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凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜  作者: 真崎 奈南
四章、

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20/40

不器用な結婚生活1(カルロス視点)

 クロエラがルーリアと接触をはかってから三日が過ぎた。

 夜の闇を弱めるように眩い日差しがセレットの管理する庭に差し込み始めた時、自室のベッドで眠りについていたカルロスはぱちりと目を開ける。

 文机の上にある魔法石を掴み取ってポケットに入れると、寝起きとは思えないくらい機敏に部屋を出て、そのままルーリアの部屋の前へと足を進める。「入るぞ」と一応小声で断ってから、室内へと足を踏み入れ、ルーリアのベッドへと近づいていく。

 ルーリアは額にうっすらと汗を滲ませて、苦しげな表情で何かから逃げるように身を捩らせた。

 意識を集中させれば、ルーリアの体の中でふたつの魔力がせめぎ合っているのがカルロスの目に見えてくる。

 とはいえ、屋敷の至る所に魔法石が設置してあるからか闇の魔力にそれほどの勢いはなく、どちらかというとルーリアの本来の力である光の魔力の方が激しさを増しているようだった。


(原因はあの女以外考えられない)


 ルーリアは必死に隠しているが、クロエラが来てから彼女の魔力がひどく不安定であることはカルロスには筒抜けで、それは精神的なものからきているだろうことも判断できた。


(いったいこれまで、ルーリアはどのような目に遭って来たのか)


 クロエラのルーリアに対する態度を思い出すたび怒りが込み上げてくる。しかし、ルーリアがさらに顔を歪めたことでハッとさせられ、カルロスは「さてと」と動き出した。

 屋敷に来た時に彼女が持っていたランタンは部屋の丸テーブルの上に置かれてある。その中にある、すでに真っ二つに割れてしまっている魔法石を取り出し、カルロスは呆れたように肩を竦めた。


(より強い魔力で相手の力を押さえ込むことで、結界として機能させていたのは想像つくが、ここに込められているのは一体誰の魔力だ。名家として幅をきかせている癖にこの程度でしかないというのなら呆れる)


 何か一つの魔力に特化している一族の力には強い圧を感じることが多い。この魔法石の中に残っている魔力は決して弱くはないが、圧倒されるものでもない。


(この相手なら、光の魔力で何らかの勝負をしても負ける気がしない。そうなると現状、ルーリアが一番能力が高いことになるな)


 カルロスはあれこれ考えながらも、用済みだとばかりにそれをテーブルの上に置いて、ポケットから魔法石を掴み取った。

 魔法石をぎゅっと握りしめて目を閉じる。やがてカルロスの体から発せられた光の粒子が魔法石の中へと吸い込まれていった。

 ぼんやりと輝いた魔法石を持ってカルロスはルーリアの元へ戻る。彼女の枕元に置こうとした瞬間、魔法石が一気に熱を持ち、小さな亀裂を生じさせた。

 自分の魔力がルーリアによって打ち破られそうになっているのを目にし、カルロスはわずかに驚き、そしてニヤリと笑う。


「……面白い。受けて立つ」


 そう宣言し、カルロスは魔法石を掴み直した。



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