スレイブ、「○○○○○」を認める
立ち話もなんなので、俺とレギンとスレイブは王城近くの広場に移動する。
俺は地面に、スレイブとレギンは新しく立てられた長椅子に着席。
スレイブは俺に笑顔を向けた。
「道さん、元々この広場も長椅子があったのですが、修理が出来ずにいたんです。戦争中で、ドワーフの人達は戦争に関係する武具や石畳整備に勤しんでましたから」
「成る程な」
「貴方が道テイムで整備してくれるから、直ったんです。ありがとうございます」
「おう」
俺は俺達に聞き耳を立ててすぐさまやって来たスレイブに質問することにした。
「ところでスレイブって暇なのか? いつも男漁りしてるイメージしかないけど」
「道さん、貴方ね……確かに男漁りしますけど、暇なわけないでしょ。私は、序列七位ですよ? 激務です」
「そうなのか?」
「はい。私、こう見えても結構頼られてるんですよ。情報部のトップなんです」
情報部のトップって凄いな。
「スパイみたいなものか?」
「スパイではないですね。でも、国内の情報を集めて魔王様やドワーフ大臣、ブーケやリィフィ、村長さん、ヒポハスさんに報告書を提出してます」
「それだけ聞くと、凄い忙しそうだな」
「要領が良いので、暇を見つけたら男漁りしたり、親友のレギンと談笑したりするんです」
得意げに言うスレイブ。男漁りは得意げに言えることではないと思うが……。
俺は下から見上げて、椅子に座る彼女のパンツを眺める。俺は表情を出したい時に出して、消したい時に消せるのだ。
へへへ。
純白のパンツが見える……何だろう、自分のことを嫌いな美少女のパンツを見るって背徳感とか意趣返しを含むのか凄く興奮する。
見た目だけなら極上の美少女だ。スレンダーで、華奢な四肢を持つスレイブの今日のパンツは白いビーズが散りばめられて、何と装飾として煌びやかな宝石が散りばめられている。
けしからんパンツだ。
「ちょ、ちょっと道さん、貴方今、私のパンツ見てるでしょ」
ぎくりっ! な、なんて鋭いビッチエルフなんだ!
「しょ、証拠あるのかよ」
「ありますよ」
え、あるの? 表情を消しているはずなのだが……。
「だって道さん、表情を消してるじゃ無いですか。やらしいことを考えてる時に限って」
やべぇ、バレバレじゃないか。そうか、確かにいきなり表情消すと怪しまれるよな……しまった。
「バレてないと思ったんですか? 真面目な話してる時、急に表情が消えたら、そりゃあ分かりますよ。パンツ見てるって」
スレイブって、賢いよな。うん。賢くい美少女のパンツを見るって良いよね?
ばれても結局……見れるんだから……否。
否、否、否。
やっぱ悔しい。バレていたのか。俺は、覗き魔失格だ。覗かれたことに気付かれていただなんて……悔しい!
「正直言うと、道さん賢いようで、なんか抜けてますよね。バレるに決まってるでしょ? この……変態!」
「うぅ……」
なんだろう、スレイブに罵倒されるってちょっと気持ち良い。
【エナジーが回復しました】
「変態、変態、変態、道さんの……変態!」
【エナジーが回復しました×四】
なんだろう、興奮する。
レギンが座ったままスレイブに詰め寄る。
「ちょっとスレイブ、人の彼氏にあんまり変態変態って言わないでよ」
「レギン、親友として言わせて貰いますわ。いい加減目を覚ましなさい」
おいおいあのビッチエルフ、何言ってんの?
