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道 in 王宮 メディア「キモい」 道「幸せ」

 とうとう、来たね。


 俺が扉を開けたら、目当ての人物がそこにいた。


 豪華な食卓を、アレクサンドロス大王とアダム、詩人と美少女が行っている。メイドなどもいるが、俺の姿が見えた瞬間、そそくさと退散してしまった。


 俺はアダムを観て、アダムも俺を観た。

 懐かしい。

 まるで数ヶ月ぶりに再会した様な気持ちになった。


「ロードロード、随分大勢で来たんだな」とアダムは苦笑。

 俺は彼を真っ直ぐ見つめて、

「あぁ、アダム。お前を追って戦ってる途中、なんか仲間が増えちまってよ」

 後ろの海賊団アルゴナウタイ達を親指でくいっと示した。

 アダムは真剣な声色で、 

「……海賊団アルゴナウタイ達は歴戦の猛者達。おいそれと屈するような手じゃ無い。どんな手を使ったんだ?」

「俺は何もしてない。あいつらが俺を好きになって、仲間になってくれたんだ」

「……もしかして、ロードロードが非モテだから仲間になってくれたのか?」

「あぁ」


 俺とアダムが、同時に泣き出す。

 同じ悲しみが、俺とアダムから流れ出し、その場に悲壮感が立ちこもっていく。

 それに影響されたのか、海賊団アルゴナウタイ達も泣き出した。

「悲しい」「モテねンだわ」「モテたかった」「びいええええん!」と海賊団アルゴナウタイ達が呟く。


 すると、簡素な青白い服を着た金髪碧眼の美少女が

「あー、やだやだ。非モテだらけで」

 と可愛らしい声でぼやいた。


 なに、あの美少女。

 思わず俺は息を呑む。

 凄い美少女だな。恋しちゃいそう。

 ドキドキする……。


 とか思ってたら、医神に小突かれた。


「女性には誠実になりなさい」と医神。

「は?」

「君、好きな子いるんでしょ? その子だって、君が浮気性なら傷つくよ」

 何言ってんだ、医神。

 俺が好きになったのがどんな人か忘れてるのか?

