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地下水脈

 俺は彼女の体を狙って意識を集中した。無詠唱の道テイムだ。

 しかし、その気配を一瞬で察せられてしまい、俺の体にアイシャ達の濡れた手が当てられる。

 その手はオイルで濡れていた。


 俺の体がさらにヒビ割れる。


「ぐわあああああああ!」


「新魔王……油断のならない方ですね。でも、あたし達は貴方のスキルには何度も助けられ続けている。だから……分かるんですよ。その発動のタイミングも、癖も」


「あ、アイシャ達……なんでこんなセクハラをするんだ? もう、いいだろ」


「……」


 アイシャは握り拳に強い力を込める。その感情は、俺に察することはできない。


「俺には彼女がいるんだ。こんなセクハラ……もう止めてくれ!」


「駄目です」


 アイシャはごそごそと胸をまさぐり、そこから一枚の紙を取り出した。

 それは、『地下水脈』の地図だった。


「こ、これは」


「今日はこれを道テイムしてもらいます」


 俺はキリッとアイシャを睨み付ける。

 俺は新魔王だ。アイシャは序列持ちでもなく、単なる部下に過ぎない。


「アイシャ、お前達は何様だ。俺より階級が下なんだ。軍隊で規律が大事なのは分かっているだろう?」


「……」


「本当に、止めてくれ」


「駄目です」


「っく……」


 彼女の意思は硬いようだ。俺の体はアイシャの取り巻き達に囲まれていて、逃げることはできない。

 まさか俺が……こんな若い子達に負けるなんて。


「道テイムして下さい。でなければ、オイルマッサージします」


 俺に拒否する選択肢は残されていないようだ。

 ……ここは不本意ながら言う通りにするしかない。


「分かった。俺にオイルで濡れた手を向けるのを止めて貰ってもいいか?」


「……良いでしょう」


 アイシャがそう言うと、彼女の目配せにより取り巻き達に脅すのを止めさせる。俺に向けられた手は降ろされた。

 そして、アイシャが突きつける紙に俺は意識を集中する。


「……道テイム!」


 俺の透明なエネルギーが『地下水脈』の地図に投射されていった。

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