ハンニバル「国や正義を思うとエナジー回復する」 道「は? 何その主人公仕様。ふざけんな」
「ぱ、パンツ……いや、美少女パンツ、だと?」
ハンニバルはかつてない程、狼狽えた。人の本質を見抜くこの武将は、俺の能力の本質をまだ見抜けていないらしい。
ニヤリ、と俺は笑う。
「ハンニバル、俺の道テイムが美少女パンツを見てエナジーを回復するっていうのは知ってるよな?」
「あ、あぁ……低俗かつ下ネタ。何度聞いてもふざけてるとしか思えない最低の仕様だ」
そんな風に思っていたのかよ。
「せめて怒りとか祈りとか憎しみで力を得る仕様ならまだ良かった。よりにもよって、なぜパンツなのだ」
「アダムに文句言え」
ハンニバルは眉をぴくりと動かし、俺を見た。
「何でそこで聖書の知識が出てくるんだよ。関係ない話題を出すな」
「だって始まりの知恵って美少女パンツじゃん」
「は?」
ハンニバルは俺を見て、「頭おかしい」と言わんばかりの顔を向けた。明らかに俺を馬鹿にしている。
「だってアダムが使った最初の知恵って無花果の葉を纏う恥じらいの知識だろ?」
「――あ、あぁああああああ!」
ハンニバルはかつて俺やレギンが驚いたような反応をしている。
というか、後ろの兵士達も驚いている。
「ま、まじ?」「パンツを見るなんてふざけた理由だと思っていたが……まともな理由があったのかよ!」「し、信じられない。そんな真剣な理由がパンツ……いや、美少女パンツに隠されていただなんて」「驚いたぜ」
魔王軍のメンバーが……ヒポハスですら目を大きく見開く。おいおい、って……そうか。この知識、共有してなかったな。
聖書の世界ってのはこの世界にいる人皆が知ってるけど、俺が美少女パンツを見てエナジー回復っていうのが仕方ない仕様って知っているのは……俺とガンダールヴとレギンとブーケとソロモン王くらいか。他の奴は知らなかったのか。
そして、ハンニバルはこれ以上無いくらい真剣な顔で俺に聞く。
「ロードロード、その……女でなく、美少女でなければいけないのか?」
気にするとこそこなのか。まぁ、なんか嫌な仕様だよな。取りあえず、答えるけど。
「あぁ。ちなみにソロモン王の知恵テイムも美少女パンツを使ってエナジー回復するらしい」
俺だけ悪い風に言われてたまるか。ソロモン王、お前も道連れだぜ。へへへ!
ハンニバルは、どこか遠い空を眺め始めた。
「ソロモン王……私やロビンフッドやジャンヌにエナジー回復の手段を教えなかったのは、それが原因か。恥ずかしかったのだろうな」
「エナジー回復の手段って、お前ら異世界転移者同士でシェアされているのか? ハンニバルって元エルティア王国軍だよな?」
「あぁ、シェアしてたよ。ちなみに私の場合は正義や国家を思うとエナジーが大きく回復する」
は? 何その主人公仕様。ふざけんな。
羨ましいんですけど。こちとら美少女パンツだぞ。
「あとロビンフッドは仲間と会話したり、木々や人々を大切にすることでエナジーを回復する奴だ。何気ない大切な日々を大切にするだけでもエナジーを回復する」
リア充仕様じゃねえか。ふざけんな。
嫉妬しちゃうんですけど。あのイケメン、そんなリア充仕様だったのかよ。
「ジャンヌはな……明かしてくれなかったが、正義や憎しみ……強大な感情の迸りでエナジー回復が起こっていたと思う」
「それは俺も感じる」
美少女パンツを道テイムして破裂させた時とか、それを根に持って怒られた時とか、火柱が凄かった。
ジャンヌは俺に美少女パンツを破裂させられる度に強くなるに違いない。まぁ、会ったら絶対に道テイムしちゃうんだけど。
「ただ一つ言えるのは、あの子は、聖女ジャンヌは非常に特殊な存在だ。神に対してよく祈っていた。その時も……彼女はエナジーを回復させていたのではないかな」
ハンニバルは少し俯きがちに、低い声で話す。
「ジャンヌが……特殊?」
「あぁ。恐らく、神か聖霊……の声が聞こえるのかもな」
「天啓持ちってことか!?」
神の声が、聞こえる? いや……今更だが、神、がいるだと!?
ハンニバルは頷く。
「ロードロード、ここまで付き合ってくれた礼だ。特別に教えよう……啓示が聞こえる人間はそこまで珍しくない」
「え……」
ハンニバルは神妙な顔で打ち明けてきた。
「お前はどう思うか分からんが、俺も天啓は聞こえる時がある」
「な――」
ハンニバルは……神の声が、聞こえる?
「だけどお前が想像するような一神教の神じゃない。それだけは言っとく」
「へー」
まぁ、神か……繊細な話題だから触れないようにしよう。
それより、戦闘に役立つかもしれない情報が欲しい。
「シモ・ヘイヘはどんな条件でエナジーを回復するんだ?」
「あいつは普段の寝たり食ったりで回復できる。だが強大な敵に立ち向かう、そういう時に大きなエナジー回復を起こす奴だったな。序列持ち相手とか」
そいつも主人公みたいな回復の仕方だな。
畜生。どいつもこいつも、格好いい回復仕様じゃねえか。なのに何で俺だけパンツ……いや、美少女パンツなんだよ。
ハンニバルは苦笑し、俺を見る。
「だからお前が美少女パンツと言った時、信じられなかったよ」
「だろうな。最初は俺も戸惑った」
ハンニバルはレギンをちらっと見て、レギンは身構える。
「その女をお前が好きな理由も解った」
「どういうことだ?」
ハンニバルのオッドアイが、再び俺をじっと捉える。
「サキュバスは……人の持つ礼節や倫理を否定したがる」
「え……」
レギンが俺を見て、叫ぶ。
「ロードロード! その……あたしは、貴方の格好いいとこ、好きだよ!」
ハンニバルはレギンを警戒するように睨む。
「ロードロードよ。私から忠告しよう。その石畳の正体は恐らく……ユダヤ教かキリスト教に関するものだ。実はな……私の目にはお前が……燃える灼熱の石に見える」
俺はオッドアイの武将に問う。
「燃える灼熱の石?」
「あぁ」
「ソロモン王は……分身の時は見えないって言ってた。本体の時は光輝いて見える、と」
「成る程」
「ハンニバル、俺の石畳の正体、分かってるのか?」
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