処女サキュバスは道(ゴースト)じゃないと好きになれない
『全くもう、貴方達は……』
スレイブの声にレギンが応える。
「どうしたんだ、スレイブ?」
『道さんが気絶して、レギンが泣いて、二人が魔王城にいると聞いて……心配になったので声をかけたんです』
「そうか、あたしもロードロードも元気だ。スレイブ、心配してくれてありがとな」
『もう……何があったんですか?』
「実はロードロードにあたしが全身オイルマッサージをやって」
『え、えぇ……カップルならある? かな……いや、ないですって』
「そしたら道テイムで石畳を整備する予定の時間に気絶しちゃったんだ」
『へぇ、気絶。マッサージされて気持ち良いと寝ちゃいますよね~って、何やってんですかレギン!』
このエルフ、ノリノリじゃないか。
『レギン、道さん……私、すぐ近くにいますので、待ってて下さい。私も魔力を節約したいので、風テレパスを切ります』
風テレパスとはスレイブがやっている魔法……まぁ、電話みたいな魔法だ。離れた相手と通話することが出来る。そしてその距離は精々十キロらしい。そして飛距離に比例して魔力消費が上がる。
「うん分かった。待ってる」
そして、五分ほど経過するとスレイブがやって来た。本当に近くにいたようだ。
スレイブがレギンに話しかける。
「全く、レギン、何やってるんですか! エルティア王国軍はまだ滅んでないし、停戦もしてません。なのに戦略・戦術・戦力全ての要である道さんを気絶させるなんて」
「ご、ごめんなさい」
「まぁ、もう他の方に怒られたと思うので、これ以上言いませんけど」
「うん……ごめん」
「レギンは、道さんにそんな尽くしたいんですか?」
「うん。だってロードロードは初めての彼氏たもん。尽くせたら尽くせた分、嬉しくなる」
えへへへ。本当にレギンは良い彼女だ。
スレイブは溜息する。
「親友として、貴方がいつか素敵な恋人出来るのは願っていました」
「ありがとう!」
「でもあんなのが彼氏で嬉しいなんて、貴方変わってますね」
す、スレイブ……なんてことを言うんだ!
レギンが俺を振ったらこんな国出て行ってやるからな! イケメンとか紹介したらお前のパンツに道テイムしてやる!
レギンははにかんでスレイブに答える。
「恋多き女、としてはあたしとロードロードが付き合うの、不満?」
「えぇ、モテなさそうじゃないですか。女性なんて付き合ったことなさそうだし、抱ける体もない。コンクリートの塊じゃありませんか。対する貴方は凄まじい美少女で、性格もそんな悪くない。全然釣り合ってません」
「むー」
「恋愛って、なんだかんだ釣り合ってるかどうかってのがとても大切ですよ」
「コンクリートの塊だけど、動けるようになったから……その内胸揉んでもらったりとかできるって」
胸揉むなんて、どこかの聖女様にしてやったけどな。へへへ。
「レギン、道さんとやるのなんてスライムとやるのと変わりませんよ」
動くなら粘体状態になるしかないからな。確かにその通りだ。人間のフォルムとかそのうちなれないだろうか?
「でも、結婚出来る。スライムは知性ないけど、ロードロードは知性あるでしょ?」
笑顔のサキュバスの返答で、ビッチエルフは戦慄して顔を抑える。
「あぁ……そうか、サキュバス族はゴーストだから……そうか、道さんはゴーストだから!」
「そう、あたしはロードロードのの子供を産める」
「――!」
スレイブはレギンをガン見する。
え? え? え――!?
れ、レギンって俺の子産めるの?
ど、どんな子になるんだろうか? ゴーレムみたいなのが生まれてくるのかな?
それとも、サキュバス? まさか、道?
黒翼が生えたコンクリートの塊が産まれてくるんだろうか?
全く想像できない……。一体、どんな子になるんだ? 種族さえ想像出来ない。
レギンはえっへんと腰に手を当てて自慢げに語る。
「そしてあたしは、浮気されたくない。ロードロードは浮気しない」
……この信頼に、答えたい!
