毒沼近くで道テイム
「気をつけろよ」
と言うハンニバルが行軍の先陣を切っている。
俺はブーケに運ばれて移動。というか、序列持ちは殆ど前にいて進んでいる。後ろ側にも強力な戦力を配置しなくて大丈夫だろうか?
「何に気をつけるっていうんだ? ぶっちゃけこの面子なら多分苦戦しないだろ」
死者転生は出来るし、何より俺のエナジーは溜まってる。これで苦戦するとは思えない。
それに……俺の道テイムは対人間との戦闘において、むしろ城攻めとか市街地での戦いでこそ真価を発揮しそうだ。
防御より攻撃のが道テイムはえげつない。
もはや大体の敵なら圧倒出来るだろうな。魔物とかも……始祖リリスやドラゴンロードとかだけ気をつけていれば勝てるだろうし。
ハンニバルとは一緒に戦ったことないが、彼はどこまで俺の力を知っているのだろう。
というより、ろくに打ち合わせしてない。
もしかして……あまり知らないのだろうか?
ハンニバルは真っ直ぐ指を指す。俺はその方向をじっと見る。遠くに黒い何かがある。何だ、あれは。
「この近くに毒の沼地がある」
「ほう」
「もうすぐ見えるぞ」
ハンニバルが言ってから数十分ほど歩くと、そこに行き着いた。
汚い沼はどす黒い色に染まっていてごぼごぼと煮えたぎっている。しかも、湖のように大きい。
邪悪な魔力も流れてる感じがして、沼に触れれば俺でもただではすまなそうな感じだ。
「何だ、ここ……」
俺の疑問にハンニバルが答える。
「元々湿地帯だったのだが……エルティア王国が最近毒物を投げ込んでこのようにしたのだ」
「成る程……」
「ここで何か強力な魔術道具でも作ろうとしていたんだろうな。迂回しても雷が激しく鳴り響く高原を行くことになる。最短経路はここしかない」
ハンニバルの言葉に、むっとした顔のブーケが反発する。
「あの……毒の沼地を突っ切れって言うんですか?」
「おいおい序列三位殿。そんなの人間でも出来る人達はいる。それを……無理だって言うのですか? 皆さん、魔物ですよね? 飛んだりすればいいじゃないですか」
ぶっちゃけ、レギンとかは飛べるだろう。しかし……どう考えても幅一キロくらいある。普通に渡ればダメージは免れないだろう。
つまり、俺の出番だ。
「道テイム」
俺は道を作る。素材は土。沼地を真っ二つに割るように大地が盛り上がり、谷のような道が出来た。
魔王軍の殆どが沸き立つ。
「道さん、すげえ!」「ロードロードさんがいれば、どこだって行けるようになる!」「道さんが来てくれてよかった!」「うおおおおおおおお!」
魔王軍の奴ら、俺を褒め過ぎだろ。
へへへ。
そんなに喜んでくれるなら、道テイムしたかいがあるってものだ。
ハンニバルは一人ぽかんと大口を開けて、驚いている。
「ば、馬鹿なロードロード……お前は、石畳を整備するだけじゃないのか? 死者を蘇らせるのは知っていたが」
「あぁ。身体強化や治療とかも出来るぞ」
「……凄まじいな」
ハンニバルは俺をじろじろ見る。
「……ここは、渡るのに三時間くらいかかると思っていたが」
「一時間で全軍渡れたな」
「……」
ハンニバルは呆然と空を仰ぎ見ていた。
「ロードロード、お前、凄いな。俺はここを渡るなら、失明とか腕を切り落とす覚悟さえしていたってのに無傷で通れるなんて……完全に想定外だ」
「あぁ。そんな必要なくて良かったな」
ハンニバルは少しして、きりっと引き締めた顔になった。
「……だが次は大変だ。極寒の雪山を越えていかないといけない……見ろ。あの標高三千メートルを超えた雪山が俺達が進むべき場所だ」
ハンニバルが指差した場所、そこには聳え立つ山脈がある。成る程……確かにこれは雪を素材としても大変なことになりそうだ。
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