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【6月22日更新】オンラインゲーム内で最強お兄様の妹になりました。  作者: 阪 美黎
【Season1】オンラインゲーム内で最強お兄様の妹になりました。

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今ひとたびの 逢ふこともがな

 ヨミに別れを告げられてから数週間。絢音はゲームに手をつけなかった。

 花奏に宥められてなんとか落ち着くことができたが、それでもなぜそれほどまでに動揺してしまったのか、絢音には理由がわからなかった。

 涙が出るほど驚いて、そして……ショックを受けてしまったのか。当の絢音が説明できなかったのだ。

 だから絢音は行動を起こすことにした。

 恐怖心はありつつも、ヘッドセットを手に取り、再びオーレリアン・オンラインの世界へ舞い戻る。

 自分の気持ちに整理をつけるため、絢音は何日もかけて途切れた糸を手繰るように、ヨミと訪れた土地を巡った。

 花奏はいい顔をしないまでも、姉が納得できるならばと付き合ってくれる。

 どこを探してもヨミの姿はなく、可能性を求めて訪れた空中都市エリュシオンに停泊しているはずの飛空艇『アヴァリスの矢』も見当たらず、いよいよ途方に暮れた。

 オーレリアン・オンラインの世界は広大だ。申し合わせていなければ出会うことすらままならないほどに。

 同じ家にアバターを置いていた頃はともかく、接点を失うと途端に彼の動向が全くつかめなくなってしまうとは。

「ヨミさんって本当に雲の上の存在だったんだ。……自分がただの有象無象だったこと、思い出しちゃった」

 かつてフェネックキャットをテイムした湖畔沿いのカテドラルが視界に入る平原でアヤは呟く。

 簡単に出会えるプレイヤーではなかったのだと思い知らされる。

「……もういいじゃん、あんな奴のこと。ねーちゃんが気にしてやる必要なんてないよ」

「…………」

 しょんぼりと沈み込むアヤの横顔を眺めて、花奏ことレイラスは息をついた。

 ヨミに不意に別れを告げられ、傷つき、未練を残している。彼女が納得するまで付き合うしかないが、これからどうしたものか……と考えていると、ふたりに近づく気配を感知する。

「よぉ、妹ちゃんとレイラスくん。ちょっといいか」

 はっとそちらに顔を向けると、イツキが立っていた。思わぬ相手の登場にアヤは声をあげた。

「イツキさん……!」

 ヨミとの接点を失えば、クランの彼らとも接点を失う。……と思っていたのだが。

「会いにきてくれたんですか?!」

 驚くアヤにイツキは苦笑する。

「あちこち探し回ってる妹ちゃんを見てたら、やるせなくなってなぁ……」

 裏でレイラスから猛烈な苦情が来たということもあったが、イツキ自身も事態を把握するのに時間がかり、彼女を遠くから見守るだけになっていた。

「アヴァリスの矢も見当たらなかったので、距離を置かれちゃったのかなと思ってました」

「ああ……飛空挺はこの前、ドラゴンに体当たりして小破しただろ?だから修理に回してたんだが、ノネが無断で改造しようとしてたんで、ヨミが一旦取り上げてんだ。だから俺たちが妹ちゃんを避けてたわけじゃないよ」

