〖無限の残基〗
くそ。上空には一万以上の武器。俺の道テイムでは落ちてくるあの武器の数々をどうにかすることなんて出来ない!
どうする? 下を見れば沢山の人々。このままでは彼等が――、
「鍛冶テイム」
魔王ガンダールヴの声と共に多数のハンマーが出現。次々に宙にある武器に当たり、武器を一時的に減速させていく。魔王だけあって凄い力だ。ブーケが戦って下さいと言うのも分かる。
「ロードロードよ。あれを無視はできぬ。道テイムで鉄の道を作ってくれぬか?」
「道テイム(拡散)!」
魔王の言うことを俺は一瞬で理解した。
俺は武器の数々を『素材』として解釈。それを宙にいるソロモン王までの道に変換。離れた位置に存在する数々の武器は次々と一点に――否、一線に収束していく。
武器はどんどん俺の道テイムによって一本の鉄の道に。
それはソロモン王のいる場所まで一直線の構造をしている。
〖な、何!?〗
ソロモン王は驚いている。
俺が作った空まで続く鉄の道。それをすかさずブーケが凄まじい速さで上っていく。
道テイム・拡散、はかなりエナジーを消費してしまう上に、武器を使って鉄の道を作るのもまた莫大なエナジー消費だ。だが、地上の人々を思えばしょうがない。
〖っち。知恵テイム!〗
上空でソロモン王が声を放った瞬間、ブーケが紫色に光輝く。
「っが……う……」
桃色のケンタウロス美少女は足を止め、落ちていく。
ソロモン王はそれを見下しながら笑う。
「ブーケ!」
レギンが黒翼をはためかせて飛翔し救助に行く。しかし、ソロモン王のスキルがそれを阻んでしまう。
〖知恵テイム〗
レギンは紫色の光に覆われた。
「ぐわああああああ!」
最悪だ。レギンもまた知恵テイムにかけられた。彼女は飛翔する黒翼を上手く操作できなくなり、ブーケと同じく百メートル以上上から落ちてくる。
ソロモン王本体は分身と違って光を放つのでなく、ノータイムで視認した存在を狙うことが出来るようだ。強いなんてもんじゃない!
「魔王様! どうすれば二人を助けられますか!?」
「ロードロード、鉄の道を動かして助けてあげられないか!?」
俺は魔王のアドバイス通りに鉄の道に意識を集中。その構造を変えるべく、スキルを放つ。
「道テイム!」
しかし、またもやソロモン王が妨害をしてきた。
〖知恵テイム〗
俺のスキルが、ソロモン王のスキルに阻まれていく。俺の道テイムと奴の知恵テイムの力が鉄の道にかけられ、思う様に動かせない。魔王城最上階から空に向かって伸びる鉄の道は二つのテイム能力がせめぎ合い、互角の戦いになっていた。
それでは落ちてくる彼女達を助けられない。
「っく……」
〖ロードロード。俺の知恵テイムとお前の道テイムは同じくらいの出力なのだろう。つまり、俺の知恵テイムをお前の道テイムをかけた場所にかければ、妨害は簡単だということだ〗
まずい。このままじゃ、レギンとブーケが死ぬ!
〖愛しているというのなら、自分の女を守り抜いてみろ!〗
まずい。まずい。まずい!
打つ手が、無い!
そう思ったら、小賢者の声がした。
【ロードロード。エンゲージを……】
「道テイム!」
俺はマップを出して、ブーケの人体図を表示。そこにある項目に意識を集中。
(エンゲージ!)
上からソロモン王がほくそ笑む声が聞こえる。
〖ロードロード! 今からでも遅くは無い。エヴォルを裏切って、エルティア王国軍に来い!〗
ソロモン王の勧誘……本当に俺を必要としているのだろうか?
だが今はそんなこと、考える必要はない。
「それより、後ろを気にしろ」
〖は? 後ろ?〗
ソロモン王は後ろをちらりと振り返ろうとする。俺の言葉をそのまま信じてくれるなんて素直にも程がある。しかし、今回は信じてくれても彼にも悪いことではない。
彼の後ろには、レギンを抱えた桃色のケンタウロス族の娘が蹴り掛かっていた。彼女の体からは紫色の光が消えている。
「はあああああああああ!」
ドン!
巨大な轟音が、上空から起こった。ブーケだ。彼女は一瞬で落ちていく体を立て直し、その膂力を使ってレギンを抱きかかえて――そのまま上空へと駆け上がってソロモン王に蹴りを入れたのだ。
ソロモン王の肉体はブーケの蹴りで切断され、避けた肉体からは血が吹き出ている。
「勝った……」
ブーケが笑う――のは一瞬だった。ブーケも、俺も、魔王も違和感を覚えた。
ソロモン王の体から禍々しい紫色の魔力が放出され、肉体は煙の様に焼失した。
〖痛いな……まさか、俺の知恵テイムを解除するなんてね〗
ソロモン王が立つ場所は今ブーケがいる位置から数百メートル離れた場所。
どうやら転移して、新しい魔方陣を展開したようだ。それよりも、気になることがあった。
ブーケによってたった今破壊されたはずのソロモン王の肉体が完全に再生している。
「馬鹿な。今、ブーケが肉体を破壊したはず……」
ソロモン王は金色の翼をはためかせ、金色の瞳で俺を見る。
〖ロードロード、これが俺の能力だよ。無限の残基が俺の力だ。俺は自分をいくらでも呼び出して、戦うことが出来る。お前らに……勝ち目なんて無いんだ〗
ソロモン王はぎらり、と俺を睨む。……どうやら一筋縄ではいかないようだ。
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