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国中の転移門の乱れ

魔王城最上階。


 まだ戦闘で破壊された名残が残っている。


「魔王様、まだ道テイムで直さなくていいのか?」


 魔王は複雑な顔で答えてきた。


「余も直して貰いたいが、それでは他に回すエナジーが足りなくなる。朝が明ければ余の鍛冶テイムで直すからそのままで良い」


「魔王も結構強い技持ってるよな」


「……道テイムの使い手に言われると嫌味に聞こえるな」


「そんなつもりはないのだが」


「はっはっは、だろうな。勿論、嫌味とは思ってなどいない。だが、な」


 魔王は部屋を一望する。


「随分破壊されたものだ」


 床が破壊され、下の階が剥き出しの場所さえある。瓦礫だらけで、普通の人が歩けば大怪我してもおかしくない。


「まぁ……それより今は、打ち合わせだ。対策会議をするぞ」


 そこには、ケンタウロス族の兵站将軍、序列五位のヒポハス。


 ドライアド族の序列四位リィフィ。


 ケンタウロス族の桃色美少女、序列三位ブーケ。


 ドワーフ大臣と呼ばれる中肉中背の低身長老人、序列二位。


 魔王にしてドワーフロード、序列一位ガンダールヴ。


 サキュバス美少女、序列六位レギン。


 エルフ族美少女、序列七位スレイブ。


 そして、序列九位の俺、ロードロード・ドーロードだ。


 八位の村長……印象が全くなかったあの人だけいないな。


 レギンが俺に笑顔で話しかける。


「ロードロード、治療おつかれ」


「あぁ、大変だったよ」


「だろうね。兵士、沢山いるもんね」


「うん」


「……それより、言いたいことあるんだ」


「何だ?」


「皆も、聞いて?」


 レギンの言葉に、その場にいた全員が耳を傾ける。


「空が、おかしい」


 ……レギンの言葉に、皆が「?」となる。


 俺だけで無く、全員感じられていないようだ。


「空が?」


 俺は空を見上げる。何ともない。


 ただ満天の星空があるばかりである。


「……ロードロード、おかしいの。転移門の乱れが強くなってる」


 転移門。今日度々聞く言葉だ。


「どういうことだ?」


「……こんなの、意図的じゃない限り有り得ない。多分、ソロモン王が何かしてるんだと思う」


 レギンの言葉で、その場にいた全員の顔が凍り付いたように強張る。


「何とか出来ないのか?」


「出来ない。というか……上位サキュバスでも転移門そのものを乱すなんて出来ないんじゃないかな?」


「上位サキュバスってどのくらい凄いのか分からないから、何とも」


「……上位サキュバスの上にいるのは、リリス様ただ一人だ」


 つまり、相当に強いってことか。


「まぁでも、この上だけだろ? ソロモン王が知恵テイムをやった名残って感じで」


「違うよ?」


 レギンは首を横に振る。


「この真上だけじゃない。国中の転移門がおかしくなってる」


「国中の……?」


「ドワーフギルドでは一箇所だけだった。さっきは、魔王城上空が覆われていた。これは、明らかにおかしい」


「……まずいのか」


「うん」


 魔王が、パン、と手を合わせて拍手音を出す。


「レギン、よく報告してくれた。ブーケとヒポハスは兵站部門に至急打ち合わせに行ってくれ。リィフィとスレイブは風魔法で各地に避難警告を。残った者は、俺と相談だ」


「「「「「っは!」」」」」


 魔王の命令で、ケンタウロス族二名とドライアド族一名とエルフ族一名が移動する。


 俺とレギンと魔王とドワーフ大臣が残された。


「何と言うことだ……戦いは、まだ終わってないかもしれないのか」


 魔王は頭を抱える。


 ドワーフ大臣が答える。


「長い夜ですね」


「全くだ」


 俺とレギンは顔を見合わせる。


「ロードロード、大丈夫?」


「何が?」


「エナジー」


「かなり無くなった。でもあと少しなら大丈夫だ」


「……あれ?」


「どうした、レギン」


 レギンは窓の方に近寄った。


「地面が、光ってる」


 地面が?


 俺は地面を見る。


 突如として、地面が光輝いていた。


 よくない予感がした。


 さらに、真上から巨大な轟音。見上げれば、空に巨大な雷が走っていた。


 それは、エルティア王国の紋章。


「……くそ、ソロモン王め……懲りてなかったのか。俺と戦って勝てないとか行って逃げて行ったのに……」


 俺は空を睨んだ。そこに、魔方陣と共に火柱が出現する。

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