 イツキは軽く肩をすくめた。

「ここは目立つ。向こうの森で話そうか」

 イツキに促されて近くの森へと入る。

 木陰が濃い一帯までやってくると、イツキは足を止めた。

「この辺りでいいか。……今日は連れがいるんだ」

「連れ?」

 レイラスが怪訝に聞き返すと、木陰に紛れて魔術師のローブをかぶったダークエルフの少年が姿を現す。

 見え覚えのないプレイヤーにアヤは首を捻る。

「えっと……どなた様でしょうか」

「……おれだよ、元キララ」

 その声音とプレイヤーネームにアヤはハッとした。

「え、キララさん?!転生してたんですか?!」

 かつては獣人少年姿だったが、以前のアバターはもう使えないと別れ際に述べていたので、新しいアバターでゲームに戻ってきたようだ。

「今はアルテって名乗ってる。……けど、今はどっちでもいいよ。ややこしいでしょ」

「……えっと、はい」

 素直にアヤは頷いた。アルテと名乗ったキララはふっと笑う。

「そういうところ、すごくきみらしくていいよね」

「……いや、誰?」

 レイラスは眉を寄せる。彼はキララを知らないのである。

「あ、あんたはキララさんを知らないんだっけ。えっと……」

「おれはつい最近、彼女を人質にしてヨミに嫌がらせをした張本人だよ」

 アヤが紹介する前に、キララが簡潔に前世を説明すると、レイラスの眉が器用にあがる。

「……あぁ、あの祭りの首謀者。その節は姉が大変お世話になりました」

「……レイラスくん。一応あの一件は解決してるんで、穏便に頼むよ」

 さりげなくイツキが間に入ると、レイラスは息をつく。

「いいですよ、俺はヨミを一発殴ってケリをつけてるんで」

「へぇ、あいつを殴ったんだ。……やるじゃん」

 キララは感心したように笑った。

「……ここにキララくんを呼んだのは俺だ。理由は……」

 ちらっとイツキがキララに視線を流すと、彼は頷く。

「妹ちゃんは知ってると思うが、キララくんがヨミの従兄弟だからだ。ある程度、事情に聡いってのもあって来てもらった」

「アヤサンには迷惑をかけたし、おれが役に立つかわからないけど、まあ一応」

 キララが複雑な表情で息をつくと、イツキは本題に入る。

「ここのところずっと、あいつと連絡がとれない。気になってキララくんに接触してみたら、どうやら彼ら家族とも連絡を絶っているそうだ。そこにレイラスくんから知らせが来て、妹ちゃんに島や家の権利を譲渡して姿を消したと聞いた。……これは、いよいよその時期が来たのだと悟った」

 イツキは神妙な顔で述べた。

 アヤと関係を絶ったばかりか、イツキや家族のキララとも連絡を絶っていると聞き、アヤは不安になる。

「……その時期、とはなんですか?」

 彼女の問いかけにイツキは一寸沈黙し、言葉に迷いながら言う。

「……端的に言えば、人間をやめるんだよ」

「……は?」

 アヤは瞬きを繰り返す。

 人間を、やめる?

 突拍子も無い返答にアヤはポカンと口を開けた。

「突飛すぎてちょっと何を言ってるかわからないと思うが、いわゆるポストヒューマンへ至るための実験を自分の体でしようとしているんだ。長年、そのために研究してきた」

「ぽ、ぽぽぽすとひゅーまん?」

 とは、一体??

 理解が追いつかない。

「……イツキさんが頭おかしいわけじゃないよ。本当のことなんだ。あいつは人間の体から、非生物的人間、拡張的身体になるために寝食を惜しんで研究してきた。自分のラボにこもって大学だってろくに行ってない。……まあ、あいつにとって大学は人脈作りと父さんを安心させるために在籍しているだけだから……意味なんかないんだけどさ」

 キララは顔を顰める。

「……あ、あの……すいません。……全然、意味がわかりません。非生物的人間ってなんですか?」

「アンドロイドみたいなもんだ。まだこれもプロトタイプで、製品化なんて夢のまた夢。現状、金額があってないようなスーパーカーみたいな扱いだよ」

 とイツキが答えるが、アヤには伝わらない。

「あ、あんどろいど?SFの話です?」

 ちんぷんかんぷん、とはまさにこのこと。

「……ファナイオスは、シンギュラリティに到達してるってことですか?いやまさか……でも……」

 高嶺遠矢ならば、可能なのか?

 レイラスは目を見張る。教養の高さと神経系の出来が姉と違いすぎる弟は、戦慄を覚えているようだった。

「……きみはうちの会社を知ってるんだ。……そうか、じゃあよくわかってないのは、アヤサンだけってこと?」

 目が点になっているアヤをキララは見つめる。

 アヤの頭上にたくさんの疑問符が見えるかのよう。

 前段なく、予備知識もない人間がこんなことを聞かされたら、思考が停止するのも無理はない。

「こうなったら、ちゃんと説明してあげた方がいいんじゃないですか?」

 キララはイツキに提案する。……まあ、確かにその通りである。

「……ちょっと焦りすぎたな。ごめんな、妹ちゃん」

「い、いえ……すみません、わたしの知識が足りなくて……」

 妙な肩身の狭さを覚える。1を聞いて10を理解できる人間ならよかった。

「いや、そもそも妹ちゃんは現実のあいつを知らないから無理もないよ。現実世界のあいつは、このゲームを運営しているダフネを傘下に持つ、ファナイオスのCEOの甥だ」

 さきほどちらりと弟も口にしていたが、ファナイオスという社名、聞いたことがある。

「ファナイオス……って、えっと、たしか、世界的テック企業ですよね。こ、こんぐまり……?」

「コングロマリットね。ただの甥じゃなくて、実質的にビッグテックにしたのはあいつの手腕なんだ。ファナイオスは、あいつの会社といっても過言じゃないよ。このゲームだって、あいつが集めたチームが作ったんだ」

 キララが補足する。

「……会社ばかりか、オーレリアンも?……と、とんでもない人だった……」

 アヤは驚愕する。親類が会社を経営しているとは聞いていても、そんな大企業だとは思わない。

「そこであいつはある研究をしている。簡単に言えば、人間を肉体から解き放つための研究だ。いわゆる、ポストヒューマンだな。概念として人間2.0とでも考えてもらえればいい」

