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ドワーフギルド⑫ ギルド長「パンツ見ながら話を聞いて貰えますか? 真剣な話なんです」 & 道テイム向上

 自信満々と言った笑みで、ギルド長は断言する。


「貴方の道テイムを底上げ出来ます」


「ギルド長が?」


「はい」


「イメージが湧かないんですが……」


「簡単ですよ。貴方の道は……コミュニケーション次第でいくらでも強くなります」


 コミュニケーション次第で?


「どういうことですか? ケンタウロス族が利用してくれてるのは知ってるんですが」


「それより、パンツを見てエナジー回復するんですよね」


「は、はい」


「じゃあ今、レギンさんのパンツを見ながら話を聞いて貰えますか? 真剣な話なんです」


「ギルド長……ガンコォールブ、何を言ってるんだ?」


「仕事なんですよ? 手を抜かないでいただきたい。貴方の本分はパンツを見ることでしょう?」


「は、はい……でももうすぐ礼拝の時間で、それで一気に回復できるので」


「見て下さい。手を抜かれたくないんです。レギンさんのパンツ、見て下さいよ」


「えぇ……」


「早くしてください」


 俺はしぶしぶ、レギンのパンツを見る。


 先ほど見た、パンツ。もみじの葉の様な緑色のデザインが中央に据えられ、周りは茶色という独特のデザイン……ちょっと汗ばんでいる。戦闘により激しく運動したからだろう。

 汗が普段よりむっちり感を一層違った感じで、綺麗な骨盤の形をより際立たせてくれている。

 へへへ。

 俺はまるで運動後の女子校生が、その綺麗な汗でブルマを濡らしたのを連想した。ブルマは履けばいいんじゃない。ブルマをただ履いてる女の生足を鑑賞するんじゃなく、運動して動くそのムチムチさと滴る健康的な汗で体操着やブルマが濡れていくのもまた良いんだよ。

 それに近いものを感じた。良い……。


【エナジーが回復しました。トロフィー「汗パンツ」を獲得】


 やっぱパンツ見ないとね。エナジーが回復すると、眠気も少し吹っ飛ぶ。


【ですね】


 レギンが紅潮する。


「他人が近くにいるのに、ロードロードにパンツを見られているってちょっとだけ恥ずかしいな」


【エナジーが回復しました。トロフィー「恥じらいパンツ」を獲得】


 レギン、可愛い。黒翼をばたつかせ、俺に向かってパンツを見せてくる。

 恥じらったりするくせにパンツを見せるのに一切躊躇がないのが良い。


 ギルド長は俺に向かってトークを再開する。


「では、お前の能力を根本的に強くしていきましょう」


「そんなこと出来るんですか?」


「信じて貰って構わないです」


 言い切るとは、凄い自信だ。


「道様……動線と導線って聞いたことあるか?」


 ! な、なんか聞いたことある! 建築現場とかコンビニで使うって……誰か言ってたな!


 俺にふと、前世の記憶が蘇る。


――――――――――――――――――――――――――――――

 ◆前世時代

 俺が二十歳くらいの人間の男で、自宅のパソコンでオンライン授業を受けている。

 教授が講義する。


「皆さん、道は色んなところにあります。例えば、建築なら動線。コンビニやスーパーでは導線といいうものです。都市計画や家の配置は動線。コンビニやスーパーでの商品の陳列なら導線が考えられているのです」

――――――――――――――――――――――――――――――


 お、思い出した……唐突に。そうか、ドワーフってのは鍛冶だけじゃなくて建築も出来そうだ。ということは!