「イケメンをいくらでも紹介しますから、他に彼氏作りなさいよ。いくらなんでも、道さんは無いって」
俺は黙っていられず、スレイブに抗議する。
「おい、いい加減にしてくれないか? 俺を変態って言うのは良いよ?」
気持ち良いからな。
「だけど、彼女に別れてくれってのは言い過ぎだろ」
「そうだそうだ」
レギンが立ち上がって俺に同意する。スレイブは座ったまま溜息をついて、
「はぁ。まぁ……親友がいつか目を覚ますと思って、本日はこれくらいにしておきますわ。でも道さん、覚えておいて下さい。貴方はレギンに相応しくありません。仮に魔王様やブーケが認めても、私はレギンの親友として……貴方が彼氏に相応しいとは認めません」
このビッチエルフが!
「どうせ、あたしが貴方のことを好きって言ったら貴方は私のことを好きになったんです。そして、レギンが貴方を嫌いって言ったら……きっと貴方はレギンを好きにならなかったでしょう」
スレイブは腕を組みドヤ顔で俺に高説を垂れる。やれやれ、論破してやるか。
「つまり、見た目で好きになったから浅いって言うんだな?」
「えぇ。人と人が付き合うには、心と体を触れ合って、相性の良さを確かめた上で付き合うべきです」
そこまで相性の良さを確かめあったなら、もう結婚して良いと思うんだが……。というか、その前段階とか青春の1ページとして恋愛もあるんじゃないか?
「スレイブの話、筋が通ってる部分も感じる」
「でしょう?」
得意げなエルフ。しかし、俺としては筋が通ってない部分も感じるのだ。
「だけど、イケメンとやりまくるビッチを肯定するのは話が違うと思うんだ。相手との相性を知る為にやりまくるって、行き過ぎだと思う」
スレイブはちっちっちと言いながら人差し指を振る。自信満々の様だ。
「甘いですね、道さん。人と人が付き合うには、習慣とか価値観とか種族とか体の相性とかが必要なんですよ。処女と童貞のカップルとか終わってますから」
この根拠の無い自信をここまで持てるのは、ある意味羨ましいのかもしれない。論破される相手がいなければ、の話だが。俺はビッチエルフを論破することにした。
「でもスレイブ、一ついいか?」
「何ですか?」
「お前、見た目じゃないとか言いつつ、面食いなんだろ?」
「概ねそうですね。あと、権力と金を持った相手とも一応やってますよ?」
自慢げに言うことか? ドン引きしちゃうぜ。まぁ俺のいた世界でもこういう軽い子はいたんだろうけど。
「お、おう……」
「それが何か?」
俺はにやり、とほくそ笑んだ。
「何笑ってるんですか? 気持ち悪い」
「スレイブ。自分が言ってること矛盾してるって気付いてないか?」
「矛盾? 貴方みたいな童貞に、恋多き女の言葉を崩せるとでも?」
「あぁ」
「ふーん。面白い、やってみて下さいよ」
「イケメンで相手とやるかどうか決める女が、どうしてレギンを可愛いから彼女にするってのが浅いって言えるんだ?」
「え……?」
「顔で相手を決めて、体を許すビッチ女が、顔で彼女を決めるなんてけしからんと言うのはおかしいだろ」
スレイブはきょとんとした顔になる。レギンはぱぁっと明るい顔になり、俺に笑顔を向ける。
「そ、そうだな。ロードロード、確かにその通りだ。顔でやるかどうか決めてるスレイブが、あたし達を批判するなんておかしいぞ? あたしがロードロードに一目惚れしたのは、間違ってないんだ」
スレイブは理解したのか、ッハとした表情になる。彼女は椅子から身を乗り出すように、前のめりになった。
「そ、そういうことですか。レギン、道さん、でも、でもですよ? 彼氏なんですよ? 特別な人を彼氏にしたいと思うじゃ無いですか!」
俺はスレイブに反論を決めた。
「俺にとって、レギンは特別だぞ?」
「でも、付き合うんですよ? 彼氏ですよ?」
「意味分からねえ。だから、何だ?」
「真剣にお付き合いする為に、普段から色んな人と体の関係を持ってないと、夜伽が上手くいきませんよ」
「多分、普通の男は尻軽ビッチより処女の方が好きだろ、結婚とか考える様な感じなら」
「何言ってんですか? モテまくった方がトロフィーワイフになれますって。沢山の男を抱いてきた女に選ばれるなんて、名誉そのものでしょう?」
スレイブは絶対の自信があるとばかりな態度。
このビッチ、馬鹿なんじゃ無いか?