「……ヨミさんは、研究者でもあるんですか?」

「あぁ、そうだな。あいつは……尋常でない傑物なんだ。誰とも比較ができないくらいに」

 イツキは小さく頷き、続ける。

「脳を完全にデータ化して、アンドロイドのような別の器に落とし込む。するとどうだ、記憶や人格はそのままに新しい体を手にいれることができる。ネットワークを介せば、遠隔操作も可能だ。あいつが身を置いているのは、そういうものへの開発競争だ。これはあらゆる分野で活用ができるし、市場もでかい。だが科学技術はまだその段階には達していない。エネルギー問題も解決していないしな。それをあいつも認めながらも、やらずにはいられないんだ」

「どうして?」

「……知的好奇心。新しい体から見える世界とは、データ化された自分がどんなものか体感したいのさ。……ぶっ飛んでるだろ?」

 イツキは呆れて肩をすくめた。

「状態を安定させるために肉体を一定期間休眠させる必要がある。そのためにあいつ自身が開発した『(コクーン)』という装置がある。脳や肉体がストレスを感じないようにするための揺かご(ベッド)みたいなもんだが、そこに入ればあとはもうプログラムが実行されて、気付いた時にはあいつは『水槽の中の脳』となってるという算段だ。肉体は保存されるとはいえ、あいつは人間としての死を迎えるだろう」

 イツキはアヤを見て言う。

「あいつは失敗を恐れない。倫理の境界を踏み越えることも。あいつを失うことは、世界の損失でもある。でも、そんなことはどうでもいい。俺たちは、ただ……あいつに生きていて欲しいのさ。今はまだ、人間として」

 イツキはやるせなさそうに話し終える。

 だから大人たちの企みに加担した。彼が新たに興味を抱くことができる人間がいるなら、あるいは……と。

 それがアヤだった。そのアヤすら遠矢は遠ざけてしまったわけだが……。

「身勝手なんだよ、いつもいつもあいつは。……前だけ向いて、残されたもののことなんか考えやしない。……天才って本当に迷惑だよね」

 キララは憎まれ口をたたく。しかしそこにある本音は、身内へ情だ。

 ふたりの気持ちに触れて、アヤはようやく混乱して掴めずにいた自分の感情に気付いた。

 心細さ、切なさ。これが何なのかを。今ならば言語化できる。

「……そうか……これは、そうだったんだ……」

「ねーちゃん?」

 アヤを覗き込むレイラスに、彼女は笑った。

「お話してくださった内容は壮大すぎて意味不明なんですけど、皆さんの言葉を聞いて、自分がどうしたいのかわかりました」

 うんと大きく頷いて、アヤは彼らを見渡す。

「わたし、ヨミさんにお別れを言われても、平気だと思っていたんです。ずっと。でも、実際にお別れをされたら……びっくりするほど狼狽えちゃいました。どうしてなのかわからなかったんですけど、今わかりました。それを伝えなきゃ」

 落ち込んでいた気持ちがむくむくと復活してくるのがわかる。希望のようなものが芽生えたからだ。

「でも、ヨミさんに会える手段がまったくないんですけど」

 困ったなと苦笑するアヤに、イツキは一瞬考えるそぶりを見せた後、問いかける。

「妹ちゃん、あいつに会いたいか?拒絶されて傷つくかもしれない。それでも、会いたいと思ってくれるのか?」

「わたしが勝手に会いたいだけなんですから、お兄様の拒絶なんてモーマンタイですよ」

 朗らかに答えると、イツキは頬を緩める。

「そうか、やっぱり妹ちゃんがあいつの妹ちゃんになってくれてよかったよ」

「おれたちも連絡が取れないのに、どうやって天岩戸状態のあいつと繋がるの?まさか、ラボを襲撃するわけにもいかないし……」

 物騒なことを言うキララに、イツキは「方法はある」と笑う。

「ただなぁ、ちょっと……皆を混乱はさせるかもしれない。それだけは、あらかじめ言っておく」

「?」

 3人が首を傾げる間に、イツキは周囲に他のプレイヤーの気配がないことを確認すると、近くの木を叩く。

「おーーーい、全部聞いてたんだろ?出てきてくれないか」

 イツキの謎行動に、今度は3人が怪訝に眉を寄せる。

「イツキさん、どうしちゃったんだろう……」

「……おもむろに木に話しかけてるんだけど、あの人、大丈夫?」

「あれでもイツキさんは医大生だよ。意味のないことはしないでしょ、さすがに……」

 アヤとレイラスとキララが小声で言い合っていると、「聞こえてるよ」とイツキは苦笑する。

 すると、彼の背後からするりと第三者が現れる。

 その姿は、まさに……ヨミだった。

 アヤの心臓が跳ねる。驚きながらも、転がるように近づく。

「……ヨミさん、ヨミさん……!あの……あの、わたし……!」

 ヨミはイツキの横に立ち、静かにアヤを見下ろしているが、すぐに微苦笑を浮かべた。

「……期待させてごめんよ、アヤさん。僕は、今君が求めているヨミではないんだ」

「……え?」

 声も、姿もヨミそのものだというのに、目の前の彼はヨミではないと言う。

「妹ちゃん、こいつの言っている通りだ。ヨミとは本来こいつの愛称だが、俺たちが認識しているヨミじゃない」

「え、で、でも……ヨミさんそのもの……」

 戸惑うアヤの背後からキララはハッとしたように声を発する。

「……そうか、そういうことだったのか。ヨミは、ふたりいたんだ」

 タイミングとして違和感を覚えることは何度かあった。例えば彼が海外へ赴いている時など、当然のようにヨミがワールドにいることもあったからだ。遠矢を補う存在があったのだ。おそらく、独立型AIか。

