『シルクロード計画』、始動。パンツ好きのロードロードは魔王のバックアップを確約を得てほくそ笑む。
俺は再び玉座の間に戻ってきた。魔王様が玉座に座って俺に発言。
「今日は戦闘があり、先ほどは礼拝の時間が終わってばっかだと言うのに、呼び出してすまないな」
「大丈夫です。魔王様」
俺はぬるぬると生コンクリートになって動いて、一礼する。
「動けるようになって良かったな」
「全くだ。いえ、全くです」
「ははは、お前は俺にため口利いていい。ロードロードとブーケ、そしてもう一人は……俺と対等以上だと思ってる」
どうやら俺は随分と高評価されてるようだ。よしよし。この調子で、シルクロード計画を実行に移すぞ!
「魔王ガンダールヴよ。ロードロード殿への礼。私めにも言わせて下さいませ」
ドワーフ大臣と呼ばれる男が俺に恭しく礼をする。
ガンダールヴが「許可する」と話し、大臣は笑顔になる。
序列二位のドワーフ大臣は魔王ガンダールヴの大柄な体躯と違い、胴長短足の低身長で、髭をぼさぼさ生やした筋骨隆々な男だ。
「ロードロード殿、ありがとうございます。貴方は、我々の……エヴォルの恩人です」
「序列二位の貴方が、九位の俺にお辞儀なんて」
ドワーフ大臣は涙を流しながら、俺に深々とまたもや一礼した。
「ロードロード殿は特別です。エヴォルは……経済も軍事も滅茶苦茶でした。破綻寸前のこの国は、ロードロード殿によって救われたのです」
どうやら、俺は重大な存在になってるらしい。
「そんなに貢献したんですね」
「戦争での活躍は勿論、インフラ整備がデカイです」
「インフラ、ね」
「貴方には黙ってましたが――」
ドワーフ大臣は俺から視線を外し、振り返って魔王ガンダールヴを見る。
魔王ガンダールヴは一礼し、それにドワーフ大臣は頷く。何かをお伺いたてたのだろう。
つまり、これから話すのは重大なことだということだ。
「我が国は、対外債務が国家予算の四十年分あります」
随分な巨額じゃないか。パンツ何枚分だろうな? 日本なら国家予算八十兆円……パンツを百円ショップで買うなら八千億枚になる。その四十倍くらい、つまり……三十二兆枚のパンツを借りてるようなものだよ。
「対外債務……つまり外国に対する借金だな?」
「はい」
エヴォルがそんな借金大国だったとは……。
「ドワーフ部隊もケンタウロス部隊を中心に仕事そっちのけで戦争に勤しんだので、他国に対する借金で国を運営していたのです。我々の武器素材も他国から購入したものです」
「やべえな」
状況が状況だけに仕方が無いけど。
「はい。しかし、ロードロード殿が全ての事情を変えてくれました」
「俺、が?」
「はい」
ドワーフ大臣の満面の笑顔。俺は心当たりを探す。
俺が道テイムで大怪我した奴らを直したり、インフラ整備をした思い出が蘇ってくる。
「戦争で俺が活躍して、人が死ななくなったとか、負傷兵を治療したから彼等がまともな仕事を普通にできるって感じになった感じか?」
「それもありますが、何と言っても『物流』です」
「物流……?」
「はい。エヴォルはケンタウロス族が他の国に比べて多いのです。彼等がいかんなく物流を担当できる……貴方の、石畳のお陰で」
「成る程な」
納得。確かに、それなら俺に高評価するのも分かる。
「ただ、ケンタウロス族が活躍すればする程、道が荒れてしまいます。あの脚力ですから」
「確かにな」
俺はかつての石畳を思い出す。それはとても荒れ果て、砕け散っていた。それを俺が全て直して新品の石畳に整備してるのだ。
「それにドワーフ族が修復していたのを、今はロードロード殿が一瞬で直してくれる。結果的に、ドワーフ族は製品の生産を行えるようになり、武器を輸入する必要がなくなったのです。輸出も出来る様になっています」
「はー」
どうやら俺は戦争の時以上に普段から活躍しているらしい。多分、国土交通省や大手の建設会社やJRの人達くらいの働きを俺はやってるのだ。
大臣が、涙ぐんだ掠れ声で話す。
「全ては、貴方の道テイムのお陰」
「まぁ、それ程でもあるかな」
はっはっは、と俺達三人は笑う。