「なぁスレイブ、お前、何人とやってきたの?」
「百から先は覚えてませんわ」
気持ち悪っ。まぁまぁなスタンダードどころじゃない。完全なるビッチだ。三桁はやばい。
しかも、覚えてない、だと?
「道さんは童貞ですよね? 気持ち悪いです」
「お前に言われたくない。過ぎたるは及ばざるが如し、だ。やり過ぎも気持ち悪い。いや、やり過ぎの方が気持ち悪い」
「童貞のくせに、生意気ですね。あたし、上質な女なんです。考えて見て下さい。名画だって、色んな金持ちや王様の名札が貼ってあるから価値があるんですよ? 女って一つのブランドなんです」
「それ、お前を抱いた男に価値があるんであって、お前そのものに価値がないって言うんじゃ」
「そんなことありませんよ。価値っていうのはコミュニケーションの中で生まれるんです。独りよがりな価値でない限りね。女の生き方は、身も蓋もない言い方をすればビッチこそが至高なんです」
とんでもない考えだ。こいつ、本当にエルフか?
「でも家が中古で経年劣化していけば、価値は無くなるよな? 女は家と一緒だよ。新築がいい」
「でも家は補修工事だって出来ますし、家の方だって住む人を選びたいはずですよ。イケメンで見栄えがして、補修工事する金があって、大切に家を扱ってくれて、沢山の友人を呼んでくれる人が良いって思ってるはずです。不細工で貧乏で粗暴で友達が一人もいない男なんて、嫌です。価値観や習慣や趣味も体の相性さえ合わないなら最悪ですね」
凄え長台詞だな、このエルフ。それに処女は補修工事なんて……いや、そういう手術があるって聞いたことあるな。
「私は間違ってません。ビッチこそ、女の生きる道なんです。どうせモテる男だってビッチと遊びまくってるんですよ? モテるビッチ界隈の方が、独りよがりな処女より余程上質ですよ」
嫌な考え方だな、こいつの考え。ていうか、この考え、処女のレギンを全否定してるよな……あとスレイブの祖国・エルフ国も。
「ならスレイブ。お前はレギンより素晴らしい生き方してるって胸を張って言えるんだな?」
「えぇ」
俺はスレイブの胸を見る。貧乳だ。張る胸など、この女には無い。だが、それがいい。
乳は美乳であってこそ、素晴らしい。
貧乳でも綺麗な肌やラインなら、それは賞賛に値する。
「どこ見てんですか、この変態」
「お前の綺麗な胸見てるんだよ」
「……道さん、恥じらいって言葉があるんです。少しは覚えた方がいいかと」
「百人越えのお前には言われたくない!」
この尻軽ビッチが!
スレイブは溜息し、レギンを見る。
「まぁ、今日はこのくらいにしときましょう。でも、レギン、貴方はどう思いましたか?」
「えっと……」
そうだ。俺とスレイブは言わば選手と選手。話し合いは平行線で終わる以上、審判の役割をレギンにして貰うといい。そもそも、レギンを巡る話し合いでもあったわけだし。
レギンは数秒目を閉じ、俺とスレイブを交互に見て話す。
「スレイブ、ご免ね。あたしは、ロードロードの方が好き」
「――」
スレイブは絶句している。ざまあああああ。俺、大勝利!