 キララは腑に落ちた。

「ヨミさんが……ふたり?え?ええ……?!」

 キララの言葉にアヤは混乱する。

 次から次に新しいことが登場して、さらに理解が追いつかない。

「……妹ちゃん、こいつのことはいずれわかる。だから説明を省かせてもらうが、このヨミなら、連れていくことができる。高嶺遠矢のところへ」

「……タカミネ、トオヤ……それが……お兄様のフルネームですか」

「そうだよ。アヤさん、彼のところへ行きたいかい?」

 ヨミと同じ顔、声で尋ねられ不思議な気持ちになりながらも、頷く。

「言いたいことはあります。でもそれとは別にわたし、腹が立ってるんです。お兄様にはお兄様の信念があるのでしょう。でも、急すぎます。ちゃんとわたしにもお別れを言う機会が欲しかった。咄嗟に何も言えなかった自分にも腹が立つ……だから!」

 アヤはインベントリを開き、ヨミに渡されたままになっている、ワールド最強の剣ブリュンヒルデを取り出すとキッと前を見据えて宣言する。

「……八つ当たりに、この手でお兄様を斬る!!」

 誰も想定していないアヤの決意に、全員無言になった後、吹き出す。

「……いや、まさか、そう来るとはなぁ……そうか、斬るか……うんうん……。っていうか、妹ちゃんがそれ持ってたの?」

 とイツキ。

「いいんじゃない、それでギッタンギッタンにして来なよ。あいつもたまには痛い思いしないと」

 とキララ。

「ばっちりRECしておいてよ。俺もあの人が断罪ザマァされるところを見たいし。……で、そのご大層な剣何?」

 とレイラス。

「……では行こうか」

 ヨミに声をかけられて、アヤは力強く頷く。

「はい、連れていってください。えっと……ヨミさん、でいいのかな……」

「うん、もちろん」

 目の前で微笑む顔や声に言葉にならない切なさを感じながら、アヤは答える。

「お願いします!」

「よし。じゃあ、この後リゾート島の屋敷に集合で。待ってるからね」

 と去っていく。颯爽とした姿はヨミそのものだ。

「へ……?え?と、徒歩……?!」

 これだけ盛り上がっておきながら、まさかの現地集合。

「あ、あの……行ってきまーす!」

 拍子抜けしながらアヤは3人に手を振り、海の家へ戻るために駆け出す。

「……漫画とかアニメみたいに、スマートにシュッと消えるとか、そういうのは無いんだ?」

 色々と台無しな気がする……とキララは呟く。

「まあ、ほら……ゲーム的になぁ……それやると、まずいんだろうな」

 イツキは腕を組んで歯切れ悪く答える。

「現実的じゃないですか。……まあ、俺はこっぴどくあいつが振られてくれることを期待しますけど」

 たぶん、そうはならないのだろうな……とレイラスは深くため息をついた。



 ※



 慌てて海の家へ戻ると、すでに玄関先にはヨミが立っていた。

 この家に、ヨミがいるといないのとではまったく心持ちが違うことを気付かされる。

「お待たせしました!」

「そのまま連れていければよかったのだけれど、今の遠矢につながっているルートは限られていてね。行こうか」

「はい!」

 頷いてヨミの後ろをついていくと、かつてのヨミの部屋の前までやってくる。

「……お兄様の部屋」

「うん、ここはまだ僕たちの空間と紐付けされている。……削除(デリート)しなかったのは、遠矢の未練かもしれない」

「……未練……」

 ずきりと胸が痛む。それは、アヤもきっと抱えているものだからだ。

「世界の裏側が見えてしまうけれど、そこはご愛嬌で頼むよ。……さぁ、アヤさん、手を」

 差し伸べるヨミの手に、アヤはゆっくりと預け、重なる。

 ヨミが扉を開く。するとそこは四角い空き部屋ではなく、真っ黒な闇が広がっていた。その闇は、一寸先すらわからない。

「……行くよ」

 ぐいっと引っ張られ、闇の深淵へと落ちていく。振り返ると、よく知っている屋敷はペーパークラフトの世界のように平面に見えた。いや、屋敷だけではない。森羅万象がそのように見えた。