 ギルド長は笑顔で言う。


「道様。私が貴方のマップに『道の情報』を書き込んでいきましょう」


 魔王ガンダールヴの狙いはこれだったのか。


「導線と動線……まさか人間工学の世界を学ぶことになるとは!」


「動線と導線?」


 レギンが俺に質問する。


「レギンさんに説明するより、実際に教えてるのを見せた方が早いでしょう」


「そうだな。それなら」


「はい、上の工房に戻りましょう」


 俺とレギンはギルド長に案内され、四階の一番上まで到達。そこには台座があり、ドワーフギルドの仕事風景を一望することができる。

 相変わらず活気ある仕事ぶりだ。先ほどまで戦闘があったというのに、今のドワーフ達は完全に仕事に集中してる。


「では道様、マップを表示して下さい」


「おう。道テイム!」


 ギルド長は搬入口を指差す。


「搬入口があそこにある。なぜか分かりますか?」


「えっと、大きい物資……それが運ばれる為、だよな」


「はい。そして資材置き場が基本的に部屋の中央に集積される」


 ドラゴンウンコが配置されたとこだな。


「そして、刻印情報。道様。今からドワーフ達の動きを書いていきますね」


「おう」


 ギルド長はさささっと情報を書き込んでいく。刻印情報だった。刻印情報の文字そのものは相変わらず、俺には読めないものの声になって変換される。


 相変わらず、不思議な仕様だ。なぜ文字が読めないのに声で変換されるのか。


【統一言語だからです】


 統一言語? そういえば、前にレギンがそんなこと言ってたな。


【文字が読めなくても、意味が分かるように変換されています】


 便利な仕様だ。

 っておい。ギルド長が俺に与えてくれた情報って、ドワーフギルドの根本的な運用ノウハウみたいなものが含まれている。いいのか、これ?


「こ、これは」


「俺が提供出来る精一杯の道です。俺が貴方にあげられるのは、これぐらいです」


 そこで提供されたのは、各職人がギルド内でどういう動きを具体的にしているかという情報だった。ドワーフ達が資材が来た時の運搬の流れ、物資が大量に存在する中どう動いているかという情報。それが細やかに記されている。


「充分だよ! ありがとうギルド長!」


「……そして、刻印情報そのものを道テイムして下さい」


「刻印情報そのものを?」


「はい。今、マップにはドワーフ達が青い点で表示されています。この動きそのものをデータとして道テイムするのです。動線や導線を知識じゃなくて、視覚的な道と捉えようとしてみて下さい。多分、貴方なら出来るはず」


 その発想はなかった。


「道テイム!」


 刻印情報として書き込まれた百以上の青い点の動き、それを道テイムしていく。

 マップ上で他人の歩む進行方向・目線、それらを『道』として認識出来るようになった。


 ギルド長は神妙な貌になる。


「問題は、これをいかに活かせるか、です」


「?」


「導線と動線は面白いし便利な概念だ。しかし難しい。道様でも一朝一夕では習得できないだろう」


「そうだな……というか、殆ど分からない」


【報告。高度過ぎるので、すぐは使えません】


 言われなくても分かってる。


【でも戦場ではすぐにでも使えるでしょう】


 何? それって。


【戦闘は楽になるかと】


 小賢者、どういうことだ?


【敵の目線や動きがマップ上で可視化出来れば、これからは一層戦闘が有利になるでしょう】


 ――。


【戦闘を積み重ねるにつれ、敵の陣形や戦法のデータが入って行きます。後は私の演算能力を使えば、恐らく最適な対策なども分かっていくようになるかと】


 すげえ能力だな。敵の進路や狙いが看破できるようになるってことだろ?


【また、お金儲けとかにも使えるかもしれませんね】


 何!? 金があれば、パンツを作れるな。


【はい】


 へへへ。


【未来が楽しみです】


 俺と小賢者は喜びと期待を分かち合う。なんだかんだ、俺達は趣味が合うようだ。


「道様、貴方は刻印情報を、道として認識したはずです。しかし、人体データを写せますか? レギンさんでも俺でも大丈夫です」


「? 別に良いけど」


 ギルド長は悲しげな顔で呟く。


「……これは、エヴォルを裏切ることにもなるかもしれんが……」


「エヴォルを、裏切る?」


「それ以上に、孫を救ってくれた道さんを裏切りたくない。俺はあんたのこと、気にいっちまったからな」


「……何で、そこまで俺を気に入ってくれたんだ?」


「あんた、生まれたばかりだろ? 俺達ドワーフがエヴォルの外でどれだけ辛い差別を受けてきたか知らない。だけどいつか……分かるさ。貴方が俺に普通に接してくれたのは……外の国じゃありえなかった」


「?」


 ドワーフ達が、差別を受けた? そんなのイメージ湧かないな……むしろ鍛冶が上手くてそこそこ力強いんだから強力な武器を持って勝ちに行けるイメージだったが。


「っへ。まぁそれより……」


 俺はマップにレギンの肉体情報を表示する。

 ギルド長はその刻印情報を指差す。文字が殆どであり、俺には声となって理解出来る。


「見て下さい。この刻印情報、これらは、道です。道として解釈できるんです。魔王ガンダールヴが国民の情報を収集する為に作ったこの魔術は……貴方が使いこなすことも可能なんです」


