エルティア王国に道テイム
ハンニバル。相変わらず……どこまでも分からない男だ。
ハンニバルは振り返って俺を見て、エルティア王国の地図を見せる。それには道テイムすればいい場所が描かれていた。
この男、それなりに絵も描けるらしく、丁寧なイラスト付きだ。
ハンニバルは俺に地図を見せながら、
「ロードロード、お前は差別をせず平等に扱う。それがいつか、命取りになるだろう」
と言った。
馬鹿にされた、そう思って俺はハンニバルをぎろりと見るが――、
彼の顔はこれ以上ないほどに悲しげだった。この男は俺を見ている。その上で、それが……優しげにさえ感じられた。
その瞬間、俺は奇妙な感覚に包まれた。この男が……兵の犯罪を戦争理性として許すが、自分は興味無いという化け物――ハンニバルが急に小さく感じられた。
元々は、こういう感じの顔をする奴だったのだろうか?
「ロードロード。お前がどれだけ高潔に生きようとしても、他人の心を変えるなんてできない。盗むなと言っても盗む奴はいる。嘘をつくなと言っても嘘をつく奴はいる。殺しや、女子供に手を出す奴さえいるのが世の中だ。私は……ローマとの戦いでそれを知っている」
「……」
「お前が庶民ならその考えで良い。小さいコミュニティの中で生きていけばいいからだ。しかし、魔王となれば話は違う。庶民なら関わらないでいいようなヤバい奴らを利用したり、戦ったりしないといけなくなる日もある。国を運営するということは、小さな汚いことに手を染めて、大きな綺麗事を成し遂げることもある」
「――」
小さな汚いことに手を染めて、大きな綺麗事を成し遂げる……。
そうか、それが……この男がガリア兵を扇動してローマと戦った美学なのか。
祖国カルタゴを守る為に、兵に多少の犯罪を黙認した……一見歪んでいるような、真っ直ぐな正義。
そして、俺が小さな綺麗事を吐いて、大きな汚いことを招くとでも考えているのだろうな。
「ハンニバル」
「?」
「お前ほど賢くはない。だが……その局面が来たら、俺は……大きな正義を取るよ」
「……」
ハンニバルは少し悲しげだったが、目が優しく笑うような表情になる。
俺は、ハンニバルの地図に意識を集中する。
「道テイム!」
情報を吸収。俺は次々にハンニバルの地図が示したエルティア王国軍の領土を道テイムしていく。
俺が道テイムをすれば、どんどん情報が流れ込んでくる。
よし。これは……エルティア王国の首都まで石畳を作れそうだ。
と思ったら、宙にマップが浮かぶ。そこには、大きな赤い点があり、俺の石畳整備がぷつっと切断される。
この赤い点が、俺のスキルを妨害したのだ。遥か彼方で、俺の石畳を破壊できるような奴。そしてそいつは……ぐんぐん凄い速さで近づいてくる。
【敵、接近】
小賢者分身の声。
分かってる。これは強力な敵だ。
【異世界転移者……ジャンヌダルクです】
俺はニヤリと笑った。あいつの美少女パンツ、道テイムしてやる!
皆さんのお陰で、とうとう昨日一日辺り500pvを超えました! ありがとうございます!
もし『面白い!』とか『続きが気になる!』とか『道の活躍をもっと見て見たい!』と思ってくれたなら、ブクマや★★★★★評価をしてくれると幸いです。
★一つでも五つでも、感じたままに評価してくれて大丈夫です。
下にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところに★があります。
何卒、よろしくお願いします。




