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ドワーフギルド⑦ 知恵テイムvs道テイム 前編

 知恵テイムと道テイム、紫色な光と透明なエネルギーが激突し、爆発が起こる。


 ドゴオオオオ!

 巨大な黒煙がドワーフギルドに巻き起こり――俺は観測した。

 知恵テイムと道テイムのエネルギーがぶつかり合い、散ったのだ。その散ったエネルギーは俺に閃きを与えた。


「! これは……」


 それは初めて見たような感覚。しかし、確かな『確信』を俺に与えた。


(まさか、道テイムは拡散して放つことができるのか?)


【肯定】


 小賢者が保証してくれる。ってことは、俺の能力はギルド長が言った通り、本当にまだまだってことになるな。


〖な、何てことだ! まさか俺の知恵テイムを相殺するだと!?〗


 ソロモン王の驚く声。俺は部屋中央にいるソロモン王を凝視する。見れば、そいつの十ある腕がまた紫色に光輝いている。


〖ロードロード……本当に厄介なスキルだな。まさか、俺と同等の力を持っているなんて〗


 同等……だが俺はまだ使いこなせていない。きっと使いこなせば、ソロモン王の知恵テイムより上なんだろう。

 ソロモン王が掌から紫色の閃光を放ち、俺でなくドワーフ達が喰らった。合計二十名のドワーフが怪しい光でぐったりと倒れ込む。


「ソロモン王、何してやがる」


〖ここでお前を倒せて良かったぜ……ほら、亜人共! ロードロードを殺せ!〗


「「「「「グオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」」


 突然、怪しい光に包まれていたドワーフ達の筋肉が膨張し、目が血走る。明らかに尋常でない雰囲気で、彼等は俺を憎しみの籠もった目で見る。


「み、道……さん、に、げ、て……体の、自由、が、きかな、い」


 俺は驚いた。怪しい光に包まれた奴の中には、ギルド長の孫もいた。血眼で俺を睨んでいる。彼は血涙を流しながらハンマーを持って俺に近づいてくる。


〖亜人共よ、かかれ!〗


 ソロモン王の声と同時に、ドワーフ達が俺に襲いかかってくる。そして、ソロモン王は掌に紫色の魔力を込めて、またもや怪しい光をドワーフ達に放っていく。洗脳を解く手段はなく、次々に洗脳されていく。状況は悪化の一方だ。

 俺は俺で、取りあえず自衛するしかない!


「道テイム!」


 俺は床の素材を使って自分を覆った。ドワーフ達がガンガンと凄い力で殴りつけてくるが、これでしばらくは保つだろう。

 って、そういえばレギンとブーケはどうしたんだ? っと思った瞬間。


「やぁあああああ!」


「はぁあああああ!」


 隙を伺って隠れていたのだろう。桃色のケンタウロス少女と黒いサキュバス少女が、ソロモン王の背後から蹴りとパンチを放ち急襲する。その攻撃はいつもより魔力の込められた一撃の気がした。

 しかし、それを嘲笑うかのように、ソロモン王の体がぼこっと貫かれただけだった。粘体の体に穴が空き、穴が塞がっていく。


 ソロモン王はまたもや怪しい光を放ち、ドワーフ達に当てていく。


〖はははは。ブーケとレギン、そんな攻撃じゃ大したことないな。序列持ちとは言え、俺の膨大な魔力量を貫くなら、もっと密度が濃くないとな〗


「くそ! 魔力濃度が高すぎる……あいつ本当に人間か!?」


 レギンが歯軋りする。ブーケはじーっとソロモン王を観察しているようだ。


「分かりました。レギンさん、道さん……あのソロモン王はスライムに近いです」


「スライム!?」


 レギンが驚く。


「はい。スライムです。今蹴って分かったのですが、魔力の塊で……意識が宿っているだけ。当然ですが、あれは本体ではなく分身なのでしょう」


 たった一度の攻撃で敵の分析をするとは流石ブーケだ。レギンは更にブーケに聞く。


「分身か。しかし、なぜソロモン王の分身がここに」


「ドラゴンの魔力フンを媒介にしたのでしょう。転移者はスキルが日々向上していく。そしてソロモン王は全てを見通す『千里眼』の持ち主です。魔力フンに意識を集中し、遠隔で自己召喚したのかと。魔力フンを使ったのは高濃度かつ膨大な魔力の塊故に、召喚の素材に適していたのでしょうね」


