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道「ブーケじゃダメなんだ。レギンじゃないと」

 魔王ガンダールヴは窓から俺が整備した石畳や土を見ている。


「どうやらドワーフギルドで道テイムは想像以上に強化された様だな」


「はい。魔王様の目論み以上に」


 魔王は振り返って怪訝な顔で俺を見る。


「余の目論み以上、だと?」


「ソロモン王との戦闘で、いくつか向上しました」


 魔王は笑顔になる。


「ほお……怪我の功名か。ドワーフ達の仕事が止まったから損害ばかり与えられたと聞くが、良いこ

ともあったのだな」


「はい」


「だが、お前にはもっと強くなって貰いたい」


「これ以上?」


 今でさえかなり強いと思うのだが……ソロモン王の分身に『化け物』とか言われてしまったしな。


「あぁ。支援能力を上げようと思ってな。刻印情報、だ。マップを表示してくれ。レギンのデータを見たいんだがいいか?」


「いいですよ。道テイム!」


 俺は宙にマップを表示する。そこにはレギンの人体データが記されている。

 魔王が玉座の目の前にいる俺のとこまで歩いてきて、じろじろとデータを読み始めた。


「これは……かなり強化されているな」


「あぁ。ギルド長ガンコォールブのお陰で相当に整体スキルが上がった」


「道なのに……整体とはな」


「全くだ。そろそろインフラを整備したいです」


「ロードロードは生後二週間くらいなのに仕事熱心だな」


 生後二週間、生後二週間……こいつら俺を赤子か何かだと思ってんのか? 前世の知識とか思考回路があるんだから一人前扱いして欲しいぜ。


「レギンの魔力が倍くらいになってる……凄いな。体の歪みをあちこち直したからだな」


「魔力が倍!?」


「あぁ」


「それは予想外です。ドワーフのギルド長が懇切丁寧に教えてくれたので、それが良かったんでしょうね」


「……まぁ、このくらいかな」


 魔王が次々に刻印情報を記載していく。そこにはリンパや老廃物、もっと別の場所の歪みなどがシルされていた。マップに表示された刻印情報が更に詳細になる。

 魔王は俺を見て頷く。道テイムしろというのだな。


「道テイム」


 レギンの明るい顔がもっと明るくなる。腕を動かすレギンの動きもどこか軽々しくなって鮮やかな感じだ。


「凄い、凄いよロードロード! 魔王様! これならあたし、ジャンヌとも戦えると思う!」


 普段より凄まじい茶色い魔力の奔流がレギンから吹き出る。いつもより濃度が濃くなったような感じだ。


「凄えな」


 魔王は誇らしげに話す。


「ギルド長よりは余の方が人間を整体してきた経験は上だ。まぁ、彼の方が上手なところもあるがな」


 観察眼が図抜けている。俺ではこうはならない。ここまで細やかにやるなら、きっとかなりの訓練が必要だろうに。


「ロードロードよ。余に考えがある。序列持ち、そしてケンタウロス族が道テイムで強化されれば……国力の増強に繋がる。ロードロードには……可能なら自分自身も含めた九名の序列とケンタウロス族を全員道テイムで強化して欲しい」


 ケンタウロス族がまさに馬車とか運送用トラックみたいな感じだから、馬力が文字通り上がる訳ね。


「成る程。やってみよう」


「この戦いが終わったらで良い。今お主はエナジーを制限しないといけないのだ」


「……そうだな」


 レギンが悲しそうな顔をする。まぁレギンのだだに合わせてやるなんて魔王は優しいとしか言い様がない。


「よくすんなりokしてくれたな」


「ロードロードがいなければ、エヴォルはとっくに滅んでいた。まずレギンがジャンヌに殺されてる」


「そうだな」


「更に、ソロモン王分身はドワーフギルドを壊滅させただろう」


「おう」


「ロードロードの活躍はまさに、国内において二つとない偉業だ。そしてエヴォルはお主に給料を払う余裕がない」


 成る程ね。


「せめてもの配慮だ。我が儘を言うだけの実績……それがお前にある。給料も少しは払うつもりなのだが……」


「魔王様……」


 魔王の顔は悲しげだった。正直、可哀想。だが俺は……、


「ごめんなさい。それでも俺はレギンの願いを叶えて上げたい」


「ロードロード。他にも我が儘あるなら遠慮無く言え。お前なら許す」


 じゃあ遊園地とセーラー服作って貰いたいな。あと俺の学ラン。制服デートでランド行くの夢だったんだよね。まぁ、俺に学ランは似合いはしないが形から入るの大事なんだよな。