「ロードロード、あたしはロードロードが童貞でいてくれて良かった。今後もあたしだけを、相手にして欲しいかな」
「恋少ない男性の方が、レギンに好ましいのか?」
「うん」
躊躇いがちに、サキュバスは微笑む。可愛い。こんな可愛い彼女がいて、浮気なんかできるわけがない。
スレイブは立ち上がり、レギンに近寄り、肩を掴んだ。スレイブの顔は強張っている。
レギンは驚いた後、苦笑する。
「なぜ、なぜですの? ビッチこそ、女の生きる道です」
スレイブ、俺に拳があったら握り込んでるぜ。そのへんにしておけ。
「その、あたしサキュバスで、スレイブはエルフだから、価値観違うのはしょうがないよね」
「そんなこと言ってないの! 貴方はその気になれば、王侯貴族やイケメンとやりたい放題出来るの! なのになぜ、やらないの?」
「素敵だって思ったから」
「素敵? 何が?」
「十年前、スレイブと出会って、お互いの恋愛観を話したでしょ?」
「え、えぇ……」
この二人、ちょくちょく聞いてたけど幼馴染みなんだよな。サキュバス国とエルフ国って近いのだろうか?
「あの時、思ったの。貞操観念って素敵だなって」
「レギン……」
スレイブの目は悲しげになる。いや、なんかむかつく。彼氏の目の前で、彼氏をディスる彼女の親友とかありえないだろ。
「あたしさ、スレイブに出会えて良かった」
「私も、レギンに出会えて良かったです」
サキュバスは明るく笑い、エルフは悲しげに眉を顰める。
「だから、あたしを信じて、親友。ロードロードを選んだのはきっと正しいことだから」
「良いんですか? たった一回の人生を、こんなコンクリートの塊に使って」
今思うけど、コンクリートの塊って凄いフレーズ……言われる度に、よく俺を選んでくれたと思う。コンクリートの塊に一目惚れなんて出来るか? 普通、出来ないはずだ……そう考えると、スレイブの意見って真っ当なんじゃ。
いや、そんなネガティブな考えダメダメ。俺はレギンが向けてくれた気持ちに応えるんだ。
例え、いつか裏切られたり振られたり、何か恐ろしい秘密があっても、俺は彼女に応えるんだ。
誰も相手にしてくれない俺を、唯一相手にしてくれた人だから。それが亜人であれ、サキュバスであれ、変わらない。
相手にしてくれた。だから、相手にする。
レギンは、微笑む。
「いいの。あたしはロードロードを夫にするって決めたんだから」
「……貴方は処女でサキュバス国を追放された」
「うん、そうだね」
スレイブの言葉にレギンが応える。いや、考えて見れば「サキュバスだけど処女なので追放されました」ってすげー言葉だ。まぁその隣に「エルフだけどビッチだから追放されました」って奴がいるんだが。
「レギン、これ以上問題を起こせば……サキュバスロードのリリス様が、貴方を殺しに来てもおかしくありませんわ」
何?
俺は黙っていられず、スレイブに質問を決めた。
「スレイブ、それってどういうことだ? 俺が亜人ですらないから、サキュバスと結婚出来ないということか?」
「道さん……サキュバス国はこの世界で、普通の種族じゃない」
「どういうことだ?」
「バチカン市国とか、英王室に近いと思って下さい」
生々しすぎる例えた。
「いや、その例え……止めてくれないか?」
「貴方、賢いんでしょう? ならこの程度の話」
「恋愛とかエンタメの話でそういう話、されたくないんだよ」
この気持ち、分かってくれないかな?
