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魔王、失言する

 魔王城。相変わらず黒光りする華奢な尖塔が壮麗だ。


 そして俺は冴えた頭で漸く気付く、美少女が自分の体で寝そべるって良い……。コンクリートの塊なんて最悪だとか思ってたけど、むしろ前世の努力してキョロ充になれるかどうかギリギリの俺よりよっぽど充実してる。


 道になって良かった。


 むっちりした太もも、適度に日焼けした肌、さらさらの髪、全てが愛おしい。ついでに美少女エルフの尻も、美少女ケンタウロスの手も、愛おしい。

 前世ではこんな体験、得られなかった……。完全に俺、リア充じゃねえか。それに俺――、


 レギンと、付き合えることになったし。


 ブーケが魔王城に入ろうとすると、魔王の声がした。


「お前達、待っていたぞ!」


 ブーケはスレイブとレギンが降りた後、俺を降ろす。スレイブとレギンとブーケが真剣な面持ちで姿勢を正すと、魔王は笑顔で俺を歓迎する。


「よくぞ帰った!」


 魔王はまず俺を抱擁し、レギンとスレイブとブーケの手を交互に握った。どうやら、俺が一番扱いが上のようだ。なぜだ? レギン達、序列高いんだろ?


「報告は聞いている。お前達は異世界転移者達の攻撃を凌いだ。見事だ……奴らには散々煮え湯を飲まされてきたからな。特にジャンヌ・ダルク相手によく勝てたものだ」


 ジャンヌってそんな強い扱いなのか。確かに、森で戦った時に位置さえ見えていればロビンフッドやシモ・ヘイヘも撃退できた。だがジャンヌは位置が見えていても、単体でレギンとスレイブを圧倒した。


 それを思えば、ジャンヌは強いんだな……。

 魔王の賞賛にはレギンが真剣な表情で答えた。


「ロードロードのお陰です。あたしは、命すら救われました」


 魔王は目に涙を滲ませ、俺に頭を軽く下げる。


「ロードロード、本当にありがとう。心から感謝をしている。あとレギンとブーケ、疲れたところ済まないが……すぐに西部の戦場に向かってくれ。ロードロードは『道テイム』を頼む。スレイブは風魔法を使って情報伝達を頼む」


「「「っは!」」」


 胸に手を当てて同意するレギンとブーケとスレイブ。


 え、もう次の任務? 休憩ないのかよ。俺は魔王に質問したい。どうやら魔王は時間的に焦っている感じがしたが、今どうしても質問しておきたいのだ。


 俺の転生は、魔王のせいなのかということを聞きたい。


「魔王、聞きたいことがあるんだが、良いか?」


「魔王様、と言え。ロードロードよ、お前は立派な戦士だが……立場を弁えて欲しいものだ」


 俺をケンタウロス族に踏ませて、お前の威厳は消えたんだよ。様付けはしたくないな。まぁ、雇用主になるかもしれないから立ててやるけど。


「俺の異世界転生って魔王様が原因なのか? 転生者を召喚する魔法をお前が最近やったと聞いてな」


「……」


 気まずい沈黙が場を支配する。


「……何か言えよ」


 魔王、目を俺と合わせず、明らかに動揺する。


「そ、その……余が異世界召喚したと言うのは、誰から聞いたのだ? レギンやスレイブか? あるいは、ブーケか……他の者か?」


「さっきまでいた北の村の村長だよ。賢いって評判らしいな」


「あの方か!」


 魔王は豆鉄砲喰らった鳩のような顔を浮かべた。


「そ、そうか。あの方なら無邪気にとんでもないことを言うからな……」


「そんなやばい方なのか?」


 とてもそうには見えないが。


「あぁ。敵軍の侵攻を予測したり効果的な罠の張り方を居酒屋で話したりする。あの方の雑談が今の魔王軍のベースになってる」


 想像以上にヤバいな……。というか、そんな人材をあんな地方で眠らせて良いのか?


「だが非常に問題発言も多くてな……例えば将軍の子供に血の繋がりがないとか看破されて、それが雑談で話された時は国中で問題になった。彼が正直でなく、TPOを弁えていれば我が国エヴォルはもはや別の国になっただろうな」


「本当にやばい奴だな」


 頭がいいけど性格的に問題あるのか。


「で、戦争で負けそうだから元人間の転生者を呼んで、俺が来たというわけか」


 魔王は気まずい顔をする。俺に他意はない。そんな悪いことばかりでもないんだよな。この国、パンツ見放題だし。


 だが魔王は、頭を下げてきた。


「すまない。お前の魂を、こちらに勝手に呼んだのはこちらの都合だ」


 確かに、天国とか地獄でも元の世界でもなく異世界に来たってのは……魔王が召喚したからだが。

 そんな倫理観が魔物の国で通用するのか? こいつら、マトモな心持ってるのか?


