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『道』、ネームドになる。

 真っ黒な世界に、俺は浮遊している……コンクリートのままで。気を失っていたようだ。


「ど、どこだここは? 魔王城か? サキュバスー、エルフー!」


 呼んでみるが、返ってきたのはハスキー声ではなく若い男の声だった。


【残念だが、あの可愛い娘達はここにはいない。ここにいるのは、俺と君だけさ】


 明るい声が背後から聞こえ、俺は意識をぐるりと動かす――その男は、真っ白く光り輝いていた。


「お前は誰だ?」


【俺は、小賢者】


「小賢者?」


【君に、力を貸しているものでもある。心に声が響いてきただろう? あれは、僕の力だ】


 ……あのレベルアップです、報告、とかか。何が目的だこいつ?


「怪しいなお前、何が目的なんだ?」


【ちょっと、美少女のパンツが目的でね】


 どうやらまともな奴ではないらしい……変態のようだ。


【君は魔物……ゴーストになって、この世界を制覇して欲しいんだ】


 俺は不快感をたっぷり滲ませた心で話す。男の声は相変わらず明るい。


「制覇してどうなるんだ?」


【世界中の美少女パンツが見れるようになる】


「お前は、最低だ」


 男は顎に手を触れ、考えるポーズを取った。


【ふむ……それは置いておくとして】


「置いていていい問題じゃないだろ。お巡りさんに突き出されるべき男だお前は」


 男はくすりと笑って軽快に話す。


【君、名前思い出せないでしょ】


 確かに、それはそうだ。


【ネームド……名前がついてないのは、弱い魔物の証なんだ。それに、相応しい名前をつけないと変な目で見られてしまうよ】


「異世界に相応しい名前か。それは……おいおい決める。分からないからな」


 男は高らかに明るく笑い、俺を指差した。


【ははは。いや、僕が付けてあげるよ。名前を付けてあげるのは得意なんだ。君の名前は……ロードロード・ドーロードだ】


「ロードロード・ドーロード!?」


 なんか、変な名前だけど凄そうな名前だ。う……記憶が一部戻る……英語? の知識。


【俺には目的があるんだ。俺は、常に君に助言はできない。でも何とか頑張って……魔王ガンダールヴの国を助けて欲しい】


 魔王の国を助ける、だと?


【くそ、もう時間がない。あと、君は美少女パンツを見ると――】


 すると真っ暗な闇から引き剥がされるような感覚になり、俺の視界は暗転する。

 変な奴に絡まれて、名前を貰った。あとお願いされた。闇の中で俺は、ぐるぐると意識が動かされる感覚と共に光射す場所へ戻っていった。







 眠る俺はハスキーボイスで起こされる。


「……ぃ。……おい。……おい、起きろ、道!」


「ん……」


 俺が目? というか意識を開くとそこにはレギンの姿。周りをキョロキョロできるようになっており、そこが大きな城の前だと分かる。


 斜陽が差し込み中天に太陽が位置する。空の二割ほどに白い雲。つまり良い天気だ。

 そして視界の殆どは華奢な尖塔から構成される西洋風の黒光りする城だった。


「ぅ……お、おはよう」


 取りあえず俺はレギンに挨拶する。よく見ると、大きな城の前にいる門番とスレイブと呼ばれたエルフ美少女が話している。


「おはよう。余裕だな」


 レギンは黒い翼をばたつかせながらしゃがみ、俺をにやけて見てくる。


「何が?」


「お前は他の魔王のスパイかもしれないが、うちの魔王はお前を容赦なく調べ上げて罰する。お前にやましい心があれば、お前は終わりだぞ」


 やましいも何も、右も左も分からないんだよな。


「魔王ってことは、なんか魔法を使えるのか?」


「あぁ。その通りだ。あたし達の魔王様はガンダールヴ様だ」


「ガンダールヴ……どんな奴なんだ?」


 俺の言葉にレギンは怪訝な顔をした。


「ドワーフロードだよ……。お前、本当に魔物か? 各魔王はけっこう有名だからこの辺どころか、大体の魔物なら知ってるはずなんだが」


「世情に疎いのさ。それにしても、魔王ガンダールヴ。ドワーフの王様か、弱そうな魔王だな」


「いや、強いんだって。だって数百以上の魔物に適切な武器を一瞬で構築して上げたり出来るんだぞ」


「マジで!?」


 俺は流石に驚いた。


「うん」


「そりゃ凄いな」


 レギンはニヤリと笑い、


「だろ? ってお前、本当に理解してるのか?」


「そりゃ凄えよ。一瞬でボロ剣を名剣に、丸裸を鎧持ちに変えるようなものだろ?」


「……理解は出来てるみたいだな。お前、ネームドでもないのに賢いな」


「ネームドってのが賢いのか?」


「そうだよ。種族名とは別に、固有の名前をつけられるってことは……言わば人間に近づくってことだ。賢くなる。ネームドになった者は魔族と呼ばれ知性がない魔物とは区別されるだろ?」


 俺は少しびびった。今気付いたのだが。


「さっきは意識が朦朧としてたんだけど、今ははっきりした。俺の名前はロードロード・ドーロードだ」


 あの白く光る男に名付けられた名前をレギンに告げる。レギンは驚いて俺を見つめた。


「え……お前、さっき魔眼で『鑑定』をしたらネームドじゃなかったけど」


 レギンの目が茶色く光る。するとレギンの顔が驚愕に染まった。


「ほ、本当だ! ネームドになってる……おかしい。おい道、どういうことだ?」


 いや、俺に聞かれても……。と思った途端、レギンは俺をぐいっと持ち上げて肩に置く、凄い力だな。コンクリートの塊だから俺、重いはずなんだが。


「俺重いだろ?」


「いや、重くないって。人間じゃあるまいし、この程度の重さくらい大丈夫だよ。一々魔力こめないといけないから大変だけどな」


 しかし、持たれるってあんま良い気分じゃねえな。パンツ見えねえ。

 俺はレギンに運ばれて魔王城の中へと連れられる。


「あ、あたしレギンって言うんだ。さっきまであたしと一緒にいたエルフはスレイブ。名前で呼んでくれていいからな」


 レギンは俺にニコリと笑いかけ、俺はその親しげな笑顔がどこか気持ち良く感じた。


「お、おう。よろしく。レギンも俺のこと名前で呼んでくれていいからな」


 サキュバス美少女は笑いながら魔王城の階段を登り続けた。

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