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蛇のようなユダヤ人

「……売国奴か」


 耶律楚材、恐ろしい話だ。

 チンギスハン相手に自分の国を売り渡す、か。

 しかし聞いたことがある。

 あの男がいなければ、中国という文明に断絶が起こったということになってしまうのではないか、という指摘を。

 中華を捧げたと言えば聞こえは悪い。

 だが、モンゴル帝国を中華文明に吸収して元にした、という見え方もできる。


 ……中国って国を史上初めて統一したのは近代国家としては中国共産党が初めてだ。

 紫禁城の黄昏、という本に「近代的な国家な意味としての中国は存在しなかった」という文章がある。

 親中的と言われる本だが、その箇所は日本の左派に受けが悪く、「統一中国」という歴史観を乱すから日本に翻訳された際、その部分がカットされてしまったらしい。

 日本の左翼は馬鹿にもほどがある。

 中国共産党の業績を評価できる知能が、俺の脳細胞の千兆分の一ほどもないに違いない。

 まず、中国は言語がバラバラだった。そして国民運動として日本でいうならラジオ体操の代わりに簡単な太極拳を作り、毛沢東が自ら命令して鍼灸を学問として構築した。

 単なる民間療法だった鍼灸を学問に変えたのも、陳一族がやってた割と無骨な武術演舞太極拳を国民向けお手軽健康体操としての太極拳に構築したのも中国共産党の業績に他ならない。

 近代的な意味での国作り、それが出来るからこそ中国共産党は国民党に勝ったしその頭の良さを持って資本主義化が出来たのだ。

 中国共産党のメンバーがバカなら、一帯一路も作れないしそもそも資本主義化をやろうともしないし、やろうとしたところで失敗したはずだ。

 そんな簡単なことさえ、日本のバカ左翼達には分からないのだろう。

 革命を起こした奴らの創造的な業績、それが見えてないのだ。


 国家としての連続性は昔のチャイナと今の中国には無い。

 しかし、中国共産党が存在する前から……中国と言う国は一つの統一性のようなものを感じることがある。


 文明、というのは創造と破壊の両方の面がある。

 日本の左翼の頭が悪いせいで、中国の面子が微妙に傷ついてると思う程に、奴らの頭は残念。

 中国共産党はナポレオンや維新志士のように革命をしたから破壊はしてる。

 だが、創造もしているのだ。

 それを認識する知能がない。


 中国の連続性とは、過去の国に対する「継承性」にある。

 秦や漢が作り出した文化を継承しようという奇妙な連続性があるのだ。


 個人的には、ローマをアメリカが学んで継承し続けてるのに似ていると思う。

 ローマという国は滅んでも、パクスロマーナが大英帝国に学ばれ、アメリカ合衆国のパクス・アメリカーナに継承されていることからローマの生み出した文化はある程度残っているのだ。

 国家としての連続性はないものの、学び吸収するからこその連続性がそこにあるように感じる。


 俺が思うに、あの耶律楚材という男は文明という視点で中国をモンゴルに継承させた人材の一人。

 売国奴でもあり、文明の保護者に他ならない。


 そんな耶律楚材は……むせび泣きながらチンギスハンに土下座している。

 惨めな姿勢は、カツアゲしようとしてきた不良に陰キャもやし少年が土下座するのを思い起こさせる。


 弓矢で戦うからか、チンギスハンには返り血など一切浴びていないがそれ以上に戦場に立ち込める死の匂いがそこにある。

 怖い男だ。


 耶律楚材は顔を上げ、青ざめた顔でチンギスハンを見た。


「も、モンゴル軍の方々! た、助けて下さい! 命だけは!」


「金目のものは全て寄越せ」


 チンギスハンのシンプルな返答。


「も、もし許してくれるなら……わ、私は……貴方に与えることができます」


「何をだ?」


「……世界を!」


 !?

 あの男は何を言い出すんだ?


 チンギスハンは目を細め、耶律楚材を凝視した。


 すると、俺に……異世界転移者としてのチンギスハンが声をかけてくる。


〚ロードロード、あの男は特別だ。単なる狩猟が得意な軍隊に過ぎないモンゴル帝国はあの男によって化けた〛


 ……耶律楚材によって?


 耶律楚材は懐から紙を取り出し、チンギスハンに向かって広げた。

 それは地図だった。

 ユーラシア大陸が描かれた地図。そして……線が、否、道が描かれていた。


 !?

 これは、まさか。


 耶律楚材は言う。


「私の命を保護してくれるなら……貴方に世界を捧げてみせます! 私は知識人です! あらゆる歴史を学んできました! 貴方に、知恵をあげることができます!」


 その地図を見て、単なる虚言と言い張ることもできる。

 だが、チンギスハンは違った。

 その男は賢かった。

 地図を明確に一瞬で読み解いたらしい、その顔は電撃が走ったかのように光悦の笑みを浮かべる。


「貴様、名は何という? どこの人種だ?」


「私の名は、耶律楚材……人種は」


 金の人だっけ? 中国人って多民族国家だったよな。

 どこの人なんだろ。


「ユダヤ人です」


 ……は?

 ユダヤ、人?


 耶律楚材は謎の多い人物、として知られてるけど……どういうことだ?


〚その男の才能は、モンゴル帝国において不可欠なものだった。単なる虐殺者から……完全なる帝国へと変貌を遂げる為に必要な才能だった〛


 チンギスハンは耶律楚材から地図を受けとる。

 そして、俺は気づいた。

 チンギスハンのスキル、シン・道テイム。

 膨大とも思えるあの攻撃範囲は……この地図がベースだったのだ。


 耶律楚材は土下座し、チンギスハンに頭を下げた。

 そして俺は見た。

 チンギスハンに見えないように……耶律楚材の口角がニヤッと気持ち悪く笑ったのを。


 ……俺はその笑顔を見て、「蛇みたいな男」と思った。

 耶律楚材は歴史的にも都合上の人間で、中国側の文献に出てきます。

 モンゴルを最も語ることができる民は中国人か……ウイグル系イスラム教徒になります。

 お察しください、と言いたくなるほどに今日における根深い問題で、これに関してはハッピーも避ける話題です。

 しかし……チンギスハンを描写するならウイグルは避けて通れません。

 本編でやるのですが、ウイグルというのはシルクロードにおいても特別な民でした。

 チンギスハンに最も貢献したムスリムの民だと思います。

 中国人とウイグル人、この二種の人達がモンゴル帝国を語る上で最も重要な非モンゴル人かつ、文字でモンゴルを書いた人々になります。


 もし『面白い!』とか『続きが気になる!』とか『道の活躍をもっと見て見たい!』と思ってくれたなら、ブクマや★★★★★評価をしてくれると幸いです。


 ★一つでも五つでも、感じたままに評価してくれて大丈夫です。


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 何卒、よろしくお願いします。

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