「道さんは、浮気できないだけでしょ? ……いや、そうか。……道さんを女性として好きになる人は」
「あたししかいない。でしょ?」
スレイブは絶句している。レギンはふふんと勝ち誇っている。可愛い。
「へへへ、ロードロードって、あたしの理想のタイプなんだ」
レギンは背中越しにいじいじと手遊びして笑う。スレイブはレギンを凝視し、震える声で話す。
「漸く、腑に落ちましたわ……なぜ貴方が彼を好きになったのか」
スレイブは腑に落ちたようだが、俺はまだ腑に落ちない。だけどレギンが俺を好きって言う気持ちは……嘘偽りがない本当なんだな。それは本当に嬉しい。
レギンは黒翼をばたつかせる。
「あ、スレイブにも分かった? そうなの」
「……」
スレイブは眉を顰めて額を抑える。何を考えているんだろうか? レギンの親友さんは、やはりまだまだ俺よりレギンを理解しているようだ。
「スレイブ……あたしね? そもそも男性器がついてないゴーストの方が良かったの。しかも人間の霊魂を持ってて、あっちの知識に詳しい……もろにタイプなんだ」
紅潮した顔を押さえるレギン。
「……貴方のこと、どこかまともだと思ってました……貞操観念が強いから。私の様な異常者でなく、普通のエルフみたいなまともな感覚で生きてるのだと。でも、違うのですね」
「そうだね。スレイブは……ずっと、勘違いしてるね。あたし達が出会った十年前から」
スレイブは頭を抑える。
「そうですね。貴方は、サキュバスで貞操観念が強い……それがエルフと同じだと考えたのは、大間違いでした」
俺は静観を止めてスレイブに質問する。大事なことな気がしたのだ。
「なぁスレイブ、それってどういうことだ? サキュバスで貞操観念強いのと、エルフで貞操観念強いのは違うってことだよな?」
すると、それにレギンが答える。
「どうでもいいじゃん、そんなこと。大切なのは、あたしのタイプはロードロードってこと」
「理由は解らないけど、その答えは嬉しい」
「えへへへ、そう言って貰えてあたしも嬉しいな」
……大事なことな気がするけど、別にいいかな? レギンがこんな笑顔なら、勘ぐりとか止めていいだろ。サキュバス族で貞操観念が強いのは、エルフ族で貞操観念が強いのと話が違う……スレイブの意見はどこか引っかかる。
何か、大切なことを俺は棚上げにしそうになってるんじゃないか?
でも、レギンが笑っているなら、多分大丈夫だ。好きの気持ちで、乗り切って見せる。
ふと、突風が吹いて、近くを歩くオーガ族の美少女のスカートがはためき、
「あ、美少女パンツだ」
「え?」
レギンが驚きの声を上げ――俺はそれを気にせずオーガ族の子のパンツをガン見。
今日のパンツは縞々の白とピンク色。なんと麻で出来ていて、ちょっと上品な感じがする。
肉の食い込みがはっきりしていて、俺の心に幸せの風が吹いていく。
【エナジーが回復しました】
「うひょおお!」
レギンが呆然とした顔を向ける。だが今は美少女パンツだ。全く、エヴォルって美少女が多くて嬉しいぜ!
「ろ、ロードロード。他人のパンツ見て、ずっとそんなこと考えてたの?」
「え? うん、まぁ」
レギン、何を驚いているんだ? 俺はこういう奴だぞ?
「そんな、そんな……ロードロードって、他の美少女のパンツを見てこんな興奮してたなんて」
「? 興奮しちゃ、ダメか? 興奮出来る方がエナジーは回復するからな」
俺だけで無くスレイブもレギンの驚きを理解できないでいる。
「レギン、何驚いてるんですか? この男の中身がこうだってのは、当然でしょう? スケベな男ですよ? 男はスケベな生き物、それは貴方も分かってるでしょう?」
レギンは俯く。
「……頭では分かってるつもりだった。でも、具体的に声に出されると、違う。そっか、他の女性のパンツを見られるって、こんな気持ちなんだ」
俺は軽く溜息して、レギンに話しかける。
「全く、レギン、今更パンツ見られて嫌になったのか?」
「あ、あたしのパンツは見てくれていい」
「なら問題無いだろ?」
あ、あの子、ケンタウロス族の黒髪ロングの子だ。良いパンツなんだよな。今日はどれどれ……何とヒョウ柄だぁあああ!
鍛え上げられた足のむっちり感、何だろう……高校生時代に見た陸上部女子に通ずるものがあるな。へへへ、たまんねえ。
ブルマとか履いてくれても良いなぁ……いかんいかん、それならパンツが見れないじゃないか。俺は正義の為にパンツを視る必要があるというのに。それはそれとして、
「うっひょおおおおお!」
「……むー、なんなの、この気持ち」
レギンは胸を押さえて、不満そうな顔をする。どうやら俺のパンツ鑑賞に今までと違う気持ちを抱いているようだ。
この時の俺は思いもしなかった。それがまさか、エヴォルの存亡をかけた悩みになるということに。
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