 平面の世界はぐんぐんと遠ざかる。

 どこまで落ちていったのか、闇を突き破って、花園へと至る。見上げれば満天の星が輝いている。

 幻想的な光景だ。

 眩しいものを目にするようにアヤは眼を細めると、声がする。

「ヨミ、どういうつもりだい?こんなものを作り出して。随分と感傷的じゃないか」

 そう告げる背中に見覚えがあった。

 傍らにいる青年と瓜二つではあるものの、明確に違う彼。

 アヤが会いたいと思ったヨミが……遠矢がいた。

「どうしたんだい、黙って……」

 答えないヨミが気になって振り向いた彼は、一瞬目を見開く。

 そして全てを察したように鏡写しの存在に言う。

「……君は、存外おせっかいなんだな」

「いや、皆の総意だよ」

「……そうか」

 納得したように呟くと、遠矢は改めてアヤを見る。

「アヤさん、僕に用事があるのだろう?……言ってごらん」

 優しい兄の口調は変わらない。なんだかたまらなく泣きたくなった。

 会ったら言いたいことはたくさんあったはずなのに、いざこうして当人を前にすると、うまく言葉にできる自信がなかった。ならば、ぶつかるしかない。

 アヤはブリュンヒルデを取り出すと、構える。

「ブリュンヒルデをお返しにまいりました。これは単なる八つ当たりです。お兄様、お覚悟」

「なるほど……僕を斬りに来たか」

 彼が押し付けたブリュンヒルデを捨てることもなく律儀にアヤは所有し続けた。返すと言っても、彼は受け取らず、こうなってもまだ彼女は持ち続けていた。

「君にキルされる覚えはいくつもある。いいよ。……さぁおいで」

 八つ当たりの理由も問わず、遠矢は受け入れるように手を開く。

 アヤはぐっと柄を握る手に力を込め、遠矢めがけて駆け出す。

 微笑んで受け止めようとする彼がアヤの間合いに入った時、彼女は剣を横へと打ち捨てる。

 こんなものはいらない……!

 そして、自由になった両手で体当たりするようにヨミにしがみついた。

「……つかまえた……!」

 ぎゅっと力を込めて、薄い感触に力いっぱいしがみつく。

「つかまえましたよ……!やっとつかまえた!」

「アヤさん……」

 戸惑う遠矢をよそに、アヤは気持ちの赴くままに喚く。

「酷いじゃないですか!一方的にお別れ言うなんて!わたし、たくさん泣いちゃいましたよ!」

「……アヤさん、僕は……」

「わかってます!お兄様にはお兄様のやるべきことがあるんですよね?!イツキさんたちに聞きました!……わたしだって平気だって思ってたんですよ?!お兄様といきなりお別れになっても、平気だって思ってたんです!でも、違ってた……」

 アヤは涙を堪えて見上げる。

「みなさんとお話して、わかったんです。みなさん、わたしと同じだったんです。……寂しいんですよ。でも素直に言えないんです。だからわたしが言います。寂しいんです、今のお兄様と会えなくなることが、とっても寂しいんです……!」

「…………」

「いいですか?!人っていうのは、生身だろうがなんだろうが、ひとりでは生きられないんです!誰かと関わって人は人でいられる。お兄様が人間をやめるにしたって、手順ってものがありますよね?!せめて、生前葬のパーティーくらいして、みなさんからしっかりお小言と恨み言くらいはもらっておくべきです!逆にご香典を巻き上げられてもいいくらいです!何も言わずいなくなられるのは、つらいんですよ?!……わかってるんですか、もう!!」

 論理が飛躍し、おかしな説教をしている自覚はあるが、今のアヤにその理屈を精査する余裕などない。

「……生前葬……」

「そうです!パーティーしたんですか?!」

「……してないかな」

「ほら!しましょうよ!寂しいじゃないですか!どうしても、お兄様が自分の決め事を裏切れないなら……それなら、みなさんに今までのお礼を言ってから、一旦お別れしましょうよ。みなさんにだって気持ちの整理が必要なんです!」

 ぎゅうと遠矢にしがみついて、アヤは我慢できずに泣き出した。

 アバターは涙を流すことがないが、現実世界の絢音は何度も涙を拭う。

 遠矢は黙っていたが、「寂しいか……」と呟き、そして小さく笑って、アヤの頭を撫でた。

「……この説得は想像していなかった。君は意外性の塊だな」

「……お兄様……」

「君は僕を否定しない。どんな姿かたちになろうとも。樹や伯父だって、時間をかければわかってくれるはずなのにね。……焦りすぎたのかな」

「何をそんなに焦っているんですか」

「若さだよ」

「?」

「人間が貴賤の差なく平等に与えられているものは、若さと老いだ。僕はすでに二十歳をこえて、ピークに近づきつつある。今の肉体を最良な状態で維持、活用するなら、あと数年しかない。……あと数年ある、とも言うけどね」

