〖奥の手〗
空の上に現れた魔方陣、そこに立つ火柱の中には見知った人影がある。
その男は、現れた。
〖よう、ロードロード〗
金色に輝く大きな翼と金色の瞳。そして銀髪。魔術師チックなローブ服。
〖宣言通り、エヴォルを終わらせに来た〗
ソロモン王の言葉に、ドワーフ大臣が身震いして物陰に隠れていく。まぁ、非戦闘員だから仕方が無い。
俺は上空のソロモン王を睨み付ける。
「俺とは戦わないんじゃなかったのか?」
〖当たり前だ。そこら辺の悪魔より遥かに強力な魔物であるお前と、戦ってたまるか!〗
そこら辺に悪魔なんていないと思うが……いや、ソロモン王は……〖悪魔召喚〗が一番得意な偉人だったと言われているな。
勿論、他の魔術も得意だったらしいが、ソロモン王より上位の悪魔使いは聞いたことがない。
そんな伝承もある以上、かの王が悪魔を見たことがあってもおかしくなさそうだ。
まぁそれはそれとして。
「じゃあソロモン王、何しに来た? 俺の留守中でもないのに、なぜ魔王城の上空にやって来た?」
〖知れたことよ〗
ソロモン王は、掌を構えた。
?
おかしい。分身体は掌から光線出していたけど、本体は見るだけで知恵テイムをしてきた。
なぜかの王は今更、掌を使うのか?
〖切り札を使わせて貰う。まさかドラゴンロード用にとっておいた技を、エヴォルで使うことになるなんてな〗
まだ奥の手があったのか。
ってことは、まさか強力な――、
〖知恵テイム! 白家〗
「――」
俺は絶句。
ソロモン王の掌から、三角錐が出現。
その三角錐は半透明な白色。
三角錐は、どんどん拡大していく。
どんどん、どんどん。
そして、三角錐は巨大な結界となって、ソロモン王を中心とするピラミッドとなった。
「……なんて馬鹿デカイ規模の魔術なんだ」
〖ロードロード、喜べ。この技を使おうと思っていたのは……イエス。ムハンマド。アダム。アブラハム……俺と敵対する可能性があり、この世界で最強の力を持つ可能性がある者達だけだ〗
「ムハンマドも来るのか?」
ソロモン王は首を振る。
〖まぁ、あいつだけは有り得ないな。あいつは高潔過ぎる〗
「高潔?」
〖一応呼んだけど、断られた。何でも、「偶像崇拝禁止」を愛しているから呼びかけには応じられないというコーラン通りの内容さ〗
「……本当に高潔だな。偉人も第二の生なんて興味あると思ったが」
〖他の奴らは、色々あって呼べなかったが……アダムだけは呼べもしなかったな〗
……アダムね。
きっと俺は一度会っているんだろうな。
もう一度、あいつに会いに行かないとな。
【……】
ソロモン王を撃退したら、あいつに会いたい。そして、聞きたい。
〖ロードロード、俺はお前と戦って勝てない自信がある〗
「自慢げに言うことか?」
俺はちらりと周りを見る。
魔王ガンダールヴとレギンが、張り詰めた面持ちで上空を見ている。
〖お前は倒せない。でも、国同士の戦いは別だ〗
「は?」
どういうことだろう?
俺が守る以上、エヴォルに勝つことなんて出来ないのでは……?
〖知恵テイム・バースト! ターゲットは……エヴォル!〗
ソロモン王の掌に、また新しい三角錐が現れた。
その中に、紫色の光が生まれ輝き出す。
輝きは次々に満ちて――巨大なピラミッドまで伝わっていった。
知恵テイムの光が、国中に広がっていく。
「これは、まさか――」
俺は周りを見渡す。レギンと魔王ガンダールヴ、ドワーフ大臣、三名とも苦しそうにしている。
そして窓際に近付き、地面の方を見渡せば――、
亜人が亜人を殺していた。
ドワーフが、オーガを。
オーガが、ドライアドを。
ドライアドが、サキュバスを。
エルフが、ウンディーネを。
多数派、少数派問わず、多くの亜人達が紫色の光に包まれて殴り合っている。
ドクン。
ない筈の、心臓の鼓動。
なぜ起きたかは分からない。
だが確かなことは、俺はキレた。
俺は上空を見て、ギロリと殺意を向け、敵を見上げた。
「おいソロモン王、このクソッタレのスキルを今すぐ解放しろ」
〖嫌だね。俺はエヴォルを殺すんだ〗
かの王は、遥か上空で俺を見下ろす。
〖ロードロード、お前は最強だ。だけど……エヴォルは殺せるんだよ。あと一時間もしないで、全員の脳を破壊する。知恵テイムを使えば……それができるのさ〗
ソロモン王は高笑いする。
ここに来て、俺は覚悟を決めた。
上空にいる魔術王を今日殺すと、決めたのだ。
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