 俺が望みを言おうとした瞬間、桃色ケンタウロス美少女が涙目かつ掠れ声で話しかけてきた。


「道さん……失望しました。貴方は、もっと他者を思う優しい人だと思っていたんです」


「ブーケ……」


「パンツ見て欲しかった……エヴォルの為に、国の為に!」


 俺は苛っとした。いやね、言いたいことは分かる。

 でもね。それなんだよ、ブーケ。君は国の為なら何の躊躇いもなしにパンツを見せるだろう。だけどそれは嫌なんだ。いや、嫌じゃないけどベストじゃないんだ。


 俺は我が儘で束縛が強い美少女好きなんだよ。

 もし俺に彼女が出来て「あの子と二人っきりで話さないで。ヤキモチ妬いちゃうから」なんて言われたら凄く嬉しい。

 本当に好かれているんだなって思う。

 レギンの言ってることはそういうことなんだよ。あたしが嫉妬しちゃうから、他の女のパンツ見ないでってのはね。

 俺がパンツを見ないと国が滅ぶ。馬鹿げた話だ。狂っているとすら思う。

 だが見ない。

 彼女が見るなというのなら、彼氏として見る訳にはいかない。


 ブーケ。君は大した愛国者様だ。だけどね、ツンデレっていう高度な概念が俺の世界にあったんだよ。ツンツンデレデレ、略してツンデレ。それどういうことか、お前に分かるか?


 仮にね、俺に幼馴染みの美少女がいて、小学校は仲良かったけど中学高校からは「人として好きなのか」「異性として好きなのか」をお互い迷ってる中だったとしよう。中学高校の昼休みに、周りが「夫婦ー!」とかはやし立ててきて、金髪ツインテール美少女な幼馴染みが顔真っ赤にして「べ、別にこんな奴好きじゃ無い。ただの幼馴染みなんだから」とか言ってきたりする。俺は「やれやれ……」と思って、時間が過ぎていく……。夕陽が照らす放課後の教室で、俺と幼馴染み美少女は再会する。そして美少女は辛そうに、頬を染めて言うんだ。「昼休み、酷いこと言ってごめんね。好きじゃ無い、なんて……思ってないよ。本当は、ロードロードのこと、大好きだよ」。


 こんなことを言って貰いたいのさ。分かるか、ブーケ。

 お前は国が好きなんであって俺が好きなんじゃ無い。俺はね、政略結婚が目的なんじゃなくて恋愛結婚したいの。

 それを叶えてくれるには、レギンじゃないとダメなの。

 お前はやらせろって言ったらやらせてくれる女に等しい。

 スレイブが俺を相手にするって感じなんだよ。


 レギンは違う。貞操観念を持って、俺に接してくれる。二人で一緒に初めての共同作業をして、初々しい思い出を築いていきながらラブラブしていくんだよ。

 これが俺の歩みたい恋路だ。


【長い……】


 そっか。じゃ、ブーケに答えよう。


【でも、良い】


 ありがとよ、小賢者。


「ブーケじゃなくて、レギンが良いんだ」


「何で……レギンさんの方が、胸あるからですか?」


 レギンはぶっちゃけ胸が大きい。スレイブはまな板より起伏はあるってくらいスレンダーだ……勿論俺はスレイブのルックス大好きなので、貧乳に偏見なんて無い。

 ブーケの意見は間違ってる。反論するとしよう。


「違うぞ、ブーケ。お前の胸はレギンとブーケを足して二で割ったようなサイズ……俺はブーケもレギンもスレイブも見た目だけなら全員好きだ」


「じゃあ何で、レギンさんを特別視するんですか?」


「恋愛感情を唯一向けてくれるからだ。お前のは政治的打算なんだよ」


「――」


 唖然とするブーケ。レギンは笑顔になる。魔王とドワーフ大臣はハッとした顔になる。やれやれ、皆漸く理解してくれたようだな。

 レギン以外、俺の「恋愛相手」になってくれてないって。


「そういうことだ。俺がレギンを特別視するのは、彼女が俺に恋愛感情を向けてくれるからだ」


「分かり……ました。あたし、振られちゃったんですね……」


 ブーケは俯いた。って俺、振っちゃったのか? レギンが幸せそうに光悦の表情になってる……あぁもう、悪い気分……じゃねえな。へへへ。モテるって気分良いな!

 その内、一日二話投稿を増やすかもしれません。


 もし『面白い!』とか『続きが気になる!』とか『道の活躍をもっと見て見たい!』と思ってくれたなら、ブクマや★★★★★評価をしてくれると幸いです。


 ★一つでも五つでも、感じたままに評価してくれて大丈夫です。


 下にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところに★があります。


 何卒、よろしくお願いします。

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