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雪山にて道テイム 中編

「な、何だこれは……ロードロード、お前の道テイムは石畳や土を整備できるだけじゃないのか!?」


 ハンニバルがぶるぶると震えている。


「まさか。ありとあらゆる素材を使って道を作ることが可能だ」


「ありとあらゆる素材? どういうことだ?」


 ハンニバルのキョトンとした顔。そうか、この男は俺の戦闘も道テイムもろくに見れてないのか。


「今みたいに雪を使って氷の道を作ることは勿論……鉄を使って空へ高い塔のようなものを作れる」


「悍ましいにもほどがあるな……射程範囲は?」


「だいたい五メートルくらい離れてても道テイムは使える。攻撃用の道テイムなら十キロくらい離れてても使える」


「攻撃用?」


 ハンニバルは全く分からないと言った顔だった。


 まぁ、そんなものか。そりゃ道を使って攻撃とか意味わからないよな。


 俺はニヤリと笑って返す。


「その内見せるよ」


「うむ……私には想像もつかないな」


 よし……進もう、と思ったら何だこれ?


「道テイム」


 俺はマップを空中に表示させる。


 そしてあることに気づいた。


「なんだ、この赤い三角形は…」


 他の魔王軍メンバーもじろじろと俺のマップを観にくる。


 すると、ハンニバルとヒポハスが話し始めた。


「ヒポハス、これをどう思う?」


「交通の要所ですね。雪崩が落ちてきそうな危険地点をマークしてるのではないでしょうか?」


 成る程、ヒポハスの意見は的確に見えた。


 俺は頷いたがハンニバルは首を横に振って地図を指差した。


「いや違うな。それならここもマークされてないとおかしい」


「確かに…。それならこのロードロードさんのマップは……確実な雪崩を予測してるということでしょうか?」


「……そうとも言えるかもしれないが、雪山……雪山……」


 ハンニバルはマップから目を離しじろりと雪山を睨んだ。


「恐らく、異世界転移者……シモ・ヘイヘと罠だな」


「シモ・ヘイヘ!?」


 確かフィンランドとか言う寒い国の英雄だった。だからまぁ、雪山から彼を連想するのは理解できるが。


 ハンニバルは凄まじいスピードで自前の地図に色々と書き込んでいく。


 罠、か。


 そりゃそうだ。国境に警備兵もいないなら、警備兵を置けない様な罠を配置してるに決まってる。


 何を思ったのか、ヒポハスが雪玉を作り始めた。彼は石を詰めてサッカーボールくらいのサイズにする。


 俺は彼を不思議に思い、軽く質問した。


「ヒポハス、何してんの?」


「そのマップに描かれているところに攻撃してみようと思いましてね」


「攻撃?」


「はい」


 ドン! という大きな音。


 ヒポハスがサッカーボールくらいの雪玉を蹴ったのだ。蹴られた雪玉は真っ直ぐに俺の地図に表示された場所に激突した。


 すると。


 水色の魔力が出現し、巨大な氷塊が細い槍の様になって周囲を攻撃した。


 あそこにいれば、被害が出たことだろう。


「……罠、あったな」


 俺の言葉にヒポハスが頷く。


「ロードロードさんのマップのお陰ですね。あとハンニバルさんの警戒心。お二人に感謝です」


 成る程。


 このまま進行した場合、この赤い三角形が表示された箇所を避けて進むしかないな。あるいは事前に潰すか。


 俺は改めて地図を確認する。するとーー赤い三角形は数千倍程の数に増えていた。

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