スレイブは神妙な顔になり、ゆっくりと話し始めた。
「この世界の全ての魔物はリリス様から産まれました」
「うん、聞いたことある」
「レギンは普通のサキュバスですらありません。サキュバスは本来、ビッチじゃないといけないんです。サキュバスで処女なんて異常なんです。分かりますよね?」
「サキュバスだもんな」
「はい。レギンは、次期サキュバスロ―ドになれる程の存在なんです」
「レギンが? リリスを差し置いてってことか?」
「今のリリス様なら、差し置けるでしょうね。レギンはそれ程肉体の性能が高いんです」
同じ種族のロードを凌ぐ程の肉体? 確かに、レギンみたいに肉弾戦で戦うサキュバスなんて聞いたことないな。
「肉体の、性能……確かに戦場にサキュバスの子達がいたけど、レギンほど強くは無かったな」
「そうでしょう?」
スレイブは頷く。
「追放されたとは言え、リリス様達がレギンを無視するなんてありえません。何かがあれば、サキュバス国としてアクションを起こしてきておかしくないんです」
ってことは。
「スレイブはその何か、が俺だと言っているんだな」
「はい。普通の魔物……そこら辺のスライムとやった程度でも、サキュバス国はエヴォルに使者を送り込んで来て、レギンの追放処分取り消しをするかもしれません」
処女喪失を理由に国外追放処分を取り消すってやべえな。
「じゃあ俺が彼女の処女を奪ってやればいいんじゃないか?」
レギンは顔を紅潮させる。
「も、もう。ロードロードったら」
スレイブは拳に緑色の魔力を込めて、俺を殴る。
「こ、このエルフ、何をするんだ!」
「この馬鹿道! 真面目な話をしてるんです」
ノーダメージだ。スレイブはツッコミの為だけに魔力を纏ったらしい。強くは殴らなかったのだろう。
「……ってことは、スレイブは一応、レギンの身を案じていたわけだな?」
「そういう面もあります。でも、本当に……レギンは素敵な恋が出来るはずなんです。なのに何でこんなコンクリート男に、と思うことはあります」
「……」
それは正論。コンクリートを見て発情する人なんか聞いたこともねえ。
まぁ、それはさておき。
「話を戻すけど、レギンは俺の勝ち、ってことで良いんだな? 面食いビッチが顔で恋愛するなってのはおかしいって」
俺は本題に切り替える。
「まぁそうだね」
「よし、俺の勝ち!」
「でも、スレイブの価値観は……スレイブには正しいと思う。だから勝ち負けってより相性かな? あたしとロードロードの相性の良さ、スレイブにはまだ理解出来ないよ」
「相性?」
「うん。だって処女のサキュバスと処女のエルフが違う様に、ビッチのサキュバスとビッチのエルフって違うからさ」
この言葉には俺とスレイブも「?」となった。
「どういうことだ、レギン?」
「私も分かりませんわ。どう違うんですか?」
レギンは俺達の質問にあははと笑って、
「その内分かるよ。きっとその時、スレイブも分かる。あたしの相手ってロードロードしかいなかったって」
「うーん。私には、分かりませんわ」
自分を有名人の名札が付いた名画だと例えたビッチエルフ。スレイブの価値観では、処女の価値を理解なんて出来ないだろう。名札が付いた絵画は確かに価値あるし、社交会とかで花咲く会話が出来る。でもそれは、個人が鑑賞するものじゃないのだ。
童貞と処女、それは初々しい。お互いの初めて、を経験しあって行くのだ。リードするなんてお互いが出来ないはずだ。そして、初めてだからこそ、何が嫌で何が好きかも分からず、ぶつかり合ってしまうかもしれない。
でも。
「レギン」
「何、ロードロード?」
サキュバスの彼女が、俺に微笑む。
「俺、お前に選んで貰って良かったって言って貰えるように、色々頑張ってみるよ」
「うん! 楽しみにしてる! で、あたしも結婚して良かったって言って貰えるように頑張るね」
俺も彼女に、満面の笑みを返す。
「うん!」
スレイブは溜息をつく。
「はぁ……仕方ありませんわね」
「スレイブ、俺とレギンは当分の間は別れないから」
