令嬢、幼馴染みをゲットする
本日2回目、今回ちょっと少なめです。
ブクマありがとうございます!(*´∀`*)♡
その日、昼食を食べ終えたレティシアは実験のためにスライムの魔核を採集しに領地内にある森の中に入ってた。
この森の中には何度も入ったことがあるので、もうすでにここは私の第2の庭と化しているのだ。
いつものようにテデラの木を目印に、貴重な薬草の群生地がある綺麗な泉を目指す。
「ーーう、うわぁぁぁあああああああッ」
少年と思われる子供の悲鳴が聞こえてくる。
この森はレティシアにとっては楽園のような場所だが、何も知らない子供がなんの対策もせずに入ってきて、魔物と遭遇せずにいられるほど甘い森ではないことも知っていた。
ここは助けてあげるべきだろう、と声が聞こえた方角に走っていく。
この森に生息する魔物はとくに危険度が低く好戦的ではないため、自分から攻撃さえしなければほとんどの確率で見逃してくれる。しかしその子供はおそらく魔物が初見ですぐに攻撃とみなされる行動をとってしまったのではないか、と当たりをつける。
走っているとようやく一人の小さな少年と猪タイプの魔物のつがいが二匹見えてきた。
少年はレティシアと同じくらいの年齢だろうか、涙目で頭を抱え込みしゃがんでいる。
レティシアはあと数十メートルの所まで走ると二匹を刺激しないように歩いて近づく。足で踏んでしまった枝のパキッという音とともに二匹がこちらに気づくが、警戒する様子のない魔物たちに少年が驚く。
「だ、だれ?」
少年の質問に顔すら向けないレティシアは、二匹と目を合わせたままだ。
まるで対話するかのように。
ずっと目を合わせたままそらさない。
「驚かせてごめんね、この子も敵意はないよ」
ふとレティシアが口を開くと、魔物たちは数秒少年を見つめたあと興味を失ったようにふいと後ろを向き、森の奥に帰っていく。
気分はナウシカだ。ーーちょっと楽しい…
しばらく、沈黙が続く。
そして少し時間がたった後、やっと緊張が抜けたように少年が深く息を吐き出すとへたへたと座り込んだ。
「こ、こわかったぁ〜〜〜〜〜!助けてくれてありがとう!
ーーねえ、君ってこの森にくわしいの?」
「えぇ、まあそれなりに…詳しいとは思う、けど?」
久しぶりに知り合い以外と話すのでペースがつかめないながらも会話を続ける。
「スライムのかく?が欲しいんだけどばしょって知ってる?」
「うん、よかったら案内するけど…、君、名前は?」
少年はキョトンとした後ニパッと笑う。
「ぼくはニキルだよ、ニキって呼んで!」
「私はレティだよ、よろしくねニキ」
えへへ、と笑って照れるニキルを案内するために歩き出そうとしたら、ニキルがついて来てないことに気が付き、理由に察しがついたレティシアはしょうがないとでも言うように苦笑してニキルに近づき腕を引っ張って立たせてやる。
「あ、ありがとう…」
恥ずかしそうにテレるニキルと手を繋いだまま歩く。
ーー幼馴染み一人…ゲットだぜッ!(ガッツポーズ)
◇ ◇ ◇
《 ニキル目線 》
ぼく、ニキルは手を繋いだまま前を歩くレティをこっそりと盗み見る。
初めてこの女の子を見たときはとてもびっくりした。
零れそうなほど大きくて、輝くエメラルドのような瞳に影を落とすほど長いまつげに、薄く色づいた頬、ぷくりと膨れる唇はなにより愛らしく、波打つようなハニーブロンドの髪は太陽の光を反射して妖精のような幻想的な雰囲気を醸し出している。あまり表情が豊かではないのであろうその無表情は可憐で儚げな魅力をより引き立てている……。
一言で言い表すなら…天使、妖精、精霊…
神が作った至極の作品のようなその美貌にニキルはしばし見惚れる。
(かわいい…)
あまり特別可愛い子というのを見たことがないニキルでも、この可愛さがこの世界に何人も存在するレベルではないということはなんとなくわかる。
ただ、とりあえず可愛いのだ。
可愛すぎるのだ。心配になってしまうくらいに。
初対面でもこの子を一生守らなければ、と思うくらいに。
ここでニキルは初めて形容しがたい焦りを覚える。
本人には無自覚ながら、
ーーこれが、少年ニキルの初恋であった。
4歳児がイノシシを追い返す、絵面が凄いね…