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第一章エピローグ『序列九位』

 魔王城。俺は朝日が照らすその城の玉座近くにいる。

 魔王ガンダールヴが玉座に座りながら俺に話しかける。


「ふふふ。ロードロード、大分スムーズに動けるようになったらしいな」


「あぁ。そこら辺にいるスライムくらいのスピードでは動けるようになった」


 それどころか全力なら時速二十キロくらいでは動ける、この畳一畳分の質量で。そこそこ早い。


「生コンクリートになってる様だな」


「普通のコンクリートとどう違うんだ?」


「とろっとしてる液体みたいな状態が生で、普段のお前の様に完全な固体になってる状態がただのコンクリートだ」


「成る程、分かり易い! それにしても詳しいな」


「ドワーフだからな。コンクリートのこんな知識くらい知ってるさ」


 得意げに語るガンダールヴ。


「なぁ、魔王様」


「何だ?」


「俺は魔王軍に入って、その、レギンと」


「付き合って結婚したいんだろ? まぁ、大した後押しは出来ないが……サキュバス国に推薦状くらいは書いてやるから」


「やった! ありがとうございます!」


 俺は粘体の状態で笑顔でお辞儀した。いやぁ、感情表現が出来るっていいなぁ。


「ロードロード。お前、本当に魔王軍に入って貰っていいのか? お前なら、竜国ドラゴニアだって雇うかもしれんぞ? 美少女が好きなら、サキュバス国やエルフ国だってある」


「いや、俺はここがいい。エヴォルにいたい」


 ガンダールヴは頭を抱えた。


「正直、そう言ってくれるのは嬉しい。この国は危機に瀕しているからな」


「危機?」


「この世界に突如として出現したエルティア王国に侵略を受けているのだ」


「突如として出現した?」


 国が突如として、出現するだろうか?


「あぁ……率いているのは、異世界転移者ソロモン王」


「そ、ソロモン王!?」


 俺はそれを聞いて驚愕した。それは俺もよく知る歴史上の人物の名前だったからだ。


「あぁ。彼がこの世界に突如としてやって来て、魔物を洗脳しエヴォルを侵略しに来ているのだ。しかも、彼は喚起魔法に長けている」


「喚起?」


「お前達の世界にいた人間をこの世界に呼び出すのだ」


 あぁ、つまり召喚魔法で歴史上の人物を呼び出して使役してるってことか。ってことは。


「ジャンヌやロビンフッドやシモ・ヘイヘは……ソロモン王が呼び出したってことか?」


「そうだ。そして奴は、この世界の人間をも洗脳し、独自の国を作った。それが……エルティア王国なのだ」


「エルティア王国……ソロモン王がこの世界に作った国」


 俺は呆然と呟いた。ガンダールヴは頷いて、話を続ける。


「我々と共に戦うとは、かの王と戦うということだ。それでも、良いのか?」


 うーん。俺は考える。しかし、なぜこんなに正直に話してくれているのだろう? 『真偽水晶』も傍にあり、光っていない。


「なぜ、隠しておかなかったんだ? 俺に隠して戦わせた方がエヴォルに都合が良いんじゃないか?」


「いや、余は……お前が人間側として戦うなら、それを尊重したい」


「は?」


「エルティア王国は人間中心主義のアダム教を信仰していると言っていい。お前達の世界、人間界には無いだろうが、通常の人間が亜人よりも……というか魔族より優れた素晴らしい種族という教義を信仰する宗教だ」


「あぁ、俺宗教には興味ないんだ。知識として知るのは兎も角、特定の宗教をやるつもりはないよ」


「そ、そうなのか……だが、なぜ来たばかりのこの国の軍に参加してくれるのだ? 動機が、分からぬ」


 俺は溜息をつく。


「やれやれ、そんな当たり前のこと分からないのか」


「そんな当たり前のことって」


 その時、魔王城の扉が開かれる。


「魔王様、ロードロード、ただ今戻りました」


「魔王様、あの子が、俺がここで頑張る理由です」


 俺の言葉に魔王は玉座から立ち上がって、大きく口と目を開いた。


「ま、まさかそんな理由で、人間だった過去とかに葛藤も無く魔族の国に組みするのか?」


「魔王様、俺にとっては世界一真剣な理由です」


 俺はレギンをちらっと見る。レギンは訳は分かってないだろうが、にこりと笑顔を向けてくる。

 可愛い!


「俺に取ってレギンは、何より大切な人です」


「え、えぇええええ、う、嬉しい!」


 レギンは顔を赤らめて、俺にハグしてくる。ちょ、幸せ過ぎて怖い!


