【魔力】
目が覚めた様に俺の視界は変わった。俺は魔王城の最上階にいる。
魔王や俺の位置取りは変わってない。俺と小賢者本体の会話はまさに一瞬の出来事だったわけだ。
「馬鹿な、鍛冶テイムが無効化された、だと!?」
魔王の驚く顔。
……俺自身驚いた。自分の体に流れる魔力をより感じ取れるようになっている。
魔王城に流れる魔力の『道』が見える。
これなら……いける!
「道テイム!」
俺は道テイムをして、魔王城に流れる魔力を支配していく。
魔王ガンダールヴが絶句し、俺をガン見。
「馬鹿な、我が鍛冶テイムを……乗っとるというのか!?」
ソロモン王の知恵テイムさえ打ち勝った俺だ。それより格下の魔王ガンダールヴの鍛冶テイム如き、簡単に打ち勝てるはず……と思っていた。
が。
「何だ、これは……」
尽きることのない無限の魔力。
そうとしか言い様がない程に膨大な魔力が、魔王城に流れている。
これを道テイムしきるのは流石に無理だ。
「……嘘だろ」
そして、俺のエナジーが尽きる。
万策尽きた。
「……っふ」
取り乱していた魔王ガンダールヴは勝ち誇った笑みを浮かべる。
……俺は、負けたようだ。
ソロモン王に打ち勝ったが、目の前のドワーフロードに、負けたのだ。
「ロードロード、貴重な戦力として有効活用してやる。お前がいれば……いくら死んでもどうせ国民は生き返る。平和外交も防衛のみの軍事行為もやりたい放題だな」
嬉々として笑顔で語られるのは、狂った内容。
ふざけんじゃねえ、こんな奴に負けてたまるか。
何か、何かないのか?
俺はふと気付いた。
【ロードロード】
何だ、小賢者分身、今忙しい。
【収納スキルがあるの、忘れてませんか?】
収納スキル? そっか、石材とか木材を収納できるんだっけ?
【はい、星を全て収納することも可能です】
え、怖すぎなんだが。
【星を収納するなら道テイムする必要があります。今回は不要です】
……つまり今すぐ出来るってわけじゃないのね。使い道もないし。
【でも、その……今、道テイムした魔力が凄い量たまってます】
?
【魔力をエナジーの代わりに使うことが可能です】
え、そんなことできんの?
【はい】
何で言ってくれなかったの? ソロモン王との戦いでエナジー無くて苦労したの、知ってるよね?
【今まで獲得したスキルを全て言うと、辞書一つくらいの文量になりますが言いますか?】
いや、良い……必要に応じて教えてくれ。
【はい】
魔力、ね。
俺はパンツを見ることでエナジーを貯めるという魔物だ。……よくよく考えれば、俺の愛しい聖女ジャンヌも魔力を使うことは出来ていた。
ということは、俺も魔力を使えるのだ。
【先ほど、小賢者本体との接触によって得た知識で……魔力の使用が出来る様になりました】
成る程。
じゃあ、やるか。
俺は魔王ガンダールヴをじろりと見る。
かの魔王はにやにやと笑っている。
「鍛冶テイム!」
茶色い魔力が再び俺の体を駆け巡る。
なら、対抗するまでだ。
体内に流れる魔力に、意識を集中……収納した魔力を使うイメージをする。
さらさらした砂のようなもの、それを一気に燃やすような感覚だった。
エナジーに近い感覚、これならいける。
「道テイム!」
俺は自分自身にかけられた茶色い魔力を――支配する上書きを開始した。
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