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この令嬢には、秘密がある。  作者: 誤魔化
英雄編
11/15

3つ目の秘密

2章に入りましたので、ここからだいぶ過去話続きます。






 「ーーレティシア嬢、今日はもう帰るのかい?」



 大図書館にて、今日この日もレティシアとユークリッドは一緒に本を読んでいた。

 本日、ニキルは先に孤児院に行っているので不在だ。暗くなっても孤児院に来なかったら迎えに来るとは言っていたが。



 「ええ、用事を思い出して…」


 嘘だ。レティシアはもともと用事がないことを承知の上で閉館まで居座ろうとしていたのだ。昼前の太陽がまだ高い時間帯に急に立ち上がり帰ると言い出した理由は他にあった。




 (ー精霊たちが騒がしい……)


 精霊王の血をひくレティシアには普段から大気中に大量な精霊たちが見える。環境によって色や特性が様々なこの子たちは、比較的人間が好きな子たちで、常に我々を見ているため情報収集や知識、諜報には何かと便利な存在だ。いつもなら多少騒がしかろうと毎度のことなので全く気にしないのだが、今回はいつもと少し違った。


 全く毛色の違う子たちがいくつか混ざっていて小さな混乱状態にある。地域や属性が違っても普通ならここまで互いに拒絶したりはしないものなのだが、何故か互いに争うようにして対立している。


 そのうちの一匹がこちらにフヨフヨと近寄ってくる。


 ーーどうやらその変わった精霊たちは私に用があるらしい。疑問に思いながらもちょうど部屋から出て扉を閉め一人になった状態だったので話を聞いてみようと声をかける。



 「どうしたの…?」


 その精霊たちがレティシアの周りを取り囲んで思念を送ってくる。


 なにやら今すぐ付いてきてほしい場所があるのだとか。この大図書館の敷地内だからすぐだよ、とか言ってる。


 「ん、わかった…行くから案内してね」


 レティシアは特に悩むこともなく了承する。何か事件が起きたとしても危うげなく解決できるだけの実力は持っているし、判断を誤ることもないだろうから。







 〜 〜 〜 〜 〜 





 案内され歩きながら疑問に思う。


 ここは中央棟でも貴族棟でも東西南北それぞれの棟でもなく、一般に知らされていない特別な場所だった。調度品や細工、彫刻など全てが一級品で揃えられていて、いかにも高級な物しかないわりには警備兵どころか人っ子一人見あたらない。


 それどころか、何故かその建築様式には見覚えがあるような気がして気味が悪い。




 これらは一体どこで見たのか…、廊下では真っ赤な絨毯が、鈍い光沢をはなつ白い大理石によく映え、照明は豪華なのに細工は細かく繊細で、並ぶ六柱の天使はまるで生きているかのように笑みをたたえている。


 その全てが既視感を生み、不安感とどうにもやるせないような…そんな気持ちが湧いてくる。


 そんな丁度品の中でも一際目を引くのが、8対の翼をもち剣を掲げた天使。瞳は閉じられ能面のように無表情な顔は、額にある3つめの瞳が優しげに細められていることによって印象を変える。


 それによって浮かんでくるのは鮮烈な”赤”のビジョン。




 (ーーああ、思い出した…。ここは、この場所は()()()()の……)



 無意識のうちに記憶の隅に追いやっていたものが、激しい頭痛と吐き気とともに押し寄せてくる。


 (イヤだ…やめてくれッ)


 あの記憶はもう思い出したくないんだ、俺の心が壊れてしまう前に…頼むから!と頭を掻きむしっているとボロボロと涙がこぼれ、嗚咽が止まらなくなる。過呼吸どころではない。酸素を必死で求めているのに、一向に自らを苦しめ続けられ、世界の全てに拒絶されたような気分になる。


 レティシアの…、否、この男の3つ目の秘密が暴かれる。



 なんとか前を向く余裕が一瞬できた時、ただでさえ危険な状態の身体にトドメを刺すほど衝撃的な光景がレティシアを襲う。







 ーーそれは一つの絵画だった。



 扉ほど大きいこと以外には特になんの変哲もない一枚の絵。しかし描かれている内容がレティシアの強い動揺をさそった。


 濃紺の瞳が美しく、たくましい身体に豪奢な衣服を纏い大剣を掲げた30代ほどの男性と、その横に穏やかな笑みを浮かべ寄り添うようにして腰掛けているとても美しい女性。

 しかしこの女性は珍しいほど鮮烈な”赤い”髪を結っていて、同じく希少なはずの黄金の瞳を持っていた。


 題名だろうか…絵の下には『の英雄と戦乙女』の文字がある。



 (なんで、なんでこれがここに……まさか、いや、でもそんなはずはないのに、あの世界はこことは別のはずで…)



 頭の中に浮かんだ憶測を必死で否定しながら困惑し、止まることを知らない涙を押さえつけるように、顔を両手で覆い頭を振る。





 どんなに押し込めようとしても、一度からめとられてしまえばもう…それは呪縛のように魂をむしばむ毒となる。





 (ーーー■■■■■■■■、すまない…愛してたんだ……)



 叶うなら、君に隣で笑っていて欲しかった。


 叶うなら、君に戦争のない空を見せてあげたかった。


 叶うなら、君を抱きしめてキスをしてもう一生離さないからと愛を囁きたかった。


 でも、すべてはもう遅くて。だって君と過ごした時間からはもう3000年も経っている。


 救ってあげられなくてごめん、守ってあげられなくてごめん、



 俺は、君のために……







 様々な感情、後悔が脳を締め付けるように溢れ出し思考がぐちゃぐちゃになってしまう。


 限界が近いことが嫌でも分かる。











 ーーこの令嬢の3つ目の秘密、かつての英雄の記憶。


 レティシアが持つ”前世の記憶”は日本人だった頃の一つではない。3000年前に傭兵から大陸を統べる王へと成り上がった、最も過酷な運命を背負った英雄王。それもまた、もう一つの人生なのだ。




 思考が悲鳴をあげ、身を守るために気絶という選択肢を取ろうとする。






 「ーーっ、ーーーアストランティア……」


 しかし、無意識のうちにかつて愛した人の名前を小さく口にし、レティシアの意識は暗転した。











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