第二話 これはデートか?
見てくれた方ありがとうございます。
リリスは空を飛ぶのは初めてだったのか窓の外の景色を見続けていた。
「リリス、もうすぐ着くから座ったほうが……。」
「何よ……この街は。」
遥かそびえる摩天楼に気圧されたのか窓の外から離れてくれない。
「詳細なことは地上で伝えます。座ってください。」
秘書である麻衣の声色が少し怖い気がした。リリスは麻衣が怖かったのか渋々席に座る。
「……隣にこんな大きな都市国家が……。」
都市国家?都市は都市だ、このゲームは所詮街ゲーだったはず。
さて上空から古風な市役所が見えてきた。周りは高層ビルに囲まれて、ここだけ時間が止まっているのが上空から分かる。
「ところで麻衣さん、ヘリポートはどこ?」
「うちの役所にはないですね……。そろそろ着陸しますよ。」
現在、俺たちは古めかしい市役所の一室で情報交換をしている。この市役所は周りの高層ビルに囲まれて日陰になることが多い。はあ暗い気分になる。
「ねぇエータ、市長に会わせてくれるの?」
「俺が市長だよ。」
「……嘘よね。からかってるのよね?」
「本当ですよ。市長は中央から派遣された唯一無二の存在です。」
「ごめんなさい……全然そう見えなかったわ。」
リリスは少し心配そうに俺を見た。まぁ為政者に向いていない事は自覚している。しかし彼女も外交官には向いていないのではないか?
「これが夏彩市の資料です。ご確認下さい。」
「人口が十万人!産業にも聞いたこともないものが……たくさん。」
何か目を輝かせてる。リリスのエメラルドグリーンの目と白銀の髪を観察する。服装は古代だから少し残念な気もするけど。やっぱりかわいいよな。
一方、麻衣さんは黒髪ロングで黒目、黒いスーツまで着て完全にお仕事モードだ。
夏彩市の人口は十万人。このゲームは途中で投げたからその程度だ。極めれば百万人も夢ではない。産業は石油、農業、鉱業、林業全て開放して、インダストリー4.0も布告済みだ。何を言ってるかわからない?要はDLCを除けば完璧ってことだ。
「えっと……麻衣?この資料の……。」
「それは……。」
俺?夢の中まで仕事したくはないね。こんな書類とにらめっこしてもつまらないだろうに。というかこの夢はいつ終わるのだろうか?……そうだ。
「リリス、そんな資料よりも外に見に行かないか?」
「……エータは市長でしょう?そんなことして大丈夫なの?」
「大丈夫。麻衣が優秀だから。」
「理由になってないですよ。」
麻衣さんはそんなこと言いながら照れていた。
「それに市長は書類を見なくても把握出来ますからね。」
麻衣の言うとおり、ゲームには統計データを見るモードもある。だから俺が書類とにらめっこする必要はないのだ。
「百聞は一見にしかず。麻衣、リリスは行きたいところある?」
「私は服飾文化が気になるわね。」
リリスはそう言ってくれたが、麻衣は特に何も言ってくれなかった。
◆
さて、ゲームの機能を試してみるときが来た。
cities horizonにおいてプレイヤーができることは数多くあったがその中でも面白かったのは一人称視点モードだ。
普段は街を見下ろす形で開発進めるが、この一人称視点モードでは街の一住民として車を運転したり、歩いたりすることが出来た。俺はゲーム画面を操作して車を呼び出す。
「は?」
摩訶不可思議なゲームのルールは時に虚空から車を呼び出せるのだ。
「何よそれ?」
「市長が市長たる所以ですよ。」
麻衣さんが俺を信頼してくれるのはやはりこの能力によるものが大きい。
今のリリスの格好は目立つからな。俺はドアを開けてリリスに乗るように促す。リリスは恐る恐る車に乗ってドアを閉めた。俺はここから一番近い商業地区に車を走らせる。
「すごいわね、何から何まで私の都市とは違うわ。」
「リリスの街はどんな街なんだ?」
「一週間後見せてあげるわ。」
楽しみだ。
「市長、運転変わりましょうか?」
「麻衣、何で?」
「その……命の危険を感じるというか……。」
