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シルクロード会議6 怪しい彼女

「魔物じゃないから、か……。ロードロードよ、私もオーガ族に転生してる。ソロモン王の支配から逃れる為に魔族になった。だが……祖国カルタゴへの愛国心はある」


 つんつん、とハンニバルは彼自身の頭に生えた二本の角をつつく。

 俺は無反応。するとハンニバルは険しい顔を浮かべて腕組した。


「理解できない。なぜ愛国心がないんだ? 転移しても、転生しても、故郷を愛する気持ちは変わらないのでは?」


 天才に、凡人おれの気持ちなんて分からないだろう。


「俺はハンニバルと違って恵まれたスキルがなかったから。お前みたいに軍事や政治や経済の天才じゃなかったし、活躍なんてしてない」


「男の価値は仕事ができるかどうかじゃない。信念。それがその男の価値を決めると私は知っている」


 根拠のない言葉だ。全否定に値する。


「ハンニバル、それはお前だけの中で完結している考え方だよな?」


「……どういうことだ?」


「俺はお前に褒められたり貶されたりしてもどうでもいいんだよ。だってお前、おっさんじゃん。

美少女、これこそが最高の価値ある存在だ」


「あの、その、ロードロードよ」


 彼は俺を訝し気に見る。明らかに不満な様子だった。


「何だ、ハンニバル?」


「美少女が全てって言葉、止めてもらっていいか?」


「……俺の生きた時代はそうだったから」


「……美少女なんて、大男に無理やりされたら抵抗できないような弱者だぞ? 俺が許したガリア兵であれ、そもそもポエニ戦争の始まりであれ……女性が踏みにじられることから始まった」


「ポエニ戦争の始まりが強〇とは知らなかった」


「暴力、それに人は踏みにじられてしまう。いいか? この世界は弱肉強食、力こそ全てだ。美少女なんかじゃない」


「そんなこと言われてもな。……日本は平和な国で、自由恋愛が起きたんだ。その自然淘汰で排斥されたのが俺ってわけ。ポエニ戦争で戦い続けたハンニバルには理解できない民族だよ、現代の日本ってのはね」


 ハンニバルはハッと目を見開いた。


「成程。お前は女に飢えているんだな。衣食住が保証され、ただ女にだけ飢え続けた。だからあんなやばい女でも笑顔を向けられたらコロッと好きになったわけか。あんなやばそうなサキュバスだっていうのに……」


 ハンニバルは悲し気な顔で俯く。

 だがそれ以上に、許せないことがあった。


「ハンニバル、レギンを虐めたら許さないからな。お前がやばい女と言おうと、俺にとっては彼女なんだ」


「……お前にも父母や友がいただろうに」


「そこら辺の記憶ないな。道の記憶はあるんだけど」


「……それもきっと、喚起の都合だ。恐らく、レギンやガンダールヴはお前が思い出せる前世を意図的にコントロールしているはずだ」


 ハンニバルの言葉にはブーケとヒポハスとリィフィ、三人ががたっと揺れた。

 彼らの目は揺れていて、明らかに取り乱している。


 言われて気づいた。ハンニバルの言うことは理解できる。

 そうだ。

 遺伝子を改竄できる能力がこの世界にあり、俺にも遺伝子はあるらしい。

 朧気に覚えている記憶……それが本当だとしても大切なことが隠されてしまっていたら―、


「ロードロード、トラウマだけを思い出させて意図的に誘導することができるはずだ。異世界転移した我々が記憶を持ってるのに、異世界転生したお前だけ記憶を覚えていないというのはおかしい。その体を作った奴は誰だ? そいつはお前の記憶を刺激して、都合の良いように動かしているんじゃないか?」


 ……。


 ハンニバルの言うことは理解できる。


 この場にいない彼女。小悪魔のように笑うサキュバス美少女が俺をはめていてもおかしくない。


 だけど、だけど俺には、


「俺はもう、過去のことなんて知ったこっちゃない。レギンが相手にしてくれる以上、レギンを選ぶ」


「……命をかけてローマと戦った私からすれば、理解できない感情だな。女なんかより、国の方がずっと大事だ」


「レギンは傾国の美女ってことだな」


 ハンニバルはツボったのか、少しくははと笑う。


「まさに、その通りだな」


 そして、ハンニバルは再び世界地図に目をつけた。


「ということは、日本は中国に目を付けられる時代になったということだな。初めてだろう。覇権を目指す国に目をつけられるなんてな」


 俺はしかめっ面をして、彼に助言してやることにした。


「違うぞ、ハンニバル。日本は昔から大国にとって常に重要な国として見られてきた。お前の言葉は完全に間違ってる」

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