表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この令嬢には、秘密がある。  作者: 誤魔化
英雄編
10/15

兄弟設定は無理がある…

2章入りました!


初登場キャラ、二人…






 時は流れてそのまた一年後、もう毎日の日課となった冒険者活動をしにレティシアとニキルはギルドに来ていた。



 この一年表立って変わったことは特になく、孤児院にも大図書館にも二人で通い続けている。強いて言えばニキルがCランクにレティシアがAランクに冒険者ギルドランクが上がったくらいだろうか。


 もうすぐ7歳になる二人は、最近ランクが上がったこともありギルド内ではある程度の地位は確立されている。今のように人がごった返しているギルド内で暇つぶしに談笑していても、二人のことを把握している者たちは邪魔だとつっかかって来ないし怒れもしない。この二人に実力で敵うものはごく稀であるし、その行動がいかに身の程知らずで命を危険に晒す行為かを理解しているからである。


 といってもランクが上がれば勝手にこっ恥ずかしい二つ名をつけられるという弊害はあるのだが。


 実際問題として、レティシアの仮面をつけた外見と規格外の実力から『仮面シークレット女王クイーン』や、『死神リトル女王クイーン』だなどと呼ばれている。


 ギルドも正式に認可してしまうのだから救えない。





 しかし、そもそもまだ子供である二人が高ランクであることに最初は疑問を持つ者が多かったことも事実である。レティシアは秘匿されてはいるが精霊王の子で身体能力が高く強いのだが、ニキルは普通の人間。読者もニキルがどうやってランクを上げ、チンピラたちを追い返すほどの実力を身に着けたのか気になるところだろう。


 その理由はこの世界で選ばれた者にだけ発現すると言われている”スキル”にある。


 別に選ばれた者といっても、希少性は普通に低く貴族の血を引いていればよほどのことがない限り大小はあれどスキルは発現する。しかしニキルのように平民の割合が極めて低く、300人に一人といった確立なのだ。


 スキルが発現した者は、どのような事情があろうとも規定の学院に通うことが義務とされ、貧困や親の病気などの理由が認められた場合にのみ特別に授業料やその他もろもろが免除される。もっとも特待生制度やそれに準ずる理由以外で学費の免除がされている生徒は他の生徒の嫉妬や差別を避けるため、最も低い位置として学院内での一定の利益を享受できないという仕組みがあるのだ。


 それらの理由もあいまって、平民にはあまり歓迎された能力ではないからか、近頃報告されずに通学の義務を怠るといった事例が増えている。


 しかし全ての平民に疎まれているわけでもない。魔力をもつ子供は裏社会で錬金術の素材として高く取引されているし、奴隷やオークションで売っても一生暮らしていけるほどの利益となる。ただ国に報告するだけでも、その後見人は王都に居を移すことができるという特権が用意されるのだ。金銭的に危ない地域では子供の取り合いになったりもするし、”スキル持ち”に好意的な人間はわりかし少なくないのだった。



 ーーーそしてニキルもその”スキル”がつい半年前に発現した。スキル内容は『炎雷イフリート』といって攻撃力、破壊力、射程、範囲攻撃ともに優れた、炎と雷をつかさどるものであった。


 ニキルの気性とは真逆な性質をもつこの能力は、案外彼にとって相性が良かったらしく、数ヶ月とも経たないうちに完全に自らの力として制御下に置いていた。もう今のニキルは、Cランク程度の魔物なら危う気なく一人で倒すことができるのだ。


 まあ流石にレティシアには足元にも及ばないのだが…









 「ーーだから、さっさと認めろと言っているだろう!」


 ーーなにやらギルドの受付カウンターの方が騒がしい。


 見てみれば、赤髪の青年を伴った態度のデカい偉そうな少年が騒ぎ立てているのがよく目立っていた。


 「し、しかし規定ではこちらの水晶で身元の確認も兼ねて一度検査をしなければならないと決まっておりまして…」


 「そんなものっ、この俺がいらないといっているのだから、大人しく省略してしまえばいいだろう!」


 どこからどう見てもいいところのお坊ちゃんなナリをした少年は、大層甘やかされて育ったのかよほど身分が高いのか、自らの意見が通ると信じて疑わず、周囲の迷惑も考えないで怒鳴っている。


 おそらく水晶に血を垂らすのが気に食わないのだろう…、たしかに痛い思いなどしていなさそうな印象だ。


 そもそも冒険者ギルドは自由を信条に活動する団体だ。国家権力に縛られず、王侯貴族の登録において負傷や死亡には一切の責任を負わないというルールがある。ギルド内では権力も地位も関係なく実力こそが全てなのだ。


 「で、ですから…!」


 (むぅ……アリアさんが困ってるなぁ…助けにいくかぁ)


 レティシアがつかつかと歩いて近づくのにギャラリーたちは気づいて身を固くする。





 「ーーどうしたの?アリアさん…」


 「あ!サーシャさん…えっとですね……」


 ちなみにレティシアはギルド登録はサーシャという名前でしている。とくになにか意味があるわけではないが、偽名などでは多用しているのだ。


 「なんだ、こいつは…!ーー関係ないやつは引っ込んでいろ!!」


 アリアが説明に困っていると、少年が急に割り込んできたレティシアに命令する。


 「ーーあ?」


 ガキに生意気な発言をされてムカついたレティシアはつい調整もせず殺気をだしてしまう。気づいた頃には周りは静まり返っていて、至近距離で殺気を浴びた少年やアリアは玉の汗を吹き出しながら心臓を押さえしゃがみこみ、少年の後ろに控え今の今まで黙って静観していた赤髪の青年は反射で剣の柄に手を添えたまま固まってしまった。