「その、言いづらいんだけどさ、俺は魔物の国で人間の倫理は通用しないと思っているんだ」


 魔王もスレイブもレギンもブーケも俺をまじまじと見つめた。

 魔王は重々しく話す。


「言いたいことは分かる。魔物も人間に良い感情を抱いていなかったり、人間も魔物に良い感情を抱いていないものが多い」


「だよな? だけど、ならなぜ魔物の国で俺に気遣うんだ? 魔王ってのは、もっと怖いもんだろ?」


 魔王、少し涙目になる。え、何で泣くんだ?


「余はな、道……先祖代々続いてきたこのエヴォルを、護りたいのだ。両親が、死んで全てのエヴォルの民を余に委ねた。余は、余は……エヴォルを護りたい」


 魔王の頬に涙が滴り、彼は自身の手で拭う。


「……転移者を喚んで、洗脳して戦わせている国も世界には存在している」


 やべえ国だな。そんなのがあるのか。


「その国は他の国に呼び出されたあらゆる転移者や転生者の怒りを買い、亡国となった。ここより遙かに東での出来事だ」


「そ、そうか」


 転移者や転生者が亡国に追い込むってやべえな。何してんだよ同類達は。転生者狩りが逆に起きたらどうするんだよ。


「余はな、余はな……自由と平等の為に、国は存在するべきだと思っている」


「立派な考えだと思う」


「だけど……だけど……余は、お前の意思を確認もしないで、転生者として呼んだ。それを、悪いと思っている」


 まぁでも、国を護るってのは温いことじゃないからな。それに、道に生まれてもパンツ見放題だから悪いことばかりじゃないんだぜ? 笑笑。


「お主、この世界に生まれて、良いことあったか?」


 パンツ見放題。


「そうだな……特にないかも」


 机の上にある『真偽水晶』がちかちか光る。

 ふっと笑う魔王。


「道、嬉しいぞ。お前にも……良いことがあるようだな。隠し事も、まぁ許す」


 レギンとスレイブとブーケも、魔王が笑顔になったのを見てほっとしたような感じになる。


 俺は大して心配していなかった。そう、次の瞬間、魔王があんな恐ろしいことを言い出すとは思わなかった。

 俺と魔王、いや、エヴォル……世界中の運命を変えたかもしれない。


「余の想定外は、道がパンツ見る変態だったということくらいだ」


 スレイブが『真偽水晶』をガン見、凄い顔だった。信じられないというばかりの驚愕の顔。スレイブは魔王に質問する。レギンとブーケはきょとんとしてるだけだが、スレイブの目はやばかった。スレイブは大きく目を見開き、魔王に詰め寄る。


「どういうことですか、魔王様」


「スレイブ? その、ロードロードはだな。『道テイム』をしているとき、『視界共有』をテイムした石畳にしているのだ。つまり、女子のパンツは丸見えだ。最初は最低だと思ったが、今思えばそれで転生者として活躍してくれるんだから安い代償だな。ははは!」


 おい、てめぇ……空気読めよ。


 魔王の爽やかな笑顔、と対照的にスレイブは鬼の顔になった。スレイブは『真偽水晶』を見た後、俺に汚物を見る様な視線を向ける。


 美少女の瞳に吸い込まれそうになる。ぞくぞくする感覚、それが不良ならともかく美少女となれば話は別だ。たまらないぜ!


「こうなっては仕方ありません。魔王軍の女性を護る為、私は動きます」

「動く? 具体的に何をするんだ?」


 スレイブに質問する魔王。スレイブは目を閉じ、部屋を出て行く。


「パンツを見えなくします」


「まあ、別に構わないが」


 平然とする魔王。いや、その……俺って……


 美少女パンツを見ないと、『道テイム』できないんですけど。

 もし『面白い!』とか『続きが気になる!』とか『道の活躍をもっと見て見たい!』と思ってくれたなら、ブクマや★★★★★評価をしてくれると幸いです。


 ★一つでも五つでも、感じたままに評価してくれて大丈夫です。


 下にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところに★があります。


 何卒、よろしくお願いします。

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