ロードロード、魔王軍に協力OKする
今、俺の隣にはレギンがいない。スパッツを履かれたのは非常に残念だが、俺の心はなんだかんだ、レギン一色になった。
俺は告白されるなんて、思ってもいなかったのだ。
温かい気持ちが、心に灯る。
その、こそばゆい感覚が、嫌いじゃ無い。
俺が笑顔なのを見て、魔王ガンダールヴは訝しげな顔を浮かべた。
「おい、ロードロードよ。何か良いことでもあったのか?」
「まぁ、それなりに」
「お前に良いことがあったなら何よりだ。異世界に来て、お前の場合家族もいないだろ。記憶もない。なら、……多少のことは多めにみてやるべきなんだろうな。これから戦場に行くというのに、まさか喜ぶとは……不謹慎な戦闘狂め」
ご、誤解だぞ。俺はレギンと良い感じになったから喜んでるのであって出兵を喜んでるんじゃない!
魔王は俺に理解を示し、慈愛ある顔になる。優しい目で俺を見てくる。魔王もなんだかんだ、上に立つだけあって『相手を理解しよう』という態度をする。これありがた迷惑だよ。
俺はどうにか上手く説明しようと思った瞬間、スレイブが口を開いた。
「魔王様。道はレギンと恋仲になったのです」
「な、何、レギンと!?」
ガンダールヴは大きく目と口を開けた。
「スレイブ、今言うことか? 俺とレギンがもっと仲を深めてから言おうと思ったのに」
「これから戦場なんですよ? 浮ついた気持ちをすぐに捨てなさい」
俺は思ったことを質問する。
「なぁ、レギンとブーケが戦場に行くならどうして俺も一緒に行かないんだ? ぶっちゃけ、活躍なら出来たかもしれないのに」
「どうした? ロードロード、お前は戦場に行きたくないと行ってたのに。正直、お前が正規兵どころか、傭兵としてでも助力してくれるなら……特別に俺へ様付けをしなくてもいいくらいだ」
「まじですか?」
「お前、露骨に嫌がってるからな。魔王『様』って言うとき。そのくらい、分かるさ」
魔王は苦笑しながら溜息をつく。やっぱ、ばれるものなんだな。
「じゃあ、魔王、でいいか?」
「構わん。お前は特別扱いにする」
スレイブが引き攣った顔をしている。
「分かった、魔王。じゃあいくつか伝えておく」
「うむ」
魔王は俺の態度にむしろ笑顔になって肩の力を抜いてリラックスした。俺とはくだけた関係の方が彼も好ましいのかもしれない。
「……正直言うと、俺の道テイムは石畳を整備するだけの力じゃない」
「何……どういうことだ?」
魔王が前のめりになる。
「……そっか。魔王は北の街での戦闘の詳細を知らないのか。考えれば、概要は伝わっていても報告はされてなくてもおかしくない。到着してすぐ、移動だもんな」
「その通りだな。北の森でゴブリン達とロビンフッド、シモ・ヘイヘとの戦闘があったことはレギンから報告が来ている。しかし、その後のジャンヌとの戦闘は詳細は伝わっていない。即座に帰ってきてもらったからな」
「実はだな、魔王」
「うむ」
「俺の道テイムについてなんだが……」
俺は魔王にかくかくしかじかと説明する。
魔王は驚愕し、俺をじろじろと見る。
「す、凄いな……血管を道と捉えてレギンを救った、だと? それにマップ表示機能とは」
魔王は頭を抱えた。
「道テイムによる地形整理とマップ表示。もし戦場をケンタウロス族が駆け巡るというのなら、俺が石や土を道テイムで整備したら、彼等も移動しやすくなる。作戦指揮官や参謀などがいれば、マップを見て効果的に指示することが可能になるだろう。重傷者を治すのとすぐに疲れてしまうが、もし俺が会っていない序列上位の奴が死にかけてるなら、レギンを治したように助けられるかもしれない」
「っく、打ち合わせの時間もなくこれからジャンヌと戦うとは……いや、それならむしろ、今こうして情報交換出来たのが不幸中の幸いか」
魔王はぶつぶつと呟いている。
「魔王、俺はレギンを救いたい。俺は彼女が好きだ。だから、お前ら魔王軍に協力しても良い」
スレイブの目に、涙が浮かぶ。泣くほど嬉しいのか?
「道……いえ、道さん。ありがとうございます」
彼女の美しい生足にぽろぽろと涙が落ちて、流れていく。
魔王は俺を見て言う。
「そう言ってくれるならありがたい。是非、協力させてくれ」
魔王は木槌を使って俺を叩き出した。あ、あ、これ気持ち良いな。
「ロードロード、お前の魔力が乱れている。この前とは別格レベルで強くなってるようだな」
「そっか、色々あったからな」
「……お前が来て数日だと言うのにこの成長か。転移者や転生者は恐ろしいな。すぐに成長する」
魔王は木槌で俺の体を叩いていく。かんかん、という耳障りの良い音が鳴り続ける。
揺れる馬車の中で、俺と魔王とスレイブはジャンヌへの対策や今日起こったことを話し合うのだった。
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