 俺は意識を集中する。すると、見えてくる――膨大な道の情報。


【著しく、エナジーを消費します】


 分かってる。だが、ギルド長の期待に応えたい。


「道テイム!」


【睡眠、推奨】


 小賢者、そんなことは分かってる。でも待ってくれ。あと少し頑張る。


 ギルド長は指を指していく。レギンの肉体の繋がり……血液や細胞液の循環や筋肉や骨の繋がり、神経ネットワーク、重心バランス……ありとあらゆる肉体の情報が入ってくる。

 レギンの肉体だから、ちょっと興奮してしまう。


【エナジーが回復しました】


 ギルド長は色々と指を指していく。


「それだけじゃない。ここも、ここもだ」


「道テイム、道テイム、道テイム!」


「ここもここも」


 他人に添削されると、自分に気付かない視点が手に入る。どんどん俺は強くなっていく。


「道テイム! 道テイム!」


「もっとだ、もっと! 細かく!」


 三十分後、俺はエナジーの多くを消費したものの、回復もしていたので何とかレギンの肉体に関する知識を教わった。


「ふぅ……かなり疲れた」


「だがこれで、道テイムは相当に鍛えられたはずです。俺は肉体を調整するのは専門じゃ無いですけど、魔王ガンダールヴに教えた程度のことは全部伝えました。鍛えていけば、あいつの木槌マッサージを超えたマッサージが出来るようになるでしょう」


「俺、マッサージが出来るようになりたいんじゃないんだが」


「まぁ、物は良いようです。整体、と言ってもいい。レギンさん、体の調子はどうですか?」


 ギルド長の言葉に、レギンは目を大きく開いて自分の体を動かしていく。


「凄いよ。こんなに体の調子が良いなんて初めてだよ。全身ぽかぽかするし、今までより、強くなれた気がする」


「整体したってことですからね。貴方の神経伝達や歪みはかつて無い程に調整されたんです。単純な体重バランスなら魔王ガンダールヴのが上手いかもしれませんが、切断された血管や神経そのものを修復出来てしまう道テイムは明らかに異常です。貴方の体は、先ほどより良くなって当然なんですよ。ちなみに、俺も道テイムで整体されたいです」


「構わないぞ」


【エナジーは回復できないです】


 小賢者、それは分かってる。でも俺が整体スキル良くなれば、どうなる?


【……?】


 美少女の胸にも尻にも道テイム出来るってことだろ?


【!?】


 分かったか、これは必要経費みたいなものだ。


【小賢者、感動! ロードロード、天才!】


 へへへ。そう褒めるなよ。


【ひゅーひゅー!】


 小賢者が喜んでいる。


「道テイム!」


 俺はギルド長に道テイムをどんどんかけていく。ギルド長の添削などなく、自分の認識だけで取りあえずかけていく。ギルド長の顔色は明らかに良くなった。


「おぉ……これは嬉しい。しかし、もういいです」


「?」


「時間ですよ、時間」


 そうだ、礼拝の時間だ!


 隣を見ればレギンの顔が元気はつらつとしている。

 ……人体も良いけど、そろそろ都市計画に道テイムしたいな。俺としてはそっちをメインに活躍した方が道っぽいと思う。折角『道』に転生したんだから、それっぽいことしたい。

 ……凄まじく眠いな。


【睡眠を推奨】


 うん。

 だけど、そろそろ礼拝の時間だ。美少女パンツだけは見ないと。眠い。


「レギン、行くぞ」


「え?」


「礼拝の時間だ」


 レギンはギルド内の時計を見て一瞬絶句した後、大声で叫んだ。


「あぁあああああああああああ! も、もうこんな時間だ! ろ、ロードロード、さっさと礼拝の時間に行くぞ!」


 レギンは俺を担いで疾駆する。凄い速さだ。本当に肉体の性能が向上しているのが分かる。


 ギルド長にお礼を言えなかったが、まぁ仕方ないな。時間を道テイムの訓練に使いすぎた。

 ここまで読んでくれてありがとうございます。余談ですが、ドワーフギルド編がここまで長くなるとは正直予想外です。

 11月1日には第二部の初稿が終わったのですが、改稿を重ねる内に長くなり、このドワーフギルドは三倍くらいの量になってしまいました。


 もし『面白い!』とか『続きが気になる!』とか『道の活躍をもっと見て見たい!』と思ってくれたなら、ブクマや★★★★★評価をしてくれると幸いです。


 ★一つでも五つでも、感じたままに評価してくれて大丈夫です。


 下にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところに★があります。


 何卒、よろしくお願いします。

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