魔王「ロードロード、ゴブリン退治に行ってくれ」
俺はレギンと雑談しながら広場から移動、今日も魔王城の大広間で魔王に挨拶。
「おはようございます。魔王様」
「おはよう。ロードロードよ、余は満足じゃ」
魔王ガンダールヴが俺に満面の笑みを向けてくる。上機嫌らしい。
「道よ。お前のこと、ケンタウロス部隊が……いや、兵站部そのものが感謝してるぞ」
「どういたしましてです」
「余もお前に感謝している。それにケンタウロス達と気持ち良くてもお前のことを踏みつけたりしない、というのを確約した」
魔王は俺に気を遣っているようだ。侮蔑の態度など微塵もなく、それどころか労りを感じる。美少女ケンタウロス達には踏まれたいんだが、それを言うのは藪蛇だろう。
「それは嬉しいです。ありがとうございます」
「当然のことをしたまでだ。北部と西部の道を急いで整備して欲しいんだが……その前にレギンとスレイブと一緒にゴブリン退治に行ってくれないか?」
西部の道、か。魔王城は国の中心に位置してるってレギンにさっき聞いたな。その内、東や南もお願いされるんだろうな。
「ゴブリンって魔物だろ? 仲間なんじゃないのか?」
「……奴らは人間中心主義の国、エルティア王国……敵国側についた可能性が高い」
「何!?」
種族間や政治のごたごたとか巻き込まれたくないな。日欧米どころか大体の国でこの手の問題、巻き込まれたくない。
「このままでは、まずい。ゴブリン達が一緒に攻めて来ると我々は二方面作戦をすることになる。異世界から転移してきたジャンヌという奴が我が国に入ってきたという情報もある」
「ジャンヌ、か」
昨日レギンが言ってた転移者か。会ってみたいが戦場で会うのは嫌。
「緊急でゴブリン達への対処と情報収集をして欲しい。ロードロードよ、お前への護衛にはレギンとスレイブを付ける」
どちらも知っている顔だ。というか、俺を魔王城に連れて来た二人だからな。
「どちらも強い。我が魔王軍において序列六位と七位でもある」
「レギンとスレイブですね。序列一桁の内二名も強い俺に付けてもいいと」
「お前を失うわけにはいかん。そして、お前の力がどれだけ戦闘向きか試して欲しいのだ」
え、ちょっときな臭い。俺、戦闘に参加させられるの?
「……もしかして、何ですが」
「何だ?」
「俺って戦争に駆り出されたりしますか?」
「……すまないが、それを考えている。嫌か?」
「そりゃ、まぁ」
俺の回答を聞いた大臣やレギンの顔が真っ青になる。
魔王は躊躇いがちになりながらも俺に向かって話す。
「実は我が国エヴォルは戦争中だ。人間の国であるエルティア王国とな」
「……」
それは知っている。だが問題は、なぜ来たばかりで因縁などない俺が参加させられないといけないのかと言うことだ。石畳を直すって言う日雇い大工みたいなのは良い。だが、傭兵となれば話は別だ。
死ぬかもしれないだろ。
「ロードロード、お前に協力して貰いたい。受けてくれないか?」
「えっとですね……」
エルティアってのはレギンも言ってた国だな。戦争とは物騒な状態だ。
人間って言っても良い奴も悪い奴もいるから、ジャンヌが良い奴か悪い奴か分からない。
それに俺は元人間。魔王達が人間の敵なら、俺は魔王達といつか敵対することもあり得る。
でも、俺は今魔物なんだ。
元人間だとしても、今魔物という理由で殺されてもおかしくない。それなら俺は……『今のところ』は魔王達に味方しないとな。
「取りあえず、考えてみます。俺も自分の命は惜しいからインフラ整備は兎も角、出兵はご遠慮したいんですけど」
「ありがたい。余もお前を失いたくは無い。お前の能力が戦闘に不向きなら、他の国への亡命を手配してやる」
魔王はどうやら俺の命を保証してくれるらしい。勿論、どんな国に送られるか分かったものではないが、俺を殺そうとかは考えていないようだ。
「お前は工兵として素晴らしい。直接戦わなくても石畳の整備をしてくれるだけで凄くありがたいのだ」
「あぁ、そういうことですね。命の危険がないならお受けします」
それを聞いて、魔王も大臣も苦笑し、レギンは固い真顔になった。まぁ、そりゃ戦場なら命の危険はあるか。
取りあえず俺は目先にある魔王の任務を受託して、レギンに運ばれてスレイブが待っているという北の村へと移動することになった。
つっても俺はろくに動けないので、いつも通りレギンに担がれて運ばれる。
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