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「女の勘」と「エンゲージの効果」

 上空の魔方陣に立つ男、ソロモン王の金色の翼がはためく。その様子は、まさに天使のようだった。むかつく様なイケメンボイスが聞こえてくる。


〖今ので決めるつもりだったが、エナジーが殆ど空になってしまったよ。回復させて貰う〗


「っく……」


 エナジーを回復させるだと? 俺はパンツを見て回復するのをレギンだけしかできない。

 このままでは勝負が完全に決してしまう!


〖俺が詠唱をする間に、お前もお仲間を助けると良い〗


 ソロモン王は、何かしらの詠唱を始めた。これは聞こえなかった。聞かせる気がないのだろう。そもそも、これだけ距離があるのに話が出来たのは明らかに向こうの魔術かスキルのお陰に間違いない。


 俺は戦慄する。このままでは負けてしまう。上空に展開された魔方陣の数々、あれにソロモン王は立つことが出来るのだ。そしてあそこに行くなら……今作った鉄の道を活かすしか無い。

 だが、それにはエナジーが莫大に必要になる。

 ソロモン王は数百メートル離れた別の魔方陣を睨む。その魔方陣にはレギンを背負うブーケがいる。


〖知恵テイム〗


 すると、ブーケの乗る魔方陣が半透明になり、ブーケが落下していく。

 どうやら、あの魔方陣にもう立たせてくれることもないようだ。ということは、ブーケは足場を失ったということ……。

 まずい、このままではレギンとブーケが地面に激突する! と思ったらレギンが黒翼を懸命に羽ばたかせ、落下前に減速。そしてそのまま魔王城の開いた天井の端に着地する。


「ただいまです」


「おかえり」


 ブーケはゆっくりと抱えたレギンを床に降ろす。

 ブーケの体はよく見ると、体にうっすら線が見える。これは何だ?


【う、運動連鎖……です】


 小賢者! 具合は大丈夫なのか? お前、知恵テイムにかけられたんだろ?


【理性が吹っ飛びそうです】


 無理するな。


【す、少しだけ説明を……。「エンゲージ」によってブーケには強化が行われました】


 というと?


【ブーケには遠距離でも道テイムをかけることが可能で、しかも知恵テイムなど他のスキルに対して耐性が上がりました。そして運動機能を最適に行う筋肉や骨の繋がりが彼女に伝えられました。ただでさえ強力な個体であるブーケがより正しい運動を理解したのです】


 良いことづくめだな。


【はい。しかし耐性が上がってるだけでまだ知恵テイムにかかってます】


 良し。解除をしよう。


「道テイム!」


 俺はブーケとレギンに道テイム。彼女達二人にはドワーフギルドで知恵テイムを解除した経験もある為、エナジーの消費は少ないだろう。

 いや、それどころか。


【エナジーが回復しました】


 前回よりエナジーの消費量が少なく、そしてエナジーは回復する。俺は美少女に道テイムをすると軽い興奮状態になり、エナジーが回復するのだ。へへへ。


 レギンの顔に生気が戻り、ブーケの顔に覇気が漲る。


「二人共、大丈夫か?」


「いやぁ、大変だったよ。ロードロード……知恵テイムの出力そのものが分身とは比べ物にならないくらい強い」


 レギンは肩をさすって警戒感を上空に向ける。

 ブーケはどこか恐れ知らずに、自信ある笑顔だった。


「あたしも知恵テイムの出力上昇は感じました。あと前回は光線を放つような感じだったのに、今回は相手を視認しただけでかけられるみたいですね。そこが比べようも無いほどに強力です。前回は結構あたしもレギンさんも避けてたんですけど」


 そうなのだ。

 ドワーフギルドではレギンとブーケはソロモン王分身の知恵テイムをけっこう躱していた。しかし今回はそれが必中技になっている。この違いは大きい。


 レギンは上空からブーケに視線を移し、俺を見る。


「でもさ。おかしくない? ブーケってなんか急に……耐性上がったよね。ねぇ、どういうこと?」


 レギンの顔は真顔だった。え、何この顔。怖っ。まるで浮気を疑う正妻のような瞳だ。

 ブーケ、頼むから下手なこと答えないでくれよ……。


「愛の力ですよ、レギンさん」


 何言ってんだこのケンタウロス美少女は!


「は? どういうこと?」


 益々顔が怖くなるレギン。いや、その、真顔なのだ。真顔なのだが一切微動だにしない心を感じる。今の俺なら、サラリーマンが美人後輩に言い寄られて断ってるけど正妻に浮気を疑われてる奴の気持ちが痛いほど分かるって感じの状況だ。


「愛ですよ愛。レギンさんより私の方が道さんに相応しいんです」


「へぇ、ブーケ。ロードロードを名前呼びも出来ないくせに、そんなこと言うんだ」


 ブーケとレギンの間で火花が散る。いや、今戦闘中だぞお前ら。何痴話げんかっぽいことやってんだよ。

 上空見ろ上空。ソロモン王が来てるんだよ。一瞬で洗脳スキル使えちゃうやべー奴なんだよ。


「その、上空にソロモン王がいるから、後で」


 レギンは怒りを隠さない笑顔をした。口角は少し硬く上がってる。しかし目は一切笑っていない。


「ロードロード、浮気した? さっきさ、ブーケに何したの?」


 女の勘、怖ええええええええ! 何でエンゲージがバレてんだよ!


【女。怖い】


 本当にそうだな。何でバレるんだよ!


「ねぇロードロード。あたしにあれ、出来ないの?」


「え?」


「あたしにもしてくれたら、良いでしょ? 何でブーケだけ?」


 そうだよ。小賢者、これってレギンにかけられないか?


【エンゲージは特殊トロフィー。意図的にかけることは無理】


 成る程。


「すまない。ブーケがなぜこうなったのかは俺にも分からない」


「嘘つかないで。分かるよ? ブーケとロードロードの間に、特別な繋がりが出来たって」


 女の勘ってこんなに強いのかよ! 怖すぎ! 浮気なんてしてないんだ。ただその場の弾みで……って何で浮気の言い訳みたいになってんだよ。ブーケとはそういう関係じゃないんだよ。

 もし『面白い!』とか『続きが気になる!』とか『道の活躍をもっと見て見たい!』と思ってくれたなら、ブクマや★★★★★評価をしてくれると幸いです。


 ★一つでも五つでも、感じたままに評価してくれて大丈夫です。


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