 周囲のそんな反応によって少し冷静になったレティシアは静かに二人を諭す。


 「君、発言には気をつけなさい…身の程知らずは痛い目を見るよ。

 ーーそれから後ろのニーチャンも…いい加減に無礼だと気づきなよ、いい年した大人がさ。」


 そう言ってアリアさんの背中を優しくさする。説教を垂れながらもその視線は興味がないといいたげに二人を無視し、ただアリアにだけ心配気に寄せられる。


 「残念ながら私は関係なくなんかないよ、今はギルマスとサブマスが不在だから、この場で最も高いギルドランクを持っている私に決定権があるの。あんたたちの処遇は全て私に一任されているのよ。」


 やっと恐怖が落ち着いたのだろう…少年は立ち上がり無謀だと理解もできないのか、また吠える。


 「はっ、お前は子供だろう!…どんな手を使ったのかは知らないが、強さだってたかがしれてる!誇りある王宮騎士には勝てんさっ

 ーーおいっベルン、こいつに真の強さを教えてやれ!多少怪我させてもかまわんッ!!」


 そういって赤髪の青年にビシッと指を向けて命令を下す。


 「えぇ〜とですね…、でんk…坊っちゃん、おそらく私では勝てませんよ……?」


 「なに…!?貴様それでも騎士か!!!?主人を守らずしてどうするッ!」


 「一応私の主人は貴方ではなく貴方の父上ですが……それ以前にここでは私が戦うよりも土下座して謝ったほうが坊っちゃんを守ることに役立ちそうです。」



 おそらく後ろの青年はレティシアと自分の実力差をおおよそながら理解したのだろう。少年の命令には従わず、無理だという姿勢を貫いている。


 「そ、そうなのか!?ーー剣聖と呼ばれていたお前でもか…!?」


 「ええ、おそらく手も足も出ず負けてしまいますね…」


 まじか…と素直に受け取った少年は旋律する。






 「(ーーなら、どうすればいい……?)」


 「(まずは謝るのが無難では?それからどうか許してくれとお願いするのがいいかと。

 ーーそれと補足するなら、剣聖と呼ばれていたのは私の父であって私ではありませんよ、私など父に比べれば凡人です。)」


 「(え、そうなのか…?)」


 こそこそと小声でささやきあっていた二人は話が一段落するとこちらを向いて口を大きく開いた。




 「ーーおい、お前っ!すまなかったな!」


 (((((((((ーーは…?)))))))))


 青年を含めた少年以外の全員が目を点にして耳を疑う。ある者はアイツ終わったな、と目を伏せ黙祷し、ある者は巻き込まれたくないからとそそくさとギルドから退出し、またある者は次に起こる状況を予測して賭けを始めた。


 「(でn…坊っちゃん!それでは喧嘩を売ってるようなものですよ!!)」


 「(ーーなに!?ダメだったか…?)」


 「(貴方はどうせ人に謝ったことなんてないんでしょうから、…余計なことは言わずに一言迷惑かけて御免なさいと言えばいいんですよ!!!)」


 「わ、わかった…」



 それから少年はキリッと前を向き、覚悟を決めたように口を開く。


 「ーーめ、迷惑をかけてゴメンナサイっ!!」


 一言一句教わったまま、何故かカタコトで謝る少年に周囲はキョトンと静まる。


 二人は今までの会話を小声でしていたからレティシア以外には聞こえていなかったのだが、あいにくと聴覚も人外なレティシアは聞こえていた会話にこらえきれずといった風に吹き出し、思わず小さく笑ってしまう。


 「っぷふ、まぁいいや…で、結局冒険者登録するの?しないの?」


 これ以上子供に怒ってもしかたあるまい…見た所素直ないい子っぽいし…


 「する!!」


 その元気な返事にレティシアは小さく笑みを作って、周りを見回し大声を張り上げる。


 「ーーみんな〜〜ッ騒がせてごめんね!!!

 それからアリアさん、迷惑でしょうけどこの人の登録お願いできますか?ほんとにすみません…」


 アリアに申し訳なさそうに謝ると、貴女が謝る必要なんてないのに、と慌てられる。


 「いえいえ!仲裁してくださってありがとうございました!!」






 (ふぅ、一件落着かな…?)


 「あ、そうだ後ろの貴方はコイツのお供?登録はどうする…?」


 赤髪の青年はおそらく少年の護衛だろうが、登録はするのだろうか…同じ冒険者になるのならば一緒にいる理由として十分なものができるし、危険にすぐ駆けつけることができるだろうから。



 「ああ!私は…えっと兄です!!」


 「はぁ…!?お前が兄だと??」


 「ええ、兄です!ですよね、ウィル????俺は兄ですよね!!!」


 話について行けていない少年と、不自然な歳の差を庇える設定をなんとかつけようと頑張っている青年は話が噛み合っておらず、あたふたとまた騒がしくなっている。


 (ーーこいつら…、口裏合わせもしていないのか…流石に兄弟設定は無理があるだろう…)


 兄弟という設定を貫くには、流石に今までの会話が不自然すぎた。というより俺という一人称が酷く似合っていない。


 

 「はぁ…、もういいよ。それで登録するの?」


 「あ!させていただけると助かります!」


 パタパタと少年の後を追いかけて、自らも登録をしに向かう姿はやはりどことなく姿勢が綺麗で、いかにもな”貴族感”がこれでもかとにじみ出ている。


 (不安だ…こいつら、絶対またやらかす……。)








 ーー今日からの冒険者ギルドはまた一段と騒がしくなりそうだ。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