気持ちを抱いたものの、クスッと可愛く笑う彼女を見ているとそんなのどうでもいいような気がした。


 まさか大高さんと一緒に、しかも三人という異例の少なさで補習を受けることになるなんて、仲良くなれるかなと、俺は胸を高鳴らせた。

 


「ねえねえ、二人は午前中の数学の補習受けた? 『確率』の問六の括弧三が分からないんだけど、誰か分かるかな?」


 ガサゴソとカバンの中からファイルを取り出した彼女は俺と健太郎の机の間まで来くると、少し屈んで、俺たちに問題を見せてきた。


「俺も受けてたけど、数学はこれっぽっちも分からん。でもさー、補習受けるだけで良くない?」


 卵焼きを飲み込んだ健太郎がそう言うと、彼女はうーんと首を傾げた。


「でも受けるからには理解したくない?」


「ぜんぜん」


 健太郎が即答と彼女は大層驚いたようで、えーっと声を出した。真面目な彼女からしてみれば信じられなかったのだろう。

 そんな二人を横目に見つつ、俺は彼女の持っている少し中身の透けたファイルを覗き見る。英語は壊滅的な点数を取ってしまい、この補習を受けることになったが、数学の方はまあまあ良い点数を取ることができた。そのため、もしかしたら俺は解けるかもしれないと思ったのだ。


「あ、ここ俺わかるかも」


「え、本当に?」


「まず、確率の問題で『少なくとも1回以上』っていう文言出た時はーー」


 俺は彼女に説明をした。結構数学が得意なことに彼女は驚くとともにお礼を言ってきた。


「俺もわかったぞ! ……なんでこの補習を受けてるんだ?」


 隣で相槌を打ちながら話を聞いていた健太郎が首を傾げた。


「他の科目はまあまあ得意な方なんだけど、英語が異常に苦手で……勉強するのも嫌で……関係代名詞とか訳わかんない」


「分かるー」


「なんだっけ、それ」


 ワイワイと三人で話していたら20分以上がすぐに経過し、午後の補習の開始を告げるチャイムがなった。

 大高さんはまた後で話そうね、と席に座る。

 チャイムがなってから数分後、遅れて教室に入ってきた男性教師が気だるそうに補習を開始した。



「おまえらー、寄り道せずにちゃんと帰るように。あと、警報機がなれば早急にそこから離れろよーっ」


 警報器とは、行方不明になる場所を知らせる全国民に配られたGPS付きのアイテムだ。わざわざスマートフォンでいちいちどこがそのスポットかを確認するわけにはいかないという国民の要望に応え、政府が配った代物だった。

 午後五時までの補習が終わり、俺たちは晴れて自由の身となった。もちろん明日からも補習は続くが、この三人で受ける補習に少しだけ楽しみを見出すことができているため、今日の午前中よりは苦に思わなくなっていた。

 補修の合間に挟まれた十分の休み時間もそれはもう楽しく過ごすのとができたのだ。放課後になったが、俺は二人との別れが少し惜しくなってしまっていた。


「ねえ、二人の家の方向ってどっち? 俺は××駅まで歩いて行くんだけど」


「あー、俺反対側だわ。じゃあ校門まで一緒に行こうぜ」


「私も健太郎くんと一緒の方向だな。途中まで一緒に行こ」


 下駄箱まで2人と話しながら歩く。

 補習を受けにきたら、新しい友達ができた。すごく楽しかった。

 明日も楽しみだなーっと思いながら、今まさに玄関口を出ようとしている2人の後に慌ててついていく。

 そうして、俺が2人の後ろに追いつき、2人が玄関口に足を踏み入れようとした時だった。


 ピーという警報器の音を3つの箇所から流れたものの、避けることはできずにそのまま突っ込んでいく。

 俺は『いや、これ避けるの無理だろ』と思いながら意識を失った。

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