下から覗くという喜び ~人を見下すより、美少女を下から見上げよう~
「お、おいブーケ、いくらなんでも厳しすぎないか?」
桃色の瞳が俺の方を向いて、ニヤリと笑う。
暗黒微笑、とでも表現するべき黒い笑顔だった。
「いえいえ、道さん……これは国家の為に必要な訓練なんです。それにあたしが聞いているのは彼女達であって、貴方ではありません。アイシャ達、どう思いますか?」
アイシャ達は一糸乱れぬ敬礼をして、
「ブーケさん! 全身全霊で挑んでみせます!」
「というわけです。道さんは彼女達に道テイムしてればいいんですよ」
……俺は可哀想だと思うが、本人達がそれを臨むというなら止めようもない。
「分かった、悪かった」
「えぇ。では皆さん、駆け上って下さい。こんな風に……ね!」
桃色のケンタウロス美少女は桃色の魔力を足に纏って、凄まじく流麗に崖をかけていった。
その動きは美しく、まさに運動芸術と言えるようなものだった。
ってお前以外、そんな動き出来てたまるか!
アイシャ達……俺の同級生は全員がケンタウロス族でなくても高い身体能力を持っているようで、次々と崖を登っていく。
彼女達は初速はそれなりに頑張るものの、次々と魔力ギレなのか体力が切れたのか、落ちていって――体が叩きつけられて大ダメージを喰らっている。
「み、道テイム!」
俺は道テイムを使って彼女達の血管や筋繊維を次々に治していく。二十名以上は治療ですんだが、三名ほどは転倒と墜落のダメージにより死亡していた。
「レギン!」
「うん」
サキュバス族の美少女が俺の体に手を当てる。これで条件が揃ったので、
「道テイム!」
死んだ同級生三名を俺は生き返らせた、死者転生である。
【トロフィー「美少女ボディ練度」が向上しました】
スゲえトロフィーだな。
【美少女の体を道テイムする度に練度が上がります】
何の練度が上がるんだよ。
【ニキビ治療や癌治療、老廃物の撤去や肌や髪の潤いが良くなります】
まるで美容スキルだな。
俺の道テイムは美少女をより美しくする力があるらしい。
「ロードロード、なんていうかアイシャ達……どんどん綺麗になってるね」
レギンはどこか不満げだ。女性は美しくなるという欲求に果てが無いという。もしかしたらレギンはアイシャ達に嫉妬してるのだろうか?
「そ、そうかな?」
「うん……多分、道テイムって美容に良いんだね」
「凄いスキルだな」
「うん……あのさ、その……人間の肉体って十八歳から肌の劣化が始まって、二十五歳から細胞の老化が始まるんだよ」
「有名な話だな」
「うん、亜人も同じなんだけどね?」
「うんうん」
「体に歪みがあると、体液の循環が悪くなってニキビの原因とか浮腫の原因になったりするんだ。だから人間の美っていうのは歪みがある分、発揮されきって無かったりするんだ」
レギンは少し辛そうにそう言った。道テイムしてるから感覚的には理解出来るぜ。
「へー」
「ロードロードの道テイムはO脚であれ足首の歪みであれ治していくからどんどん健康的になるんだよね」
「俺のスキルって凄いんだな」
「うん……だからね? あたしに一週間に一度は道テイムかけて欲しい」
「べ、別にいいけど」
「やったぁ!」
レギンはとても嬉しそうに黒翼をばたばたさせる。
……女性の美に対する欲求ってなんか怖いな。本能的などろどろしたものを感じる。
まぁ、そんなものを本能に根ざしているから女性は美しい生き物として存在するんだろう。
あ、崖を登る子のパンツ見放題じゃん、これ。
【エナジーが回復しました。レベルアップです】
汗で潤ったパンツ。滴り落ちる水分を見て、俺は変態なのではないかという錯覚に落ちる。
しかし俺は変態ではなく、ただの仕事人間だと自問自答する。
右左に動く四肢が、パンツに動きを与えて俺に不思議な気持ちを起こさせる。
人はいつからパンツを好きになったのか?
きっとイヴが無花果の葉を纏ったのを、アダムが見た時ではないかと思う。
素っ裸の人よりパンツを纏った人の方が好かれるのは当然でしかないと思う。
恥じらう女子を、パンツ装備した男子は好きになったのではないだろうか?
世界を支配したユダヤ人が証拠だ。旧約聖書とかいうラノベで神の後にパンツの話を持ってきたあいつらは一種の天才とも言える。
滴る汗と、土ぼこりがついて汚れていく美少女のパンツを俺は凝視した。
あの汗をすすりたいと思ったら俺は変態だと思うが、俺はそんなこと思ってない。
凝視。凝視。凝視。
ただ一心不乱に、美少女のパンツを仕事いているだけだ。
人を馬鹿と言った奴が馬鹿なら、人を変態と言った奴が変態だ。
パンツって良いな。
【エナジーが回復しました。レベルアップです】
っふ……また大層なパンツを見てしまった。
晴天の下で、俺はただほくそ笑む。
岩山の頂上を登る美少女達を下から眺めるのは悪くない。下から見上げるって良い気分だぜ。
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