「でも、俺の好きな人は経験人数六千名を超えてて、今この瞬間にも増えてて驚かないビッチだ。だから、俺が何人か目移りしても別にいいはず」

「!」

「気にもしないだろ。あの子は」


 医神は俺の返しが意外だったのか、気まずそうな顔をした。

 アスクレピオスは俺から少し距離をとった。


「そ、そうか。君の好きな人は特殊な人だったね」

「あぁ。彼女は国一番のビッチだからな」

「……でもあの子は気を付けなさい」

「?」

 医神は杖で椅子に座る美少女を指した。

「コルキスの王女、メディアだよ」

「!」


 あの子が……。

 俺はメディアをガン見した。

 メディアは軽く引いたような感じになった。


 あれが、『イアソン好き好き』過ぎて気を引こうと自分とイアソンの子供を殺した女性か。

 ヤンデレ系なんだよな。

 なんて純粋で綺麗な瞳なんだ。

 凄い。

 リリス級に可愛いかもしれない。スレイブ・ジャンヌを凌ぐ可愛さだ。

 俺の胸がキュンと鳴る。


「止めなさい。あの子を好きになるのは……止めろ!」

 と医神は俺の頭を杖で小突く。

「痛い! 今、魔力込めたでしょ!」

「あの子を好きになるな! あの子は……ギリシャの中でも最強クラスの魔女なんだよ」

「そうなの?」

「……ゼウス様の愛をはね除けるくらい凄い。それは普通じゃないんだよ」


 ゼウスの愛をはね除ける、か。

 ゼウスってギリシャにおいて最高神だったな。

 それをはね除けたとなると、メディアはあんな可愛い見た目なのに相当強いだろうな。


 医神は溜息をつき、

「言っとくけど、メディアは僕より強いよ?」

「!」

「あそこの詩人オルペウスなら僕でも何とかなるかもしれないけど、メディアは僕じゃどうにもならないかも」


 俺はチラ見。

 短い黒の短髪とギリシャチックな民族衣装を着込んだ青年が『ポロロン』と竪琴で綺麗な音を出した。

 俺はチラ見を終えると、真っ直ぐメディアに近付き、


「な、何よ」とメディア。

«ロードロード。僕に挨拶もなしに、話を進めないで欲しいんだけど? 空気扱い、止めてよね»と不服そうな大王。


 ごめん、大王。

 俺にはやることがある……と思って。

 俺はアダムの近くまで来て、スルー。

 大王が«え?»と意外そうな顔をして、アダムが苦笑した。


 俺はメディアに土下座。

「すみません。や●せて貰えないでしょうか?」

「え……」と呆気にとられたようなメディアの声。

 俺の声が小さくて、聞こえなかったのだろうか?


 俺は土下座をした以上、声は床に向かってるからね。聞こえて無くてもしょうがない。


 だから俺は大声で、土下座しながら言うことにした。

「すみません! ●らせて貰えないでしょうか! メディア!」

 と俺が言った時だった。


「死ね!」とメディアの声。


 俺の顔がメディアに足蹴にされた。

 魔力を込められてて、痛い。

 だが、それがいい。

 俺はほくそ笑む。


 するとメディアが、

「死ね! 死ね! 死ね! 死ね! ……死ねぇ……」


 俺の顔は彼女に何度も足で蹴られ、痛いと気持ち良いの感情を得る。

 あぁ、美少女に踏まれるっていいな。

 踏まれるというか、蹴られるだけど。


 声が聞こえる。

【レベルアップです×一万。「変態」を改めて獲得】


 ……。

 俺は気付いた。

 有象無象のパンツを観たり、有象無象の美少女よりも、意味があることがある。

 超絶美少女。

 俺はニヤリと笑ってしまう。

 あぁ、気持ち良い。

 最高の気分だ。

 超絶美少女だからこそ、足蹴にされたりパンツを観たりして癒されるんだよ。

 それこそ、スレイブやジャンヌを超えるくらいの美少女なら気分最高だわ。


「メディア、最高だ!」と俺。

「変態、死ね!」

「もっと蹴って下さい!」

「死ねぇ!」


 観れば、メディアの顔から大粒の涙が出てる。

 うわぁ、泣いた顔も可愛い。

 彼女の涙が俺の口に入り、とてつもない感激が俺の全身を震わせた。

 気分良いわ。

 残念なのが、見えそうで見えないパンツ。

 どんな色してるのかなぁ……えへへ。


 突如、

「あの、セクハラですよ?」と俺の肩を掴んだ奴がいた。

 振り向けば、詩人オルペウスがキレ顔で俺を観てる。この間も、俺の頭は泣きながらメディアに蹴られてる。

「女性が嫌がることをしちゃいけません」と大詩人オルペウス

「……」

「自分がされたら嫌なことを、他人にしちゃいけないですよ。相手の立場に立って、考えてみて下さい」

 俺はニコリと笑って、

「俺はメディアちゃんを踏んでも構わないぞ」

「いや、そういうことじゃないんですよ? 踏んだらダメですけど」

「踏むよりは踏まれた方が嬉しいけど」

「いや、そういうことを言って欲しいんじゃないんですよね。その、分からない人ですねぇ」


 詩人オルペウスは悔しさと悲しさと切なさを噛み締めたような顔になった。


「詩人オルペウス、貴方のことは尊敬している」と俺。

 あぁ、美少女に踏まれるっていいなぁ。

「まるで尊敬の念を感じないんですけど?」と詩人。

「ごめん。超絶美少女を観たらつい、踏んで欲しいと思ってしまって」

 詩人はムカッとした顔。俺の言葉に腹が立ったらしい。

「貴方は最低だ。美少女を観たら、誰でも踏んで欲しいと思って土下座するんですか?」

 俺はふと考える。


 メディアは俺に「死ね死ね」と泣きながら踏んで下さってる。

 最高だ。


 美少女を観たらそんな気持ちになるかというと、正直全ての美少女にそんな気持ちにはならない。

 客観的美少女と主観的美少女は違う。

 それに圧倒的美少女と微妙な美少女もまた違うのだ。

 メディアは圧倒的かつ主観的美少女。

 そう、リリスと同じクラスの超絶美少女だ。


 だから俺は、詩人に向かって、

「こんな気持ちになったのはリリスとメディアだけだ」

「二人もいる時点でヤバいですよ、貴方」


 詩人オルペウスは俺の肩から手を離し、物理的に距離をとった。


「大王。さっさと倒さないとヤバいです。この方、強いけど敬意を払える人間性をまるで持って無い」

«そういうこと言わないであげてよ、オルペウスさん»