麻衣さんの方が運転が上手いのは間違いないだろう。うちの秘書は無駄にハイスペックだ。
「もうすぐ目的地だから帰りに頼むよ。」
「了解しました。」
リリスが物珍しそうに窓の外を見ている。そろそろ商業地区だ。
「エータ、ここが市場なの?」
「そう、ここは小規模な方だけど近いから。」
「これで小規模なのね。」
「懐かしいですね。市長が最初に設定した商業地区だから覚えてますよ。」
「風がなくなって停電したよね。懐かしい。」
「当時は風力発電に頼り切りでしたからね。」
海の上には、海上専用で最新型の風力発電機が何本も建っている。ブレードが螺旋のような形で、かつての三枚羽とは違う。
「でも市長、本当は核融合炉だけで十分な発電量ですよね?」
「あー、聞こえないな。」
風力発電もロマンで置いてあるだけだ。
インフラもあれからだいぶ発展した。ただリリスの街まで条約を結んだらすぐに鉄道と高速道路を整備しないといけない。海沿いにあったから港湾施設も必要か。
何れにせよ更に発展するか、止まって死ぬか。なら進むしかない。
"その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない"時々この言葉を思い出す。
◆
リリスはたくさんの洋服を前に戸惑っていた。
「何よ、この量は!?」
「好きなものを選んでいいですよ。どうせ市長が払いますから。」
……俺のポケットマネーはいくらだっただろうか?どうせ夢だ。気にしても仕方ない。
「……普通は採寸してから……いや技術レベルが違うから生産量も……。」
リリスが小さな声で何か言っている。よく聞こえないがおそらく俺には分からないだろう。
「エータ、これはどういう服なの?」
リリスが持ってきたのは少し変わった服だった。
「ああ、それはチャイナドレスっていうんだ。」
リリスは興味深そうに見ている。麻衣さんは俺が詳しいからか冷たい目で俺を見た。別に良いじゃないか、チャイナドレスぐらい。というか何でこんな小さな店にあったんだ!?そうか、夢だからか!
「麻衣さんも何か買ったら?」
「……まずはリリスさんの服を選びます。」
麻衣さんはクールだ。それにしても彼女はゲームには存在していなかった。でも俺との街づくりの記憶はあるみたいだ。ゲームで描写されていなかっただけだろうか。
「ほらこれとかは?」
俺がメイド服を指差すとゴミを見るような目で見られた。……夢ならもう少し夢らしくあってもいいだろ。
「リリスさんに何を着せようとしてるんですか!?これも外交の一貫なんですよ。」
「文化交流も必要だから……。」
「エータはこういうのが好きなの?」
「そうだね。正直麻衣さんの方が似合うと思う。」
「……馬鹿なこと言ってないで、私が選びますよ。」
麻衣さんがそう言ってリリスに他のものを勧める。麻衣さんが嬉しそうだったのは気の所為だろうか。
結局、彼女は白いワンピースを選んだ。シンプルで正直に言うとそこまで変わっていない。親しみやすいデザインだったのだろう。
「さて、リリス他に見たいものはある?」
「エータ、お腹空いたわ。」
「そうだな、どこか食べに行くか。」
「そういえばエータ、お金持ってるの?」
「もちろん、ゲーム内通貨だけどね。」
俺はこの夏彩市で使える電子マネーの残高を見る。まだ大丈夫だったが収支はマイナスのままだ。でもしばらくは大丈夫だろう。
「げーむ……?」
麻衣さんが首をかしげる。まぁ、夢の中だから細かいことを気にしても仕方がない。
食事をしながら条約の細部を詰めていく。
「お互いの欲しい品目が決まってきたわね。」
「現在、夏彩市は"原材料"が足りていません。」
「私達はあなた方の作る商品が欲しいわね。まぁ難しい話はお父様に任せるわ。関税を調整すればお互いに利益ある取引ができるはずよ。」
リリスは本当に聡明な子だと思う。夢からさめたら俺も頑張らないと。
他の作品も書いてたので良かったらマイページから見て下さい。




