ブーケ、反省。
ロード学園登校して三日目。
教室の雰囲気が好ましくない。
敵意、とも違う何かに満ちている。
何だ、この雰囲気。
俺が顔を消してキョロキョロと意識を教室全体に見回した。
すると、嫌な雰囲気は主にアイシャとその取り巻き達から出てるようだった。
そして、その嫌な雰囲気はレギンに向かっているようだ。
……表面的には穏やかだけど、確実にギスギスした雰囲気がある。
昨日のこと、引きずってるんだな。
アイシャは……あの黒髪ロングの美少女ケンタウロスは俺にどうしてももっとパンツを見て貰いたくて仕方がないらしい。
俺に、国中の美少女パンツをもっともっと見て貰わないと気が済まないのだ。
それが正しいことだと分かってる。
今でさえ俺は仕事を全力でやってるとは言いがたい。
人間で言うならコンビニバイトを一時間やりました、程度の労力である。
俺がもっと美少女パンツを見れば、国は確実に道テイムで豊かになる。
が……俺には彼女がいる。
それは、俺にとって大きな存在だ。
彼女がいる限り俺がこれ以上美少女パンツをチラ見することはあっても、大規模に見ることなんて無い。
絶対に、だ。
ガララ、と扉が開く。
鬼教官となったブーケだ。まぁ、オーガ族じゃなくケンタウロス族の子なんだけど、訓練においてはオーガ族以上の鬼でしかない。
起立、礼、着席。
挨拶が終わると、ブーケは桃色の瞳を黒い笑顔と共に教室に向けた。
「さぁ、行きましょう。生き延びる為の地獄に」
こうして、俺達は日課となっている岩山へと向かった。
ブーケが原生林に来て、いつもと違う岩山を指差した。
「今日はあの岩山に行きましょう」
聳え立つ岩山はこの辺りで二番目に高い。俺もレギンもアイシャ達も、合計三十名ほどの生徒が一斉に岩山の真下に向かって駆けていく。
すると、ブーケが俺に話しかけてきた。
「あたし、間違ってました」
「? どういうことだ?」
「皆さんに、酷いことをしました」
「――分かってくれたか、ブーケ」
「はい……あたし、昨日までどうかしてたんです。道さんがいるって言うのに、あんな訓練してたなんて、馬鹿げてました」
そういうブーケの顔は酷く悲しそうだった。本気で傷ついているようだ。
「分かってくれたらいい」
「道さん」
疾駆する彼女の顔は少し驚く。
「二度と、昨日みたいなことするなよ」
死者転生を前提としてのハード体育なんて間違ってる。
「道さん、あたし、もっと皆を信じます。ちゃんと……体育します」
俺はそれを聞いて安心した。ブーケは愛国者で、頑固者で、鬼教官なやべー奴だと思ってた。
でもちゃんと反省できるんだな……。
岩山の真下につき、俺は目測で距離を測った。
千五百メートルくらいはありそうだ。というかこの急斜面はもう崖だ。今日はロッククライミングか?
いや、それなら昨日よりハード体育なんじゃ……いや、駆け上がれって言わないだけかな?
「では、あたしの後に皆さん駆け上がってきて下さいね!」
「は?」
ブーケは天真爛漫な笑顔で崖を見事に駆けていく。あっと言う間に彼女は登り切った。
……五秒くらいしか経ってない。
あいつ、本当に凄いな。
「全然、反省して無いじゃねえか。何が昨日と違う、だ」
美少女同級生共が崖を駆け上っていくすると。
ブーケは岩や大木を落とし始めた。
「昨日までの『温い』訓練とは違います! 戦場では敵の攻撃があって当然! 皆さん、頑張って!」
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