「ロードロード殿のお陰で、この国が生存したとして……返しきるのは百年かかると思った借金が」
「うん」
「一年で返済できそうです」
「俺、すげえええええ!」
ドワーフ大臣は改めて涙を拭い、笑顔になる。
「本当に、ありがとうございます」
「まぁ、俺にできることをやってるだけだよ」
ドワーフ大臣は深々と頭を下げる。
「序列二位の座は、いつでもお譲りするので」
「新参者には荷が重すぎます」
と、俺とドワーフ大臣が語らう会話に、とうとうガンダールヴが割り込んできた。
「ロードロード、まぁ余達はお前にとても感謝している。それを伝えたかったのだよ」
「へへへ。褒められて悪い気はしないですね。これからも頑張ります」
「……ありがとう」
神妙な顔でガンダールヴは俺に頭を下げた。
腰に袋を付けた大柄なドワーフロード。俺は彼を見る。
「なぁ、魔王様」
「魔王でいいぞ?」
「そうはいかないだろう」
「ふむ。お前はもう俺より遥か格上の魔物になっているのだが……」
「まぁ、一応今は序列九位だし」
「そうだな」
「序列って改めて聞いていいか?」
「一位がドワーフロードのガンダールヴ、つまり余だ。二位がドワーフ大臣のハンマールヴ。三位がケンタウロス族のブーケ。四位がドライアド族のリィフィ。五位は兵站将軍ヒポハス。六位がレギン。七位がエルフ族のスレイブ。九位が道族のロードロード・ドーロードだな」
「あれ? 八位は?」
「八位は……一般の国民には秘密にしているが、序列持ちなら教えよう。お前はもう、幹部だからな」
「いいのか? 序列持ちとは言え、俺は新参者だろ?」
「その内、防衛計画の打ち合わせで会うだろう。話しておく」
魔王はすーっと深呼吸した。緊張しているようだ。序列八位はそんなに開示するのを躊躇うほどの奴、なのだろうか?
一体どんな奴なのだろう?
「村長だ。覚えているか? 北の街にいて、お前を一発で異世界転生者だと見抜いたお方だ。
「あぁ……いたな」
なんか、性格がやばいけど頭が異常にキレるっていう人。ただ、出会った時……印象が無かった。ろくに見た目も思い出せない。
「そうだ。具体的な防衛計画を提案してくれるから、序列八位にした」
「エヴォルって、どんな国なんだ? 色んな種族がいて……統一性がない。よく言えば、多様性はある気がするけど」
魔王は頷く。
「その通り、エヴォルは多様性があり……特殊な国なのだ。複数の亜人が寄り集まって出来た国だ」
「ふーん」
だからお前を受け入れる、とも言える
「俺、他の国だったら受け入れられないのか?」
「もしかしたらエルフ国とかなら嫌うかもな」
「なぜ?」
「お前が変態だからだ」
「――」
「ロードロード、戦友として忠告しておく。お前が美少女のパンツを見て興奮するってのは普通に考えてやばい奴だ」
「そんなこと言われても、仕様なんだから」
「言いたいことは理解出来る」
「俺が道テイムしないと、お前ら死ぬよな」
「その通り」
「道テイムしないと、ケンタウロス族もドワーフ族も大変だ」
だったら理解して欲しい。しょうがないことを。
「ロードロード、忠告しておく。お前が美少女パンツを見てエナジーを貯めるというのは我が国の最重要機密に指定して、国民には箝口令をかけている。それを破った者は死罪にするほどのな」
「な、何でそんなことを」
「国防上、国益上の都合だ。当然だ」
「でも……」
「ジャンヌのパンツ、見てどんな気持ちだった?」
「……」
「どうせ、幸せだったのだろう?」
「そ、そんなことないよ。俺は何も」
魔王は懐から水晶を取り出した。
「そ、それは!」
「分かるな? 『真偽結晶』だ」
真偽結晶。なんでこんなやばいものが存在しているのか、と思う程のアイテム。
嘘をついたらちかちかと光輝くのだ。
そして今、光輝いている。つまり、俺の発言は嘘だと証明された。
「……」
「ロードロードよ、お前がジャンヌのパンツを戦闘中に見るのが好きな変態だというのは分かっている。このスケベめ」
「だ、だけどそれは道テイムに必要なエナジーを貯めるためだけに」
真偽結晶が光る。くそ! 忌々しいプライバシーゼロなアイテムがうぜええ!