 ふふと笑って、遠矢はアヤにそっと腕を回して続ける。

「また君を振り回したね。でも……会いに来てくれてありがとう。君はもっと聞き分けのいい子かと思っていたよ」

 アヤは気まずい気持ちになる。

「……わたしもこういう自分がいるんだなって、びっくりしました。意外と、わがままだったみたいです」

「……それでいいさ。君は……中庸というより、実は我欲が足りないのだろう?」

 核心を突く言葉にアヤはハッとする。同時に、遠矢はアヤから離れた。

「計画は見直しだな。……僕はしばらく今のままでいることにしよう」

「ほ、本当ですか?!」

「うん、……ほら、生前葬もしていないからね」

 と冗談ごかす遠矢にアヤはふっと笑った。

「やれやれ、これが(ほだ)されるというやつか。……未練とは厄介なものだ。だが、悪く無い気分だ」

「?お兄様」

「まずは、君を泣かせた責任をとらなければね」

 遠矢はアヤに微笑む。

「今日はもうお帰り。……今度は、()()()()()()()

 その言葉を最後に、ぐんとアヤは背中を引っ張られるような感覚と目眩を覚えてぐっと目を閉じる。次には、耳に小波が聞こえる。

「……?」

 瞼を開くと、そこはいつもの海の家、ヨミの部屋の前に立っていた。扉はきっちりと閉じられている。

「おかえりなさいませ、お嬢様」

 管理NPCのミオがアヤを出迎える。

「……あ、あれ……?夢……?ヨミさん……お兄様は……」

「旦那様は現在ご不在でございます。必要とあらば、私がご伝言を承りますが」

 アヤはミオの顔を凝視する。

「……旦那様……?旦那様って言った?」

「はい、島と家屋の契約はアヤお嬢様ですが、連帯としてヨミ様のお名前がございます」

「……っ……!」

 アヤは破顔する。

 夢じゃなかった。さっきまで話していたのは、やはり……アヤの知る、ヨミだったのだ。

 途切れた細い糸は、再び繋がった。

「……よかった……よかったよーーーー!!みんなーーー!!お兄様が戻ってきたよーー!!」

 アヤは屋敷にいる動物たちを呼んで一緒にもみくちゃになる。心からの安堵と共に。



 ※



 心が乱された日々が過ぎて、日常は落ち着きを取り戻す。

 あれからヨミとゲームで顔をあわせることもなかったが、彼のアバターはまたリビングのソファーで転がるようになっていた。だから、アヤは心配をしなかった。立場的に忙しいのだろう、たぶん。


 ある休日の朝、きっちりスーツをまとった花奏が部屋に突撃してくる。

「ねーちゃん、出かけるよ。……着替えて」

「え?……今日、何か予定あった?……あんた、いいスーツ着てるわね。パーティーでもあるの?」

 そんな話は聞いてないのだが。

「母さんとばあちゃんが厳選した着物を用意したそうだから、着付けてもらいなね」

「……き、着物?……そんなお出かけがあるなら、前もって言ってよ。……なんか、堅苦しいのは行きたく無いなぁ……」

 親類関係の何かなのだろうが、正直あまり集まりは得意ではない。絢音がどんなに隅っこで小さくなっていても、目ざとく声をかけてくる男性がいて、そういう人物は見え透いたお世辞で彼女に取り入ろうとする。

「別にさ、俺は行かないでもいいと思うよ。すげぇムカつくし。……けど、行かないとねーちゃんは後悔するかもね」

「……?どういうこと?」

 意味がわからず首を傾げると、花奏に「いいから、早く着替えなよ」と追い立てられるようにして部屋から出された。母と祖母が彼女の髪型を整え、化粧を施し、華麗に彼女を着付けた。

 隙の無いお姫様が出来上がる。出来栄えに満足気な女主人たちはにこにこしている。

「……すごくいい振袖。ねぇ、これ本当に何の集まりなの?」

 着物の質は、集まりの格式でも異なる。これは、最上級ではないか?

「行ってきます」

 絢音の問いかけを花奏は無視して手を引くと、家族が手配したハイヤーに乗り込む。歴史のあるハイクラスホテルに車は滑り込み、エントランスへ二人を運ぶ。

「もしかして、結婚式?披露宴?」

 ハレの日であることは間違いなさそうだが。

「…………」

 姉の問いかけをことごとく無視して、高級レストランの入り口へとやってくる。高校生二人がやってくるには、レストランの格式が身の丈にあっていない。

「……花奏、そろそろ教えてくれない?」

「……わかるよ。すぐに」

 花奏はどんどん不機嫌になっているような気がする。当人は、嫌で嫌でしょうがないというオーラを放っている。

「そんなに嫌な集まりなの……?」

 やだなぁ……と案内されるまま席に座る。

 ……が、おかしい。店の中は誰もいない。まるで、貸切によう。

「……?」

 着席してから不思議な気持ちでずっと首を傾げていると、案内係は別の客を導いてくる。

 何気なく顔をあげてその客に目をやる。

 壮年男性と、若い青年だ。彼らが近づくにつれて、絢音は息を止めて、目を見開く。

 ふたりの前に立ち、「お待たせして申し訳ない」と男性は述べた。

 絢音は立ち上がることもできず、連れの青年を凝視する。

 彼のためにオーダーされたであろう、シワひとつない上質な細身のスーツに身を包み、うっすら笑を浮かべる美しすぎるその人に見覚えがあった。

 酷似している。

 絢音が知る、ゲーム上の兄の姿に、あまりにも……。

 お、お兄様がいる……?!ゲームの世界から飛び出して……?