「無理です。俺の詩人としての本能が言ってる。この男は危険です」

«メディアさんが可愛すぎなければこんなことしてなかったはずなんだ»


 ッハ。

 メディアは俺を見て泣いている。

 俺も気が付いたら土下座していたんだ。

 超絶美少女のせいで理性消えてたわ。

 危ない。


 俺は改めてメディアを見る。

 泣いてるメディアは無茶苦茶可愛い。

 戻った理性は一瞬で吹き飛んだ。

 イアソンって馬鹿なんじゃないの?

 こんな可愛い子を捨てるとか、見る目ないだろ。


「あら、貴方、そこは分かってますね」とメディアが笑って、涙を止めた。

 え……心を読まれた?

「あ、はい。あたしも医神と同じ力があります」

 とメディアは笑う。

 ……えげつない能力だ。

「あたし、貴方と会話したくないので帰っていいですか?」

 俺は本能の赴くまま、彼女の質問に質問で返す。

「すみません、パンツ見せて貰ってもいいですか?」と俺。

「人の話、聞いてました?」

 とメディアは俺の顔を蹴ってくる。

 良い匂いだ。

【レベルアップです×十万】


「きも」とメディア。

「幸せ」と俺は笑顔になった。

 メディアの声は綺麗で可愛い、若干アニメ声だ。

 メディアは何度も魔力を込めて俺の顔を踏む。

 俺の顔はかなり陥没するが、それさえも『愛』のように感じ、全てが愛おしくなる。

「真剣に、きもい!」とメディアは殺意を込めて俺の顔をける。

「幸せ♡」

「きもいきもいきもいきもい!」

「あぁ、好き! 好き! 好き! メディア、大大大大好き♡」

 あぁ、沢山蹴られて、沢山壊されて、沢山治っていく。

 幸せ~~。


 俺が蹴られてるのを、医神とアダムと大王と詩人が観ている。

 止めないでくれて、ありがとう。


「魔王って恐ろしい方と思ってたんですが」と詩人。

«うん»と大王。

「これじゃあ、ただの変態じゃないですか」

«そうかもね»

「人間性が終わってますよ」と落胆したような声。

«魔王だし道だしね»と淡々と答える声。


 げしげし、ぼこぼこと蹴られる。

 顔は変形するが、『完璧治癒パーフェクトヒール』ですぐ治る。

 あぁ、メディアって可愛いなぁ。


「キモいんですけど! 貴方に可愛いなんて思われたくない!」

「思うのは自由だろ」

「ダメです!」

「表現の自由だ」

「不細工に好かれるなんて、あたしにとっては猥褻物陳列罪です!」

 酷い言い分だ。俺はイケメン化したというのに。

「あたしの夫、イアソン様の前じゃ、その程度の顔は不細工です!」

 カチン。

 俺は少しムカついた。

 そりゃイアソンの全盛期の顔に比べたら、今の俺なんて大したことないよね。

 うん、そうだよね……。

 俺は少し、言い返してしまう。

「ふざけんな! 可愛い人を可愛いと思って何が悪いんだよ!」

「好きな人に思われるのと、キモい人に思われるのは全然違うんですよ!」


 それは分かる。

 俺自身、ブスのパンツなんて興味無いが、超絶美少女メディアのパンツなら興味ある。


「キモい。魔王、本当にキモい!」とメディアはまたもや泣き始めた。

「メディア、好きだ」と蹴られながら、俺は真剣な顔で言う。

「キモいキモいキモいキモい!」


 メディアは懐から杖を取り出した。

 アスクレピオスの杖より長いな……彼女の肘から手先くらいまでの長さ。


「魔王なんか、消えちゃえ! 魔力拡散!」


 俺に向かって、水色の魔力が放たれた。

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