〖巨人ネフィリムと精鋭部隊〗
ソロモン王は、俺から視線を外した。
〖知恵テイム〗
空に散りばめられた紫色の魔法陣が――金色に光り輝き、ソロモン王の翼も輝く。
〖エナジーも溜まった。さて、やらせてもらうとしよう〗
……俺は史学科に入るくらい、偉人や歴史が好きだ。中でもソロモン王は……実は特別だった。こんな見方、誰もしてないかもしれない。でも、ポリコレが騒がれるから時代だったからこそ、かの王の生き方は俺の胸を打ったんだ。
『国を発展させるために、移民にも優しくした。結果、カリスマ経営者であるソロモン王がいなくなった時、国が滅んだ』
個人的にはポリコレに近いものを感じる。その王様に嫌われた。
そうか……さっきの魔王ガンダールヴがソロモン王に失望した気持ちって、こんな感じなのかな。
結局、俺を相手にしてくれないんだ。大好きな偉人であっても。だったらなおの事、相手にしてくれたレギンも、ブーケも、魔王達も……エヴォルの人達を守りたくなってくるな。
〖我、喚起す。エルティア王国軍の精鋭たちよ、来たれ!〗
むかつくようなイケメンボイス。それと共に、上空からパラシュートを付けたエルティア王国軍が二百名程降下してくる。
そしてそいつらは、魔力を使った。緑色、茶色、赤色、青色……四色の色を掌に込めて、俺達に向って放ってくる。
ドドドドドドドドドド!
エヴォル魔王城が、次々と破壊されていく。ブーケやレギン、魔王ガンダールヴがそれぞれの手段で応戦していく。
茶色い魔力の拳。桃色の魔力の脚。茶色い魔力が込められた
〖まだだ巨人ネフィリムよ、来たれ!〗
遠くの彼方。何十キロだか何百キロだかわからないが、遠くに大きな巨人たちが見えた。
あそこは、郊外より先にあるエヴォルの領土だ。
まるで首都を覆うような巨大なドームが発生した。恐らく、結界かなんかだ。
〖これはお前らを逃げられなくする力でもあり、攻撃手段でもある〗
地上から悲鳴が聞こえる。流れ弾が当たったのかもしれない。
〖巨人達を使って、このエヴォル首都を踏み荒らしてやる〗
魔王やブーケ、レギンが戦慄しながら戦う。俺も道テイムで彼らを支援するが、上空高くを舞うようなエルティア王国軍の動きに翻弄されて上手く立ち回れていない。
「このままでは、このままでは……」
ブーケが焦る。大ピンチだ。俺の道テイムで伸ばせる限界まで鉄の道を伸ばす。
しかし、ソロモン王には届かない。きっとブーケがジャンプしたところで、躱されて終わりだろう。
ブーケやレギンが魔王城の破壊されてできた瓦礫を上に向って投げるが……エルティア王国軍の精鋭兵士たちは、奇妙な動きをした。
緑色の魔力がパラシュートに発現し、彼らのパラシュートに風が吹く。
これは。
〖風加護! 俺の新魔術だ。この世界は文明が遅れているものの……魔法を組み合わせることでかつてない戦いが出来る〗
ソロモン王の知恵と風魔法の融合ってわけか。なんて厄介な!
〖エヴォルは今日滅ぼす! 今日で全員、死ね!〗
散々な物言いだ。俺が歴史書や聖書を読んでイメージしたソロモン王は、もっと優しい王様だったのにな。俺がこの世界に来て変わったとこあるように、彼も変わったのかな。
レギンは驚いてエルティア王国軍のパラシュートを見ている。その緑色に輝く魔力が、風を発生させているのだろうか?
「ロードロード、これは……エルフの魔法に近い!」
「エルフの魔法?」
「ソロモン王は……この世界の魔術をどんどん覚えてる! きっと次はもっと強くなる。ここで倒さないと、たぶん大変なことになる!」
言いたいことは分かる。しかし、今回勝てるかもわからない。遠くでは囲む様に配置された千名以上の巨人たちがどんどんエヴォル首都に近づいてくる。いや、俺たちは包囲されている。
首都を中心に、東西南北に円状に配置された巨人達がどんどん迫っている。
そしてエルティア王国軍の精鋭部隊は空中から魔力を放ち、俺達に決して近づかない。そしてどんどん地上に魔力で火や土玉や鎌鼬や氷を振らせていく。上空から攻撃をしていて、俺はそろそろかばうことにした。
「道テイム!」
空高く向かって伸びた鉄の道、俺はそれを遠心力たっぷりに振り回し、地上に降り注ぐ攻撃を防ぐ。
ソロモン王は甲高く哄笑する。
〖ロードロード、お前の道テイムは強力だが、地盤沈下は効かない! そしてその鉄の道も届くまい! もはやチェックメイトだ!〗
再びの地上からの悲鳴。俺は下を見る。するとそこには。
血の川。死体。泣き崩れる亜人達。着々と集まりつつあるエヴォルの軍隊が、一部やられていた。
可哀想だ。ソロモン王は正義の為というけど、俺は……亜人の国を守ることに決めた。
レギンやブーケや魔王も決定力にかける。俺しかいない。
だからこうなったら、やるしかない。俺の思いついた最強の道テイム、殺戮式道テイムを。
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