道、大活躍
俺は今、美少女パンツという絶景を下から眺めている。
泣きじゃくる美少女エルフの純白のシルクパンツ。あぁ、たまらない。
「道さん、屈辱です」
【報告。ロードロード、貴方の興奮で飛躍的な効率でエナジーがたまります】
スレイブは俺にパンツを見せてきている。たまらない。最高だ!
俺は道テイムで石橋を使って、視覚共有。そこに立つ美少女達のパンツを見続けている。
エナジーがどんどん回復していく。
【レベルアップです。レベルアップです×100】
「魔王、随分たまった。戦闘できそうだ」
「よし、これで撃退戦ができるな!」
笑顔の魔王、俺も笑顔である。決して美少女パンツの絶景を見たから笑顔になった、わけではないはずだ。
【トロフィーを獲得しました。嫌がる美少女が国の為に美少女パンツを見せるとレベルアップを大きく果たせます】
おいおい、スレイブのお陰でトロフィーゲットしちゃったよ。っつーか嫌がる奴の方が大きくレベルアップするのか? 嫌な仕様だよ、全く。
すると。
巨大な爆音。今までに見た中で一番大きな火柱。これは――。
石橋から一キロくらい離れた位置に美少女がいる。ジャンヌ・ダルクだった。
槍を持ち、ブロンド金髪で綺麗な碧い瞳が、石橋にいる魔王軍を見ている。彼女は、大声を放つ。
「魔王軍よ、降伏せよ! そうすれば、命だけは助けてやる!」
魔王は離れた位置にいるジャンヌを睨んだ。
「よくもまぁぬけぬけと言うでは無いか。お前らは、捕らえた魔物を奴隷として売り払っているではないか!」
「命あるだけ感謝しろ。お前らは、家畜だ!」
ざわざわする魔王軍。怒るだろうな、と俺は思ったが、彼等の顔にあるのは、悲しみだった。
差別されたことに対するショック。それが、彼等の感情だった。
やり返そうとかでなく、ただただ悲しんでいる。
「ジャンヌ、エルティア王国の首脳陣に伝えておけ! 亜人国家エヴォルはお前らに屈しない!」
【エナジーが満タンになりました。スキル行使をおすすめします】
勿論、俺は行使する。無限の鑑賞が許された美少女パンツ。合法の名の下に、俺は今……アッパー系コミュ症人間として生を受けた時では考えられない程のパッションで信頼を果たそうと思っている。
「魔王様、やるぞ」
「あぁ、頼む」
魔王は俺を担いで、少し離れた巨石群近くに置く。これだけの石があれば、資材には困らない。
俺の『道テイム』により石畳が地に出現。そして、『敵兵士の足が石畳に埋もれる』。それはあたかも、錠のように敵兵士を拘束する。
エルティア王国の兵士達は次々に驚愕の声をあげた。
「な」「また足場が!」「何だこの現象!?」「これが魔物の力なのか? ドワーフかケンタウロスの力か?」
敵兵士達は足を引き抜こうとするが出来ず、姿勢が崩れたり尻餅をついたりしている。剣で攻撃する者もいるが、半端な攻撃で石畳はびくともしない。
戦場において、敵兵士がしどろもどろしている中、魔王軍は陣形を整えて突撃態勢になる。
魔王は大声で叫ぶ。
「雑魚兵士の足は止めた! 突撃せよ!」
魔王の声が放たれた直後、石畳の一部に大きな赤い魔力が込められた一撃が放たれる。
その一撃は、ジャンヌのものだった。
「舐めるなぁ!」
ジャンヌは魔力を込めた槍で石畳を斬りつける。その破壊力は凄まじく、石畳が粉々に吹き飛ぶ。飛び出したジャンヌは一心不乱に槍を振り回す。相変わらずの体力と火力だ。厄介極まりない。
だが。
「『道テイム』」
俺のスキルにより再び石畳が出現し、ジャンヌの足を拘束する。
「な、何!?」
エルティア軍の兵士達は動揺し、その中の誰かが叫んだ。
「なんという速さ……これはまさか、転生者のスキルか? 魔王軍に、転生者が!」
ざわめくエルティア軍。ジャンヌに近寄りすぎない距離感で、整えられた魔王軍の兵士達が突撃していく。
戦場に絶叫が響き渡る。
斬りつけられた兵士は横たわり、もがき苦しんでいる。流された血によって土は大部分が赤く染まった。
魔王ガンダールヴは俺が表示したマップを見ている。マップを俺も見ているのだが、次々とエルティア軍兵士を魔王軍が圧倒しているのが見て取れる。
「素晴らしいぞ、道よ。お前がいれば余は……世界を変えることすら出来そうだ」
魔王の口角が上がる。ちょっと怖いな。人間に復讐とか魔王が考えた時は転職も考えないとな。でも今の俺は魔王軍の新入り、故に少しアピールをしておこう。まぁ、今のとこは防衛戦争だけらしいが。
「おいおい、魔王」
俺の声はいつになく明るいものだった。
「こんなの、序の口だぜ?」
そう、まだケンタウロス族との連携をしていないでこの調子だ。
彼等と俺が組み合わせれば、どうなるのか? 最速の生き物が、最高の環境を手に入れるのだ。
そして今回は、出し惜しみ無し!
