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「内線戦略」「成長していく道テイム」

 魔王は真剣な面持ちで俺を見る。ドワーフ大臣がブーケとレギンに資料を渡して彼女達に解説を始めている。


「ロードロード、内線戦略は分かるか?」


「何とかな。外敵に囲まれた状況でこそ必要な戦略だというのは分かる」


「流石ロードロードだな。素晴らしい!」


 魔王は笑顔になる。


「よし。じゃあ状況を説明しよう。ソロモン王のエルティア王国は基本的に北部か西部を攻めて来た。今まで東部を攻めて来たことは無い」


「なぜだ?」


「お前の世界とは似通った地形はあるものの、多少は違う。……エヴォルの南部と東部は天然の自然障壁があり、外敵が攻めて来にくいのだ」


「成る程……」


「それに南部と東部は竜国ドラゴニアの影響が強い。ワイバーンが蠢く場所より、弱い魔物や動物しか出てこない北部西部のが敵も攻めてきやすいってわけだ」


「でもそれなら北部と西部に防衛戦を固めればいいんじゃないか?」


「言いたいことは分かるんだが、万が一に備えたい」


「というと?」


「北部の近くに水源があってな。灌漑農業設備やダムがある。一応、そこを守らねばならない。内線戦略はそれを守り易くする為のものだ」


「どこにあるんだ?」


「北東から南東にかけてだな。まぁそこを攻めてくるとは考えにくいが……もし破壊されてば食料も大損害を受ける。まぁ、どうせ北部と西部を攻めてくるだろうがな」


「万が一の内線戦略、ということだな」


「そうだ。それに今まで単純な火力でやってきて、ここに来て戦法を変えるとは考えられないが……異世界からの転移者・転生者に常識は通じない。すぐに強くなるからな」


「ソロモン王も強くなっているっていうしな」


「うむ。エルティア王国はお前達の世界で言うとイラン東部に位置する。そこにソロモン王は古代イスラエルの民を多く呼び、人口20万人ほどいる」


「やべえな、ソロモン王……もはや国を呼び出している」


「かの魔術王には驚かされるばかりだ。ソロモン王が討伐されたら住民も皆消えるんだが、結局数年後には復活してくるからな」


 魔王は溜息する。終わりのない戦いをするのだからそりゃ溜息するのも当然だろう。


「道テイムで我がエヴォルの国土を整備、そこをケンタウロス部隊が主力戦力を以て全力で迎撃することになる。この作戦、ロードロードとケンタウロス族が要だ」


 道こと俺とブーケ達。物流の要だ。


「魔王様、確かにそれなら効率的に戦えるだろう」


「うむ。そしてロードロードのエナジーが不足している以上、全力を以て敵を即座に撃滅するのが好ましい」


 確かに。俺がレギンのパンツしか見れなくなった以上、エナジーは考えないといけない。無駄撃ちはできない。


「各地に物資の集積場がある。マップを出してくれ。刻印情報を入れる」


「おう……道テイム!」


 俺はマップを表示して、魔王がそれを見る。

 魔王は魔力を指に込めて俺のマップに情報を描いていく。


「よし、これで内線戦略の準備は完了だ。ブーケやヒポハスはこの国の土地勘を知り尽くしている。ロードロードがブーケかヒポハスに運んで貰って道テイムを繰り広げれば……内線戦略は機能するだろう」


 思ったよりお手軽だな。まぁ、分かり易い。見れば魔王の魔力が俺のマップのあちこちに表示されている。ここに道テイムすれば良いんだな、良し。


「ロードロード、今伝えた通りに道テイムをして欲しい」


「分かった」


 俺は窓に行く。


「おい、ロードロード、どうした? 石畳に接してないとできないだろ?」


 説明するのも面倒。百聞は一見にしかず。

 小賢者、聞こえるか?


【はい】


 道テイムを拡散で、やってみたい。


【可能。しかし、エナジーを少し多めに使います。スキル練度が低い】


 分かった。だが、やってみたい。恐らく戦いに必要になる。


【OK】


「道テイム!」


 魔王の困った声が後ろからかけられる。


「ここでやっても、空撃ちになるだけでは?」


 俺は石畳も、土も両方テイムする。どんどん整備して、国内のあちこちにある物流の拠点周辺の道を改修していく。俺は一回の道テイムで対象は一つだった。だが今は石畳も土も同時に一回の道テイムでやれた。

 これはどういうことか?

 ドワーフ達が知恵テイムで洗脳された……今の俺なら、完治は兎も角、荒療治なら一回の道テイムで全員にかけられるってことだ。

 だが、消費エナジーが多いのは体感で理解出来た。


【エナジーを消費しました。回復をおすすめします】


 俺は振り返り、レギンの植物をあしらったパンツを見る。相変わらず優雅な曲線美と綺麗なラインが俺に幸福感を与える。


【エナジーが回復しました】


 俺が魔王の方を見ると、魔王だけでなくレギン達も驚いていた。

 レギンが目を大きく見開いて俺に聞く。


「ロードロード、今何した?」


「見ての通りだ。道テイムの有効範囲が大幅に上がった」


「――」


 魔王が絶句。ドワーフ大臣とブーケは喜びの顔。レギンは唖然。

 まぁ……強くなっていくのは慣れて貰うしか無いな。


「道テイムは今まで一直線の意識を使って行っていたが、今は対象を拡散して放つことができる様になった。精密に放つことはできないけどな」


 魔王が俺に問う。


「ロードロード、つまり、どういうことだ?」


「……仮に味方が傷ついた場合、多くの奴を同時に治療したりできるかもしれない」


「おぉ! それは凄く良いな!」


 だが俺は恐怖している。この道テイム拡散、に。生まれて来なければ良かった……そう思う程に非倫理的な力が今の俺には宿っている。現実の世界なら恐らくBC兵器や核兵器の様に規制対象になる手段だ。


「魔王、一個聞いておきたい」


「何だ?」


「戦争とは合法行為だ。それが忌むべきことであっても、法律で始まって法律で終わる合法行為だ。だから国際法違反……過度な虐殺や非人道的な兵器は避けられなければならないよな?」


「その通りだな。エヴォルは絶対にそういうのは許さない」


「俺の道テイムで、相手を生き埋めにしたり……大規模な地形変化をやって、国際問題になったりしないか?」


「大丈夫だ。エルティア王国の無限出現でさえドラゴンロードもリリス様も動いてくれない。なら道テイム程度で動くなんて考えられない」


 確信した。俺は恐らく……ソロモン王に勝てる。そしてソロモン王がやって来たら、間違いなく俺が闘わない限り撃退はできない。そして守って勝つには……道テイムを残酷に使わないといけない。

 この力を使えば絶対にエルティア王国軍を即殺できる。だけど……俺は、自分を許せるのだろうか。

 異世界転生して道になった。そこで得たのは、未知の力。知恵と未知。滑稽にも思えるのは……道テイムは発想次第で凶悪な力になってしまうことだ。次の戦い……俺は恐怖されることになるだろうな。

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