レベル十億 と 新任務
朝。自宅で俺は目が覚めた。
昨日、なんだかんだで軽い運動感覚で俺は敵国を滅ぼしたことを思い出す。
エルティア王国の最後はあっけないものだった。
あの後はマルティアを取りあえず自治区の長にして、エルティア王国を併合。今はそれで発生した膨大な事務手続き作業に国中が追われている。
……国を滅ぼすのってこんな簡単なんだな。
しかも俺の能力はまだ伸び代がある。
将来どうなってしまうのか、見当もつかない。
「道テイム!」
俺は日課の石畳整備と、《礼拝の時間》を行う。
今、亜人国家エヴォルの美少女六千名が俺の為にパンツを見せてくれている。
へへへ、毎度たまんねえな。
俺の視覚にブラウザ表示されたかのような色とりどりのパンツ、パンツ、パンツが映る。
白い無垢な絹製パンツを吐いて半透明な透け感を醸しながら肉質がぴっちりした体のシルエットをよりきわだたせている人がいたり、
緑と青の健康的なコントラストが綺麗な水着っぽいパンツを履いている人もいたり、
ふりふりとしたフリルと綺麗な刺繍がされた白い半透明タイツの中に桃色パンツを履いている人もいる。
うっひょおおおおおおおおおおお!
【レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。レベルアップ――】
たまんねえな。
【レベル、カンストしました。エナジーが大きく回復しました】
は?
レベルカンストだと?
【はい】
俺の心に直接響く小賢者分身の解答に迷いはない。
いや、レベルカンストするのかよ。千とかじゃねえだろ。
俺のレベルっていくつだ?
【十億です】
……レベル、十億か。けっこうあるな。
まぁ今まで頑張ってきたんだ。そりゃそのくらい――、
【トロフィーを獲得すればもっと上がります。頑張りましょう】
っておい。まだあがるのかよ!
ったく……どうすればいいのか。トロフィーを獲得するなら、尻軽エルフに罵倒されながらパンツ見せて貰ったりすればいいかな。
なんかあったよな、よく覚えてないんだが……回数制限ないトロフィー。
【あったけど、忘れました】
おい、小賢者分身。お前は俺のマネージャーみたいなものだろ。
【忘れたからしょうがない】
くそ。 まぁ十億レベルあれば大体の敵倒せるだろ。
【霊脈を使った魔王ガンダールヴはレベル十万。ドラゴンロードはレベル十兆くらいに思って下さい】
ドラゴンロード強すぎだろ。……俺が順当に成長するとして……二週間ちょいで十億だから、二万週間くらいかかるな。
【戦い、回避推奨】
おう。むしろ俺は無闇に戦闘したくないんだ。
昨日も民間人は殺さなかったからな。ジャンヌのパンツを破裂させて消しただけだ。
敵であれ、極力殺さない。まぁ相手が軍人や暴徒なら容赦なく倒すけど。
俺が小賢者分身と話していると、桃色のケンタウロス美少女が手を振ってかけてきた。
「道さん! おはようございます!」
弾けるような明るい笑顔、彼女は魔王軍序列三位にして魔王代理。桃色の瞳と髪が特徴的なブーケという名の少女だ。
俺は生コンクリート状態になって手のようなものを作り、振って応じる。
「おはよう、ブーケ」
「ははは。じゃ、行きましょう!」
ブーケはてくてくと歩き、俺はぬるぬると動く。
「道さん。その……良ければ運びますよ」
「いや、スキル練度を上げたいからこれでいい」
「そうですか」
「おう」
「……」
少し空気が張り詰めるのを感じ、俺は彼女を視る。すると……彼女はどこか不機嫌そうな顔をしていた。
「遅いですね、道さん」
「そ、そうだな。未だに時速二十キロが限界で……」
「あたしは音速で動けるんで、あたしが背負いますね。時間が勿体ない」
「お、おう」
俺は生コンクリート状態を解除し、彼女に持ち上げてもらう。
よし。
仕方ない。女に担がれるって……今思うとちょっと恥ずかしい。
「じゃ、飛ばします」
満面の笑顔で、桃色馬少女は笑う。まぁ、この笑顔を見ればそんなくよくよなど失せるものだ。
「あぁ、頼む」
「飛ばします!」
ブーケが走って行くと本当に音速状態になり、俺は驚いた。彼女の肉体は以前より強化されている感じがする。
死者転生をやってなくても、謎のトロフィー「エンゲージ」や道テイム整体の効果は着実に表れているようだ。
これは間違いなく……ガンダールヴの代理にも俺の代理にもなれる。頼もしい魔王代理だ。
ブーケが走ること、二十分ほど。三十六キロメートルくらい離れていたのか、それ以上かは分からない。
「着きました!」
彼女が明るい声と共に、俺を降ろす。
聳え立つ茶色い建物が目の前にある。
ソロモン王の襲撃が無ければもっと早く来れた場所。
兵站・物流センターと呼ばれる施設。
そこはドワーフギルドの四倍くらいは大きい。
縦長のビルのような感じで五階建てくらいありそうな感じだ。
職員と思われるドワーフ族やケンタウロス族やオーガ族の人が出入りしている。この施設はドワーフギルドと違い、特定の種族が利用するという感じではないらしい。
だが……中でも多いのはケンタウロス族だ。半分くらいは彼等で占められている。
今日、俺の隣にレギンはいない。ここで待ち合わせしたのはヒポハスとハンニバル、あと序列四位のドライアド族リィフィかビッチエルフが来ることになってる。
俺が昨日、魔王城に帰ってくる途中で色々と簡単な仕事の段取りを決めた。そこで最重要課題として浮上したのが『ロード学園』を作るという内容だ。
先代の魔王・ガンダールヴもその予定だったが、これは今のブーケ魔王代理も方針を変えないらしい。
「ブーケ、学校ってそんなに大事なのか?」
「道さん、大事ですよ。理念とかポリシーとかヴィジョンって、皆で共有しないとチームワークにならない。道さんやハンニバル、あたしが優秀と言われても皆を置いてきぼりにしたら結果として国は上手くいかなくなる」
なんてしっかりした考えなんだろう。彼女は弁舌を続けた。
「いいですか? 私達は、エヴォルという一つのチームにならなきゃいけないんです。道さんを中心にして生かすにしても、私達は理解し合わないといけない。学校は絶対に必要なんです。そして、ここが一番エヴォルで具体的な経済や軍事の中心が、ここ……兵站・物流センターです」
「成る程、まぁ言いたいことは分かる。俺もこの世界のこと……知りたいしな」
というのも、今更ながら……俺自身、ドワーフギルドよりさっさと行きたいと興味を惹かれていた場所ではある。
道と言えば物流だ。物の流れ、人の流れ……経済や軍事にそれは欠かせないし、道テイムに一番活かせるものになるだろう。
「じゃ、入りましょう!」
「おう」
俺はブーケと一緒に、ギルドの扉に向かって行った。
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