「……分かりました」
スレイブは諦めたように、眉を少し顰め――口角を上げて優しい目で俺を見た。
それは彼女が俺に初めて向けた何かの感情。だけど向けられた感情がなんなのか、俺には分からず動揺する。
「うふふ。それなら、邪魔はしません」
「えええーーーー!」
レギンは、驚いた表情でスレイブの肩を掴んで揺さぶる。
「いいの? いいの? いいの? 認めて、くれるの!?」
「そうですよ。でも、その男が男らしく無いと思ったら、度々言わせて貰いますからね? 私は貴方の親友ですから。親友に近づく悪い虫は、排除したいんですよ」
「スレイブ……ありがとう」
スレイブはレギンに、俺に向けたのと同じ表情を向ける。眉を少し顰め、口角を上げて、優しい声で、
「レギン。貴方がどうして……良い男を放ってロードロード・ドーロードを好くのかさっぱり分かりません。でも貴方が自分の意思で本気で恋愛しようとするなら、止めません」
「ありがと、ありがとスレイブ!」
レギンはスレイブをぎゅっと抱きしめる。
豊満な胸が起伏に乏しい胸に当たる。
【レベルアップです。トロフィー「」を獲得】
スレイブが俺を一瞥し、苦笑する。
やべぇ、俺の気持ち……このエルフにはバレてる。
「こら、道さん」
「は、はい」
「レギンを泣かせたら、承知しませんからね」
「は、はい!」
レギンは俺を見て、少し悲しげな表情をする。
「確かにスレイブはあたしが分からないロードロードを見えてるな」
「でしょ?」
エルフは得意げに少し笑い、サキュバスは悲しげに少し笑う。
「でも好きなんだ」
「それは分かりました」
っく……俺ってやつは、純情はレギン一筋なのに、スケベ心は美少女全員に向く。これは仕方が無い男の性質なのか?
「なんかショック。あたし以外の女で興奮されるなんて。彼氏が出来ると、今までの価値観が変わるね」
「でしょ?」
レギンは変わっていくのか……。これから、成長する彼女の心に俺は応えられるだろうか?
いや、出来るか出来ないかじゃない。出来ないと、いけないんだ。
それが彼氏ってことなんだと思う。俺を好きって言ってくれた人に応えたい。
「でもね、あたしも彼氏を作らないでやりまくってるスレイブに言われるのは筋違いに聞こえる。ロードロードの方が正しいよ」
「れ、レギン……」
スレイブは悲しげな顔でショックを受けてる。いや、当然だろ。ショック受けてるっておかしいだろ……。
「でも感謝してるよ。見ててスレイブ。きっと良い恋路を歩んでみせるから」
「……分かりました。じゃあ、行動で見せて下さい」
サキュバスとエルフは微笑む。
俺は「彼女の親友」に漸くお付き合いの理解が少し得られたというのに、精神的な疲労を少し感じた。
「スレイブ、見ててくれ。俺は仮に世界が否定してきても、レギンが笑顔を向けてくれる限り愛し抜いてみせるから」
「道さん……いえ、ロードロード。その言葉、忘れないで下さいね」
スレイブは天使のように可愛く笑い、背中に生えた白翼を少しばさばさと震わせた。
……そういえば、スレイブ以外のエルフもこの国で何人か見てきたけど、彼女以外に翼は生えていない。
何故だろう? スレイブは特別なエルフなのだろうか?
レギンが、特別なサキュバスであるように。
サキュバスとエルフは抱き合っている。微笑ましい光景だ。
……まぁいいか。
こうして、俺はスレイブに「お付き合い」を認めて貰えたのだった。
やれやれ、いつかレギンの両親にご挨拶に行くなら……今日以上に、スレイブ以上に、苦労するのかもな。
もし『面白い!』とか『続きが気になる!』とか『道の活躍をもっと見て見たい!』と思ってくれたなら、ブクマや★★★★★評価をしてくれると幸いです。
★一つでも五つでも、感じたままに評価してくれて大丈夫です。
下にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところに★があります。
何卒、よろしくお願いします。