 これは夢、いえ、現実。現実が、夢?……え?

 混乱して口をぱくぱくさせるしかない絢音に彼は極上の笑みで告げる。

「高嶺遠矢です。……()()()()()初めまして、アヤさん。……いや、藤崎絢音さん」

 ヘッドホン越しに聞く声よりもずっと、彼の声は柔らかく澄んでいた。



 絢音はこの状況が飲み込めず、石化していた。食事も喉を通らず、花奏が愛想よく彼らと会話する内容すら耳に入らない。

 どうにも役に立たない絢音は見切りをつけられ、遠矢と共にホテルの庭園に放り出されたが、錦鯉が優雅に泳ぐ人口池の前で直立不動になっていた。

「アヤさん、そろそろ僕と口をきいてくれないかな。何やらひどく混乱している様子だけれど」

 苦笑する遠矢の呼びかけに、絢音はハッとしてようやく石化が解ける。

「あ、あの……え?お、お兄様……い、いや……まさか!どうやらわたしには拡張現実が見えているようで……」

「拡張現実ではないよ、今の所は。……ほら、触ってごらん」

 そっと伸ばされた手に、絢音はおずおずと触れる。すっきりとした指先にふれると、感触があった。人の温かみを感じた。

「……触れる……」

 絢音の胸はじんわりと熱が宿り、これが現実だと実感を得た。

「じゃあ、本当にお兄様……」

「うん」

「本当の、本当に……?」

「本当の本当に」

 微笑ましげに遠矢は瞳を細める。

 その微笑はゲームで何度も目にしたものと同じ。色彩こそ違えど、彼のアバターはほぼ現実そのままに、虚飾なく造形されていたのだ。

 頭脳、容姿、品格……すべてが完璧超人。しかも世界的企業の立役者で御曹司。欠点が見当たらない。これは一体どんな奇跡的不条理なのだ。全人類への挑戦か(もうホント誰?!100キロ超えのおっさん説流したのは!)。

「お兄様とこうして、現実でお会いする日が来るとは思いませんでした」

「僕もつい最近まではそう思っていたよ」

「じゃあ……あの……どうして?」

 今更のように、妙な気恥ずかしさに囚われる。

 現実的接点などひとつもなかった。ここに遠矢がいること、ヨミ当人がとてつもない美形であるという事実も含めて、絢音は混乱する。

 戸惑う絢音の眼差しに、遠矢は訝る。

「アヤさん、そんなにも可愛らしく着飾っているのに、ここへ来た目的を何も知らされていないのかい?」

「あ、はい……突然出かけるといわれて、支度をしてやってきた感じです。弟は何も教えてくれなくて……」

『行かないとねーちゃんは後悔するかもね』

 花奏は当然知っていたのだ、このホテルに彼が来ることを。

「……素直に教えてくれたらよかったのに……」

「僕へのささやかな嫌がらせだったのかもしれないよ」

 愛想良くしながらも、花奏の目の奥は笑っていなかった。遠矢と話す時だけは。

「実は、彼とは以前あいさつをしたことがあるんだ」

「え?!花奏と?!……そ、そんなことあの子一言も……」

 言いかけて、はたと引っかかりを覚えた。

 そういえば以前、花奏が対抗意識を持つほどの麗人がいたという話をしていなかったか。……それが遠矢ならば合点がいく。

 だとしたら、絢音もその場にとどまり続ければ彼と出会っていたかもしれないということだ。

 とんだニアミスをしてしまったのでは?(なんだかすごく勿体無いことをした気がする!)

「そういうことなら僕が説明しようか。アヤさん、」

「?はい」

「これは見合いだよ。現実世界における、僕と君の」

 さらっと言い退けるので絢音はその言葉の意味を理解するまで少々時間を要した。

 みあい?MIAI?……見合い??お見合い……?!ええ?!

「…………お、お見合い……ですか?!わ、わわわわたしと、お兄様の……?!」

「うん」

「ひぃ……!恐れ多い……!」

 ドン引きするように後ずさると、彼は動じることなくさらに爆弾を投下する。

「両家の利害と目論見が一致して、僕と君はずっと、ゲームの中で見合いをさせられていたんだよ。強制的に出会わせてアイテムで縛り、兄妹という設定をつけた上で互いに興味を抱くのかを。放置した僕にも問題があったが、吊り橋効果でもあるまいに……伯父にも困ったものだ」

「…………え、……え?……えええええーーーーー?!!」

 絢音は声を上げて仰天した。

「アヤさん、君は自発的にゲームを始めたのかい?」

 問われてアヤは思い返す。

「え、えっと……最初は花奏に誘われていたんですけど、オンラインゲームの人間関係が怖くて断ってたんです。でも、仲のいい友達に紹介キャンペーンの特典が欲しいからと登録を頼まれて……それで……あっ!まさか……!」

 特に欲したわけでもないのに誕生日に贈られたVRヘッドセット。

 花奏がしつこく誘っても絢音が首を縦にふらなかったので、千絵にさりげなく依頼し絢音を動かしたのではないか。彼女の頼みならば、絢音は断らないと踏んで。千絵は目的を知らなくても、結果が同じならば問題はない。

 全ては偶然ではなかった。意図されたものだった?