「成る程」


 パチパチパチ、と拍手音。

 その方向を向けば、ソロモン王が拍手をしていた。


〖素晴らしいな、流石序列三位〗


 ブーケとレギンのやり取りを聞いていたのだろう。そして間違いなく自分が倒されないと高をくくっている。むかつく。


 紫色の人型であるソロモン王の顔は目も口も鼻もない。しかし、その心は笑っているのが分かる。俺とブーケとレギンは中央の敵を注視。


〖で、序列諸君。分かったからと言ってどうする? 止められるかは別問題だよ。知恵テイム、知恵テイム、知恵テイム!〗


 逃げ出していたドワーフはいたが、逃げ遅れたドワーフが殆どだった。

 ソロモン王分身の掌から次々に怪しい光が出てきて、とうとうブーケとレギンにも当たる。


「っぐっ……」


「っぐああああああ!」


 紫の光に包まれたブーケとレギンが苦しんでいく。

 俺が道テイムしたのは木材や土だ。石ほどの強度は無い。知恵テイムされたドワーフ達はどんどん俺を覆う素材を破壊していく。ぶっちゃけまずい、追い詰められていってる。


 ソロモン王はレギンとブーケ、ドワーフ達を見回すように顔を動かした。目はついてないが、もしかしたら俺と同じように視界は人間と同じく百二十度から百五十度くらいだったりするのだろうか?


〖序列持ちは抵抗力が桁違いだな。同じ亜人でもこうまで性能差があるとは〗


 ソロモン王は亜人を……まるで虫けらを観察するような言い方をする。王様らしく、見下す言い方を。


〖仕方が無い。洗脳済みのドワーフ達よ、ロードロードを殺せ!〗


 俺は素材の隙間からチラ見。確かにブーケは辛うじて、耐えている様に見える。レギンは……今にも倒れ込みそうだ。俺のエナジーも消費していってて、ソロモン王の分身を倒す手段は見つかっていない。状況は最悪だ。


〖はははは、エヴォルの鍛冶技術もこれで少しは破壊されるだろう。次の侵攻は俺も前線に出る。エヴォルは、今日が命日だ!〗


 ソロモン王は高笑い。とうことは、今日来るっていうのか、エルティア王国軍。なら分身体のこいつくらい、倒さねえと……本体は更に強いだろうしな。

 俺は意識を集中し、ソロモン王を見る。


「てめぇ! これでも喰らいやがれ!」


 道なんて見えない。相手をただのスライムのような存在と仮定する。道テイム。すると、何も起きなかった。


【報告。スキルの空撃ちになりました。道として見えないものに、道テイムは効きません】


 小賢者……。なんてことだ。これじゃあいつを倒す手段がない! 万策が尽きた!


 ソロモン王と俺の間に、ブーケが立ち塞がる。


「っく……道、さん、逃げて! あたしが、時間を稼ぎます! 貴方だけでも、逃げてくれれば!」


 ブーケが頭を抑えながら俺に叫ぶ。だが俺は仲間を見捨てることは勿論、レギンを置いていくことなどしたくない。そう思った時、俺を覆う素材がドワーフ達に引き剥がされ始めた。急に強い力になった。


「どういうことだ? なぜドワーフの筋力が急に上がったんだ!?」


〖知恵テイムの出力を上げたのさ。筋力アップだ。これでもう、お前達の負けだ!〗


 ドワーフ達は自らの肥大した筋肉により皮膚が一部千切れ、痛々しい感じになってる。対象の自由を奪い、思いのままに操り、肉体の限界を超えた強化をする……それが、知恵テイム。恐ろしいスキルだ。


〖ロードロードもドワーフ達も始末できて、一石二鳥……かな?〗


 勝ち誇るソロモン王の言葉。ドワーフ達が次々と俺の体を覆う素材を剥がしていく。ブーケが優しく蹴りを入れてドワーフ達を吹っ飛ばすが、すぐにドワーフ達は立ち上がって再び襲いかかる。



 昨日呼んでくれた方ありがとうございます。ソロモン王分身の「」を〖〗に変更しました。


 もし『面白い!』とか『続きが気になる!』とか『道の活躍をもっと見て見たい!』と思ってくれたなら、ブクマや★★★★★評価をしてくれると幸いです。


 ★一つでも五つでも、感じたままに評価してくれて大丈夫です。


 下にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところに★があります。


 何卒、よろしくお願いします。

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