道テイムで美少女軍人を操作する
原生林に囲まれた高い岩山。
ここがクラスの体育演習地にあてがわれているわけだが、いつ見ても悲惨な光景だ。
「遅い! それでは敵魔導師に撃たれるぞ!」
ブーケが叱咤する。怒られた亜人美少女共はブレザー服を着ながら岩山を駆け上っている。
「いやああああ!」「これやばい、何度やっても、やばい!」「死んでも大丈夫だけど……」「痛いよぉおおおお!」
駆け上る生徒の内、一名が足を滑らせて岩山から落下する。
このままでは死ぬだろう。
「道テイム・拡散!」
俺は落下する生徒の筋肉を狙って収縮させ、なんとか着地させる。とは言っても、大ダメージには変わりない。受身を取らせた形になったが、高い場所から落ちてきているので肌はぐちゃぐちゃだ。
「あ……うぅ……」
死にかけた亜人JKの体は余りにもグロテスクだった。多分、内蔵が幾つか潰れていて大量に出血している。しかし。
「道テイム!」
俺がスキルによって壊れた体の組織を収縮していくと、死にかけだった彼女は笑顔になり俺に一礼した。
「相変わらず、凄いです。ロードロードさん……ありがとうございます!」
「無理するなよ。嫌なら止めていいんだからな」
「はい!」
岩山の頂上からブーケが桃色の瞳できりっと俺を睨む。どうやら彼女は俺が「無理するな」と軍人JK共に言うのを嫌がっているらしい。まぁ気持ちは分かる。
軍人が無理して国を守ってくれているのだ。
俺の前世の祖国の日本だって自衛隊がない頃、他国の侵略を受けて領土の一部を失ってしまったことがある。
国家とは、軍人が無理して守ってもらうことで初めて存在できる。
俺の言葉はやる気を削ぐような発言だ。
鬼教官がハード訓練やってる時に言うべきことではないかもしれない。
しかし。
俺は岩山を登る生徒達を見る。
見事なパンツ。
俺の心に声が響く。
【エナジーが回復しました。レベルアップです】
相変わらず、土埃と彼女達の汗が滴り、良い感じに淀んだパンツがある。
変態ならあの汗をすすりたいと思うんだろう。
俺は紳士だからそんなこと、思ったりしないのだが。
あ、苺パンツ。
苺パンツに苺ジャムつけてすすったら……変態なら興奮するのだろう。
まぁ俺は紳士だから、そんなこと……思ったりしないけどな。
【エナジーが回復しました。レベルアップです。トロフィー「変態紳士」獲得】
……。
あの美少女達を見て思う。
戦場には不釣り合いだ、と。
少年兵もいいところだ。女子供が戦場に行くなんてよくないと思うんだよな。
俺はふと、俺にも渡された資料をチラ見した。
生コンクリート状態になって、ぺらぺらとめくっていく。
そして再び、岩山を登る美少女達へと視線を移す。
……。
ドワーフギルドのギルド長が言っていた。俺の道テイムは発想次第でいくらでも強くなる、と。
なら簡単だ。
「落ちそうな時に……」
俺は岩山を駆け上る疲れた生徒を凝視する。
彼女はスリップして落ちていく。
「道テイム!」
俺の道テイムが相手の筋肉を操作し、適切な運動を行う――ケンタウロス族の少女が宙返りと共に崖の突起を駆けていき、頂上まで駆け上がっていく。
「す、す、凄い凄い!」
彼女が驚きながら歓声を上げる。
俺はニヤリとほくそ笑んでしまう。思った通りだ。
そしてその様子を見て、ブーケやレギンは勿論、アイシャ達も驚いていた。
俺は道テイムで軍人の体を操り、最適な体の動きを与えたのだ。
「ロードロード、凄いな」
レギンが俺を褒める。へへへ。彼女に褒められるって悪い気分じゃねえな。
クラスメイトであるオーガ族やドライアド族やケンタウロス族の美少女達は岩山を駆け上がった後、駆け下りる。今はこれの繰り返した。
岩山は千メートル以上あり、当然ながら死者も出ている。
俺はそこでふと思いついた。俺が道テイムで亜人同級生達を操作すれば……多分、彼女達の身体能力を遺憾なく発揮できる、と。
「道テイム!」
明らかに一番遅いドライアド族の子がいた。その子の体を道テイムし、適切な筋肉の動きを与えていく。岩山を次々にドライアド族の子が流麗に駆け上がり、登って行く。
リズミカルかつ軽快なその動きはブーケの動きに似ている。それもそのはずで、俺がブーケの体を道として理解していったからである。
俺は岩山の上のブーケを見る。
自分の動きをぱくられたのだ。さぞかし、嫌な気持ちになっているだろう――と思ったのだが。
ブーケは笑っていた。
それはどす黒さと爽やかさが混じったような笑みだった。
俺の隣でレギンが笑う。
「あはは、ロードロードがいたら……戦場での死勝率、凄く減るだろうね!」
「そ、そうだな」
不穏な予感を桃色のケンタウロス美少女に感じつつ、ハード体育の時間は流れていった。
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