表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【6月22日更新】オンラインゲーム内で最強お兄様の妹になりました。  作者: 阪 美黎
【Season1】オンラインゲーム内で最強お兄様の妹になりました。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/68

弟来たる(3)

 ヨミの拠点、飛空挺『アヴァリスの矢』。

 空中都市に停泊するそれは、有り余る資金と幻の金属オリハルコンを惜しみなく投じて造挺された戦闘型先鋭モデル(飛行戦艦)なのだが戦闘経験は一度もない。あくまでも用途は拠点、そして移動用の足。

 現状、飛空挺同士の戦闘空域やミッションは実装されてはおらず、そもそもお荷物になりかねない金食い虫の飛空挺を好んで所有するのは一部のランカーとブルジョワプレイヤーだけである。これでは『ゲーム』にならない。

 飛空挺を所有する意義が薄い中、このような偉大なるハリボテが停泊する港は一般プレイヤーが見物に訪れ、いつしか観光名所のひとつとなった。ヨミの拠点として有名な『アヴァリスの矢』の前で記念撮影するプレイヤーも珍しくない…。

『アヴァリス』はオールラウンダーのヨミを頂点(エース)に据えた少数精鋭の戦闘部隊(コープ以外に徒党を組むシステムが確立されていないため、ギルドとして活動している)。彼の友人にして、実質ナンバー2のイツキが飛空挺内の作戦会議室で椅子に座りくつろいでいると、肉感的なダークエルフ姿の美女が大股でやってくる。

「イツキ!ヨミはどこ?飛空挺のどこにもいないんだけど?!」

 騒がしい奴が来た…とイツキは顔をしかめる。

「落ち着けよエンジュ。ヨミなら妹ちゃんからのお誘いを受けて機嫌よく出てったよ。スキップする勢いでな。今頃楽しく兄妹活動してるんじゃないか」

「はぁ?!!」

 エンジュと呼ばれたダークエルフの美女は必要以上に露出度の高いコスチューム姿で胸を揺らしながら、興奮気味にまくし立てる。

「ちょっと何よそれ?!どうせ兄妹ごっこなんかすぐ飽きると思ってたのに…ちょっとイツキ、どうなってんのよ?!」

 ヨミにゲーム内で妹が爆誕したことは早い段階でクランに周知されたが、エンジュだけが当初から不満を露わにしていた。

「俺に聞くな。その兄妹ごっこが案外楽しいんだろうさ」

「ありえない!だいたいアンタがついていながら何なのよこの体たらくは!しっかりヨミの管理しなさいよ!」

「俺はヨミの保護者か。別にいいだろ、あいつが一般プレイヤーと交流してたって」

「アンタってホント昔から放任主義よね!!」

 信じられない、とエンジュは目を剥く。

「ヒドイわ、ヨミ!最近全然アタシを構ってくれないと思ったら…外にオンナを作るなんて…!」

「元々構われてないだろ。それとオンナじゃなくて、妹な」

 訂正するがエンジュの耳にはまるで入っていない。

「おのれザコの小娘ぇぇぇ!!イケメンのヨミにちょーーーっと優しくされたからって図に乗って呼び出すとかナマイキよ!!」

「……ヨミから誘っても気に入らないんだろ?」

「当たり前じゃない!!」

 苛立ちを爆発させるエンジュにイツキは呆れながら息をつく。

 イツキはまだ対面したことがないのでヨミと兄妹設定になったという『アヤ』というプレイヤーについての認識が乏しい。

 ヨミから聞きかじった情報によると。

 公式からのランカーいじめに巻き込まれた完全なる被害者だが、ドラゴンに強襲されトラウマを植え付けられるどころかゲームをやめることなく果敢に立ち向かう決意表明をしているという、なかなか見所のありそうな『妹ちゃん』という印象。

 しかもヨミは初対面に近い彼女に最強武器のブリュンヒルデを貸し与えたという。

 あいつの悪い癖だ。そうやって相手の底をはかろうとする。

 己がレベルに見合わない強力な武器を手にすれば、その力を試してみたくなるのが人情だ。

 人間は遠回りを嫌う。最強武器がその手にありながら、力を行使しないのならヨミのように『強すぎる』からか、または逆に『己が心の弱さや怖れ』を知る者か、だ。

「妹ちゃん側からお呼びがかかったのは今回が初めてだよ。いつもはヨミがストークしてるようなもんだからな」

「つまり今までは気の無いフリして小娘が駆け引きしてたってことでしょ?!本性あらわしたか小娘ぇ!!」

「どうしてそうなる」

「あざとい小娘にアタシのヨミがたぶらかされるなんて…!ゆるせない!」

「…お前()じゃないし、どちらかといえば妹ちゃんをたぶらかそうとしてんのはヨミの方だけどな」

「はぁ?!ふざけるんじゃないわよ!ヨミがなんでザコの小娘をたぶらかす必要があるのよ!ヨミがたぶらかすのはアタシだけでいいのよ!!たぶらかしてくれないけど!くやしぃぃぃぃ!!」

 …と地団駄を踏む。

「……うるさい…」

 何を言っても火に油を注ぐだけ。

 アヴァリスは総勢7人という小さな集団だ。

 エンジュもアヴァリスのメンバーだが飄々としている顔ぶればかりの中で、ヨミを崇拝し、執着心をむき出しにしている珍しいタイプのプレイヤーだ。ヨミはこのキャラクター性を楽しんでおり、特に疎ましくは思っていない様子。…だが。

「エンジュ…ここで喚き散らす分には構わんが、妹ちゃんには手を出すなよ。あいつの不興を買ってアヴァリスから追放されたくなければ、余計な真似はするな」

 まあ、ヨミのことだから個人的に護衛を雇って妹ちゃんを影から守らせてるんだろうけどな。

 静かに釘を刺すと、エンジュはイツキを睨む。

「するかボケ!!ヨミに嫌われたらアタシ生きていけないんだから!!でも小娘は許さん!!」

「…ったく、めんどくせぇなお前…」

「フン!ヨミならこういうところ()カワイイって言ってくれるわよ」

「はいはい、そうですか」

 適当にあしらいながら、イツキは足を組み直した。

 はてさて。今頃我らが大将(ヨミ)は、妹姫と一体どこでなにをしているのやら。

すみません…3話で終える予定でしたが、この後の展開を分けることにしました(4話まで続きます)。短いですが今回はここまで。次回はゲーム内兄妹と実弟サイドの続きです。

オリハルコンって、実際はブラス(真鍮)のことなのですがお話の中では幻の金属という扱いにしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