「他に何を考えているのだ?」
「……」
「すけべな気持ちで幸せ、そう考えてるのだろう?」
「……はい」
正直に答える。真偽結晶は光らない。
魔王ははぁ、と溜息する。
「とは言え、お前の道テイムが我が国の国益なのは事実。これからいくらでもパンツを見るが良い」
「……」
『うん』とも『はい』とも言えない。
「まぁ良い。お前が戦った相手が美少女パンツをスパッツなどで覆い隠すと、我が国の戦力が著しく減少する」
確かに。つまり、必要なことだ。仕方の無いことだって言えるな。
俺がジャンヌのパンツを見るのは正義、当たり前なんだね。
へへへ!
「とは言え、年頃の娘のパンツを見て興奮する変態だというのは、イメージ悪い。そして、それがバレたとしても正義があるとも言えない」
「愛国は正義じゃない? エヴォルだって敵を尋問することはあるだろ? 例えば拷問みたいなのはしないのか? それよりはパンツ覗くくらいいいだろ」
「い、いや……その」
「拷問は非人道的だけど、愛国の為にやることくらいあるよな?」
「エヴォルはしないぞ、そんなこと」
「じゃあどうやって捕まえた敵兵の情報を抜くんだ?」
「真偽結晶と……薬物だな」
やばいな、異世界。事実上捕まったら嘘つけないじゃん。
「傷つけたりはしないから」
「体に傷をつけなくてもプライバシーゼロって……その、凄い世界だな」
そうとしか言い様がない。下手な交渉するより真偽結晶を使う方が情報は抜けるのか。
あれ?
眠気がする。今日は戦闘もしたし、沢山道テイムを使ったからだろうか?
「眠い」
俺の言葉に魔王は頷く。
「疲れたか、休んでいいぞ」
「そうさせて貰う」
「うむ」
「思ったんだけどさ」
「うむ?」
「こっちからエルティア王国ってのを攻めたらいいんじゃないか?」
俺は自然な発想をしたと思う。専守防衛という言葉があるが、ここまで攻められて何もやり返さないというのはありえない。それに攻めた場所なら俺が修復させる必要が無い。
敵が攻めてきたら、国土が破壊され俺が修復をしないといけないのだ。
それに、エルティア王国に美少女がいるかもしれない、もっと色んなパンツみたいし。
しかし、魔王ガンダールヴは首を横に振った。
「いや、それはしたくない」
「何で?」
「侵略とか良くないだろ?」
「専守防衛と侵略は違うだろ」
「専守防衛が行き過ぎれば、世界を支配しないといけなくなる。緩衝地帯を軒並み攻略し、チョークポイントを抑えていく……って、分からないよな」
魔王の言葉に側近のドワーフ大臣が頷く。
「分かりませんよ。皆が魔王様みたいに賢くないんですよ? ロードロードは賢そうですが、チョークポイントと言われても理解出来ないでしょう」
「そうだな、すまん。難しい言葉は極力使わない様にしないと」
「ヒポハスさんもキツイですね。ケンタウロス族の天才……ブーケくらいでしょうね」
そこまで話され、俺は二人の会話に介入した。
「いや、分かるぞ?」
「何!?」
魔王は大口を開けて驚いた。
「『地政学』の言葉だろ?」
「そ、その通りだ。お前……思っていたより大分賢いんだな」
「へへへ、こんなの大したことないよ」
前世、道の授業を受けてて良かった。道の講義があったからチョークポイントなり緩衝地帯なり分かる。まぁ、それを使う機会なんてあるか分からんが。
こんこん、と石扉が叩かれる音。
「レギンです」
魔王ガンダールヴが返答。
「入るがよい」
汗をかいた感じのレギンが入って来る。鍛錬場で運動してきたのだろう。
「ロードロードぉー!」
レギンが笑顔で俺に向かって駆け寄り――抱きついてきて、その豊満な胸が俺の体に当たった。
「えへへへ。ロードロード、賢かったんだな。なんか嬉しい!」
うっひょおおおお!