「はぁ……ロードロードと言い、レギンと言い、スレイブと言い……ブーケ達もそうか。なぜ、この国には変わり者が集まるのか」


 ガンダールヴは溜息をつくものの、その口元と目元は笑っている。


「よし、ならば……いいだろう。ロードロード。お前を魔王軍、序列九位に認める」


「い、いきなり序列持ちか!?」


「あぁ。むしろ扱いは抑えている方だ。レギンやスレイブが勝てなかったジャンヌを単騎で撃退したんだぞ」


 そう言われると納得。でもあの相手がロビンフッドやシモ・ヘイヘだったら胸揉んだところで倒せはしないし……いや、生き埋めにすればいけるか? いや、あいつら木の上にいたから道テイムで生き埋めには出来ないか? うーん。


「相性ですよ、多分」


「謙遜しなくてもいいぞ?」


 満面の笑顔のガンダールヴ。この魔王が俺に向かってこんな顔をするのは初めてのことだ。俺を過大評価し過ぎだっての。

 珍しく明るい雰囲気が魔王城に満ちていたのだが、再び扉が開かれた。

 桃色の髪のケンタウロス族、ブーケだった。


「た、大変です! スレイブさんからの情報によると、世界各地で異変あり!」


「何……」


「数十名以上の転移者がソロモン王により、喚起されたとのことです!」


「な、何だと。数十名以上、だと!?」


「しかも、各国を攻めていて……転覆しそうな国家多数、とのことです。既存の国は、ソロモン王の配下に落ちるやもしれません!」


「ぐぬぬぬ」


 ガンダールヴは歯軋りし、握り拳を震わせた。俺は、魔王に質問。


「魔王様。どういうことですか? ソロモン王の狙いは、この国ではないんですか?」


「……正確には、この国の先にあるドラゴニアだろう。中央にある宝物を奴らは狙っているのだ」


「宝物?」


「それが何なのかは言えぬが……恐らく、ソロモン王は既存戦力でエヴォルに敵わないと見たのだろう。お前の戦いぶりは凄まじかったからな」


 俺、そんなに強いのか?


「だから戦力を補充する為、世界中を掌中にして支配した魔族を使って……この国に侵略をするのだろうな」


「な、何!?」


 レギンが俺に近づく。


「ろ、ロードロード」


「何だ、レギン」


「――助けて」


「!」


「助けて、ロードロード!」


 綺麗なサファイア色の瞳が俺を捉えて放さない。答えなんて、決まっている。ずっとアッパー系コミュ症やってて努力してキョロ充になろうとした俺だ。俺を相手にしてくれた美少女をないがしろにしてなるものか!


「レギン……」


「ロードロード……」


「俺は、お前を選ぶ」


「!」


「彼氏なんだから、当たり前だろ?」


「……うん!」


 レギンは、俺にキスした。

 ぐわあああああああああああ!!!! 何という衝撃!!! 俺の心に、ダイレクトアタック!!!!


【レベルアップです×一万。色々と向上しました】


 精神が快感に蹂躙されていく。俺の心は、完全に決まった。もう他の選択肢はありえない。


「レギン、大好き」


「嬉しい! あたしも……ロードロード大好き!」


 レギンが俺をハグしてくる。俺の体が熱くなっていく。


「なんか、温かいな」


「うん。その、心がキュンとしてしまって」


「ははは」


 ガンダールヴは、頭を抱えながら苦笑した。ブーケも、眉を顰めて苦笑する。


「まさか、エヴォルの……いや、世界中の魔族の命運が、バカップルに委ねられようとはな」


「全くです。でもあたし、あの二人のこと好きです。あの二人の為なら……世界中を駆け巡ってみせます」


「それは頼もしい」


 ガンダールヴ王はほくそ笑み、ブーケは屈託無く笑った。


「あたしサキュバスだけど、処女なんだ。あたしの処女はロードロードに上げるからな」


「こ、こらレギン! そういうこと乙女が言うもんじゃ」


「大好きー!」


 俺はサキュバスにむぎゅーっと抱きつかれ、全身に幸せを感じながらちょっとだけ恥じらいを思うのだった。

 俺はこの時、思いもしなかった。レギンの為に行動した俺の道テイムが……全ての海と大地を道テイムすることになる未来を。

 第一章完結です! ここまで読んでくれてありがとうございます。

 書きためして投稿する予定なので、一週間~長くて一ヶ月ストックを作ります。

 大まかに、今の執筆スピードなら投稿は11月1日になると予想してます。

 次の章も読んでくれると幸いです。頑張ってラストまで書き上げます。


 もし『面白い!』とか『続きが気になる!』とか『道の活躍をもっと見て見たい!』と思ってくれたなら、ブクマや★★★★★評価をしてくれると幸いです。


 ★一つでも五つでも、感じたままに評価してくれて大丈夫です。


 下にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところに★があります。


 何卒、よろしくお願いします。

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