「君の場合は最初から仕組まれていたのさ。つまり、弟くんもグルだろうね」

「そ、そうだったんだ……わたし、全く何も知らずに呑気に遊んでました……」

 大人たちの大掛かりな思惑がバックグラウンドで目一杯に繰り広げられていたのだ。

 絢音は肩の力が抜ける。

「……まあ、それはともかくとして」

「ともかくとして?」

 とんでもない話なのに、あっさり、さっぱりし過ぎでは?

「アヤさんと見合いをするから服を仕立ててほしいとルカに頼んだんだ。したらば、なぜもっと早く言わないのかと責めながら急いで作ってくれたよ。君に自分のセンスが問われるからと。……どうかな?かっこよく決まっているかな」

 彼が決まっていなかったことは、一度もないのだが(ゲームでも)。

 現実世界でもルカは服飾を極めているのだ。しかも紳士服(スーツ)の仕立てまでも!

「ルカさんお手製!も、もちろんです……!!めまいがするくらい素敵です!さすがルカさん!よくわかってる!」

「ふうん?思わず僕に恋をしてしまうくらいに?」

 小首を傾げて問われて、絢音は顔を真っ赤にする。

「こ、こ、恋……?!」

「うん。これからは僕も本気でいかないと。何せ、君には熱烈に口説かれたわけだからね。負けてはいられない」

 あの瞬間、彼女は遠矢を捕らえたのだ。予定していた実験を後ろ倒しにさせるほどの熱量で。

 ぐっと顔を覗き込まれ、絢音は眼を白黒させる。

「く、口説く?!」

 あれは、口説いたことになるの?!

「あの時は必死で……!単なる八つ当たりみたいなもので……!」

 絢音はあたふたするが、遠矢は取り合わない。

「そんなつもりはなかったと言っても、もう遅いよ。こうして両家が見合いに至った以上、公に婚約者候補として認められたようなもの。僕の当面の目標は君の彼氏になることだからね。……さて、デートはいつにしようか?」

 誘惑するように遠矢は笑う。

「こ、婚約者候補?!彼氏?!デ、デデデデート……?!」

「ああ……大丈夫。君が高校を卒業するまでは、よき兄でいよう。もちろんそれ以上を君が望むなら、やぶさかではないよ。……君は僕にどうして欲しい?」

 そっと引き寄せられ、玲瓏な声音で甘く囁かれた絢音は心臓が激しく脈打ち、気絶しそうになる。

 これは『デレ』?!デレという概念……?!

 恋愛経験ゼロのわたしに、お兄様の急激な最強デレ攻撃は心臓に悪すぎる……!

「情報量が多過ぎてわたしのCPUが仕事をしません!オーバーキル!オーバーキルですよお兄様……!」

 動揺するしかない自分が恥ずかしい……!

 両手で顔を覆い、茹でタコになって固まる彼女を、遠矢は楽しげに眺めていた。

 絢音の思考や情緒は完全にキャパオーバーとなり、翌日は熱を出して学校を休む羽目になった(花奏は呆れていた)。

 うなされながらも、不思議と幸せな夢を見ていたように思う。

 しかしながら毎回このような状態に陥ることを避けるため、絢音の強い要望により、ひとまず兄妹の設定を続行することになった。

 ゲームのみならず、現実世界でも。

総合文字数30万字、突破しました。だいたい30万字くらいで終わるんじゃないかと思ってましたが、予想通りでした(やったー)。

今回は長めです。半分に切ってもいいかなとは思ったのですが、上の句と下の句はあわせてひとつの方がタイトルの見栄えがいいのでそのままにしました。


アヤさんが「ヤダヤダ、お兄様行っちゃヤダ~~ぴえーん!」……みたいな子だったら、遠矢さんは興醒めだし、そもそもさっさとこの話も終わってました(バッドエンドで)。

「本当にやりたいなら止めないけど、生前葬パーチーしてからでもよくないです?!」みたいなこと言ってくる子だからよかったんですよ(笑)。

さすがの遠矢さんも、体当たりでそんなこと言われたら、もう黙るしか無いというか(笑)。ネオ・面白れぇ女が爆誕(笑)。


いよいよ次回、最終話です。

後書きでもあれこれと書きたいなーと思っております。

ふたりの物語、もう少しだけお付き合いください。よろしくお願いいたします(ぺこり)。

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