【エナジーが回復しました。レベルアップです】
おいおい、パンツ見てないのにエナジー回復していいのかよ。
【仕様です】
仕様なら、仕方ないな。へへ!
魔王の溜息が聞こえる。ちらりと見ると、苦笑しているではないか。
「ま、魔王様……目の前でいちゃついてすみません」
「仕方のない奴らだ。でもロードロードもレギンも、国への貢献は大きいし……長い話をするつもりもない」
「ありがとうございます」
なんだかんだ、魔王様って寛容なんだよな。俺がもし、目の前でリア充カップルがいちゃいちゃしてたら「TPO弁えろよ」と怒っちゃうだろうに。
「でな、ロードロード、お前が提案してくれた計画なのだが」
「はい」
「シルクロード計画、というのは良いな」
シルクロード計画……俺が魔王ガンダールヴにした計画であり、俺の内心が込められた計画でもある。
俺の夢。俺の行くべき道。それが、シルクロード計画だ。
「お前のいた人間界は……絹を流通させる道があったとか。一番大きな大陸に造られた一番大きな道。それを造ることで物流や交流を発展させ、世界そのものの発展を目指すっていうのだな」
「はい」
とは言え、それを作ったのは……ユーラシア大陸の殆どを手に入れた最強最悪の侵略国家なのだがな。まぁ余計なことは言わない方がいいだろう。
魔王はパン、と手を合わせ、笑顔で玉座から立ち上がる。
「素晴らしい提案だ。お前の道テイムとの相性も良いし、それを使えばエヴォルは多額の税収を得られるだろう。反対する理由が無い。いや、賛成する理由しかない」
「お気に召してくれて嬉しいです。魔王様」
「お前が知将としても優秀とは思わなかった。素晴らしい魔物だ、お前は」
「勿体ないお言葉です」
「そこで提案なのだが……」
来るぞ、と俺は予感した。きっとこれが今日の本題だろう。
「お前のマップ情報を充実化させて欲しい。ケンタウロス族やドワーフ族を中心にヒアリングを行い、エヴォルの再開発計画をまずやりたいのだ」
俺は内心、ほくそ笑んだ。それは俺も望むところだ。俺が道を極めるなら、きっとその提案はプラスになる。へへへ!
「俺も賛成です。是非道テイムで、魔王軍に、いえエヴォルに……いえ、世界平和に貢献させて下さい」
「はははは。それはとても嬉しい提案だな!」
俺は魔王と少し話し、『玉座の間』を出て石扉を閉め、王城近くの倉庫(自宅)に行く。
俺は自分の夢に今一度思いを馳せる。
『シルクロード』。それは絹製パンツを輸出して、俺が世界中の美少女のパンツを鑑賞するという空前絶後の大計画である。
待ってろよ、異世界。この世界の美少女のパンツ、一人残らず鑑賞してやるからな
はははははははは!
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