新魔王は旧魔王に勝利する
「……道テイム!」
俺はどんどん地下にある魔力の流れをテイムしていく。
無限にも思えた莫大な量だが、地下三千メートル程度の深さでありそこまで深くはない。
横幅は直径四十キロ程の様だ、そこそこ広いと言える。
魔王城地下に魔力の道があったとは驚きだ。
そしてそれを道テイムしたら魔王になったというのも驚きである。
俺は魔王を何気なく見る。
彼は呆然と俺を見ている。
「ろ、ロードロード……それだけの力を持って、お前は何をするつもりなんだ。世界を滅ぼすか? それとも……平和を望むか?」
俺はふっとほくそ笑み答える。
「どっちでもねぇよ。俺は好きな人のパンツ見て笑うだけさ」
数秒の間。
真顔だった魔王は突然わなわなと震え出し、怒りの顔になった。
「この……ふざけた野郎だ」
「俺の主張は一貫してる。世界平和とか戦争とか興味ねえ。好きな人と恋愛して、パンツ見る。それだけだ。まぁ仕事としてシルクロードはやるけどな」
「その主張がそもそもふざけてるっつってんだよ、この道野郎!」
魔王は再び俺に木槌で殴りかかろうとする。
やれやれ、俺の道テイムと魔王の鍛治テイムなら出力も速さも俺のが上だ。
焼石に水。
……魔王ガンダールヴに、新魔王ロードロードが引導を渡してやる。
「道テイム」
「ぐはっ」
ガンダールヴの筋繊維がぎゅっと縮まる。道テイムで彼の筋繊維を操作したのだ。
俺の道テイムは人体を流れる血管や神経や筋肉などを自在に操作出来るまでスキル練度が上がってる。
苦しそうな顔でガンダールヴは胸を抑えて倒れ込んでいった。
「道野郎……世界平和を目指さないなら、お前は余の敵だ」
俺は余裕たっぷりで笑顔を彼に向けた。ドワーフロードの顔が引き攣る。
「魔王ガンダールヴ、俺を雇用してくれたのは感謝する。しかし……この刻印情報による洗脳は大間違いだ」
俺は窓に近寄り、エヴォル国民を見る。
基本的に手の甲だが、体のどこかしらに刻まれた青い印が彼等彼女等にある。
あれでエヴォル国民は何かしらの洗脳をされているらしい。
「ロードロード! 余がやっているのは正義そのものだ。お前がいた人間の世界を守る行為でもある!」
知るか、そんなもん。
相手にされなかった俺は、相手にしてくれた恋人の為に生きるんだよ。
「道テイム」
俺は刻印情報を道と捉えて道テイムする。
それは霊脈をサーバーの様に使って国民を洗脳していた。
道テイムして情報を保存しつつ、俺は洗脳と思われる機能を解除していく。
そしてその作業はすぐには終わらないものの、国民の一割程度は十分で終わった。
ドン!
魔王城の石扉が開く。
するとそこには、ボロいフードを被ったオッドアイのオッサンがいた。
彼の頭には角が二本生えているのでオーガ族だろう。彼は冷や汗をかいて俺と倒れ込んでいる魔王ガンダールヴを見る。
……見覚えは無いはずだ。だが俺はふと見た覚えがある気がした。
既視感、見てないはずの既視感が俺に起こる。
「村長ハンニバル、くそ、洗脳が解けたか」
魔王の言葉で、俺はふと気づく。
そうだ、目の前の男はかつて北の町で会った男だ。
村長。魔王軍序列八位。そして異世界転移者だと言う。
彼は眉を顰め、俺を見て聞いた。
「ロードロード……君が、魔王を倒したのか?」
「あぁ、そうだ」
俺は頷く。すると村長は魔王を見て絶句した後、溢れる様に言った。
「彼の魔王城で? 信じられない……」
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