石畳によって拘束されたエルティア軍兵士の数々。殆どの者は、もはや動けずにいる。
レギンとブーケが先陣を切って飛び込んでいく。
他の魔物達も皆、突撃していった。
ケンタウロス族が疾駆する戦場、エルティア軍に焦燥感が蔓延する。
「は、放て! 魔法でも石でも弓でも良い!」
エルティア軍の隊長達が必死でその足を止めようと努力するが、仕留めることは出来ない。魔法も石も弓も全て外れてしまう。
「石畳だ! せめて、石畳を破壊しろ!」
魔法で石畳を破壊していくエルティア軍兵士、彼等は漸く笑顔になる。
彼等は安堵したのだろう、ほっと溜息している。だが、甘い。
「道テイム!」
石畳を使い、彼等の足どころか、もはや体を埋めてしまう。
「ひいいいい!」「首だけ、首だけ出てる……」「助けてくれええ!」
その光景には魔王軍も絶句している。魔王は俺を見て、重々しく言った。
「ロードロード、お前は本当に凄いな」
魔王も俺を褒めている。俺もここまで圧倒出来るなら、自分に自信が少しだけ出てきた。
ケンタウロス族が疾駆する石畳を作り、各兵士が突撃していく。
「もしも動けない負傷兵がいたら、俺達に任せろ!」
負傷兵を運んでいくケンタウロス族。それを離れた場所からマップ越しに見る魔王。
魔王は表示された赤い点と青い点を見ながら笑う。拡充していく道が、反映される敵の数が、魔王の笑顔を作る。
「いいぞ、ロードロード……お前と一緒なら……」
魔王は更に笑顔になる。
「この戦い、勝てる!」
整備された石畳。俺は敵が走っている石畳に『道テイム』する。
ばらけろ。
石畳がバラバラの石になる。
「な、何だ。石畳が……」
「崩れちまった!」
俺の能力で石畳をばらけさせたことにより、走っていた敵はこけたりして動きを乱す。
そして俺はケンタウロス族が歩むべき進路を察知して『道テイム』、新たな石畳が現れてケンタウロス族が戦場を駆け巡る。ケンタウロス族は必要な物資を届けたり負傷者を運んでいく。
俺が彼等の為に道テイムして石畳と土道を作る。
今の俺の能力はそれだけだ。しかし、それは一見地味だが地形全てを一瞬で書き換えるという強力な潜在性がある。
「道テイム、道テイム、道テイム、道テイm――」
可能な限り、俺は意識を集中し、味方の兵士には通りやすい道を。敵軍の足を止める為の地形を。ただただ作りだしていく。
敵軍の兵士が呻く。行軍が止まれば、攻撃を躱すことも防御の陣形を取ることもできない。
エルティア軍の主力部隊が足止めされ、思う様に動けずにいる。
俺の道テイムで彼等は埋まっていく。エルティア軍の多くは悲鳴を上げ、泣き叫ぶ兵士すらいる。
道を作る。
俺の能力はそれだけだ。
「道テイム、道テイム、道t――――」
魔王がバフ魔法を担い、マップを俯瞰してくれているということは俺がただ指示を熟せば良いというだけの話では無い。
俺自身がマップと戦場を見て敵軍を視認することで、敵の動きをより足止めすることが出来る。
戦場の地形が次々に変わっていく。
土と石が埋め尽くす流動的な戦場、それが今目の前にある理の全てだ。
それは俺と魔王の意識によって、書き換えられていく。俺と魔王がやり遂げている行為は究極の土木建築だ。
戦場の兵站、陣地作成の絶対的決定権が今、魔王軍に存在している。
ワンサイドゲーム。魔王軍はまさに、敵軍を圧倒していく。
相手を石畳で埋め尽くす時、ギリギリ相手が死なない程度に首だけを出して埋めた。俺は道テイムでエルティア軍の兵士を全員、首から下を埋没させたのだ。そして、
「道テイム!」
石畳を使い、相手が簡単に出れないようにする。口元や鼻は覆わないが、これなら簡単には出れないだろう。
「「「「「「うわあああああああ!!!」」」」」
絶叫をあげるエルティア軍兵士達。その圧巻の光景には俺も少し驚く。だが、魔王は更に驚いているようだった。
「な、何だこれは……道、お前がやったのか」
魔王は呆然としている。
「すげえぞ、『道』!」
レギンは笑顔になる。魔王は神妙な顔で頷く。
「これだけ無力化したらわざわざ戦う必要はないだろう。帰るぞ、皆!」
「「「「「「うおおおおおおおお!!!!!」」」」」
勝ち鬨を上げる魔王軍。俺はジャンヌをチラ見する。女騎士は槍を振るう者の、レギンとブーケの相手をしていて自由に動けない。しかも今のレギンとブーケはスレイブの風の加護を受けている。
レギンが俺に微笑みかける。俺はレギンに言う。
「よし、レギン。これで皆帰れるぞ」
「おう、やったな。道、お前の大手柄だ!」
それを聞いて不満に思ったのだろう、ジャンヌが俺達を憎々しく睨んで言った。
「勝った気になってんじゃねえええ、この異教徒があああああ!」
ジャンヌが怒り顔で振るう槍によって、巨大な火柱が戦場に吹き荒れる。
美少女パンツに道テイムまで、あと少しです!
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