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短編小説集

酔った勢いでネックレスを投げたら

作者: 属-金閣

「はぁ~……ただいま~……って、誰もいないんだけど」


 私は玄関で一日履き続けたパンプスを脱ぎ、手に持っていた鍵を靴箱の上にいつもの様に置いた。

 そのまま廊下をとぼとぼと歩き、リビングに辿り着いて電気を付ける。

 リビングは女性の1人暮らしと言う事で、そこまで汚くないつもりだが、人から見たらちょっとだけ、そうほんのちょっとだけごちゃっとしてるかもしれない。

 決して足の踏み場がないと言う訳ではない。

 私はビジネスバックを肩から降ろし、スーツの上着をハンガーにかけてから、洗面台へと移動した。

 そこで着ていた物や履いていた物を脱ぎ、シャワーを浴びた。

 そしてシャワーを浴びた後、洗面台でいつもの様にケアをしてからリビングに戻りベットに腰を掛けた。


「はぁ~さっぱりした。さてと、今日は何を食べようかな」


 私は冷蔵庫の中身を見ようと立ち上がった時、ふと机の上に置いていた画面がひび割れた携帯が目に入る。

 そのままじっと携帯を見つめた後、私はそれを手にとって電源ボタンを押すと、画面にはさっき別れたばかりの彼氏とのツーショット写真が映し出される。

 私は黙ってそれを見つめたが、直ぐに電源を切ってベットへと放った。

 そして冷蔵庫の前に立って冷蔵庫の扉に手をかけた。


「さ~てと、今日は金曜日だし豪勢に……って、そうだった。今日は外食するから昨日食材買わなかったんだった……」


 そう、今日本当は彼氏と優雅に楽しく外食しているはずだったのだ。

 元々月曜日に彼氏から、今日外食をしないかと誘われて、私は久々に彼と会えると思い直ぐにOKの返信をしていた。

 彼とはもう2年も付き合っていたが、ここ最近は互いの仕事の関係上時間が合わずに、まともに会えてはいなかった。

 だけども、いつも連絡を取り合っていた。

 互いの事を心配し合って、たまには電話で話したり落ち込んでいたら励ましたりと、会えないながらにも色々とやっていた。

 だから私は今日が楽しみで仕方なかった……でも彼は違った。


 今日彼から言われたのは、別れて欲しいと言う事であった。

 私は何でそんな事を言うのか分からなかったし、理解も出来なかった。

 すると彼は、私から目から視線を外しながら「好きな子が出来た」と言っていた。

 しかも、既にその事は付き合っているとも言い出し、もう私は頭の中が真っ白になった。

 この人は何を言ってるの? それじゃ、今までのやり取りは何だったの? 遊び? 弄んでいたの?

 そんな事ばかりが私の頭の中をぐちゃぐちゃと駆け巡った。

 すぐにでもそれを口に出してやりたかったが、私の口は動かずただただ彼の言い訳を手を震わせながら聞くだけしか出来なかった。


 もうそこからは、彼がいや、あいつが何を言っているのか覚えていない。

 と言うより、聞こえてもそのまま通り抜けてしまっていた。

 私はゆっくりと席を立ち、店の出口へと向かうと、あいつが慌てて追って来て手首を掴んで来た。

 何かを訴えていたのか、とても必死そうな顔をして口をパクパクさせていたが、私には何にも伝わって来なかった。

 なので掴まれた手首を振りほどき、店を出たがあいつはまだ私を追って来て、再び手首を掴んで来た。

 そしてそこで再びあいつが何かを伝えていたが、何だか分からないので掴まれた手首を振りほどこうとすると、彼が大声で叫んで来た。


「お前も悪いんだぞ! ……っ」


 その言葉だけは、何故か鮮明に私に届いた。

 私は動きを止めてあいつの方を見ると、何故か言うつもりじゃなかったんだと言う様な表情で私の方を見ていた。


「私も悪い?」

「ち、違うんだ。今のは、そんなつもりじゃ」

「……もういい」

「待ってくれ。まだ俺のは――」


 その瞬間、私は手に持っていたビジネスバックをあいつの顔面目掛けて振り抜いていた。

 あいつはそのまま地面に手をついていた。

 それと同時に、私の携帯がバックから飛び出て地面に叩きつけれてしまう。

 私はあいつを見下した後、携帯を拾った。


「ふ、ふざけんな! 急に殴る奴があるか! こっちは話をしようとって言ってんのによ!」

「……話す事なんてないわよ」


 そう返事をして、私はその場を立ち去るとあいつはその場から叫び続けた。

 私は一切足を止めずに家へと帰宅したのだ。

 そんな事を思い出していると、タイマーがピピピピと鳴り響ている事に気付き、私はタイマーのストップボタンを押した。


「ははは……私ったら嫌事思い出してな」


 私は台所でカップ焼きそばに入れていたお湯を流していると、どうしてか涙もこぼれ始め視界が歪む。


「あれ、おかしいな……泣くつもりなんか、なかったのに……ううっ……」


 そのまま台所で私はカップ焼きそばを置いて、恥ずかしげもなく大粒の涙を流しながら、大声で泣き続けた。


「ん、ん、ん……ふっぱ~やっぱりこういう時のお酒は最高に美味しいわね!」


 私は缶に入ってるお酒を一気に流し込んで、焼きそばをすすった。

 その姿は女子とは言えないかもしれないが、今はもうそんな事どうだって良かった。

 ただこのどうしようもないストレスをただ発散したかったのだ。


「あんなに泣いたの高校の部活引退以来わよ! 物凄くスッキリしたけど、あいつの顔思い出すとムカムカするわね! 何が別れてだ! 私が居ながら彼女作ってる奴んなて、こっちから願い下げたボケ!」


 私は後ろのベットに置いていた携帯の画面を見ながら軽くパンチをした。

 そしておもむろに立ち上がり、昔あいつから貰ったプレゼントのネックレスを取り出し勢いよくベットへと投げつけようとした。

 だが勢い余って、それがあらぬ方向へ向かってしまい何かにぶつかり、倒れる音がした。

 その音で私は少し酔っていたが、酔いが一瞬で覚めて音がした方へと近付いた。


「やばいやばい。何か壊しちゃったかも……窓とか壁じゃないよね」


 ここは賃貸マンションの為、何か壊してしまったと言うのはとてつもなくやばいのだ。

 私がネックレスを投げ何かが倒れた所は、壁際で置いていた棚との隙間に何かが落ちており、覗き込むと何か雑音が聞こえてくるのだった。


「……ん? 何か音がしてる?」


 私は棚を少しどかして、手を伸ばし落とした物を拾い上げるとそれは、昔母に貰った小さなラジオであった。

 聞こえていた雑音はそのラジオからであった。


「懐かし~てか、まだこれ入るんだ」


 私はそれを机に置いて、音が聞こえるようにアンテナを左右に振りながら周波数を合わせた。

 すると鮮明に声が聞こえ始めた。


「極みフライデーレディオ! 今日も始めるぜ~!」

「偶然電源スイッチでも入ったのかな? てか、何この番組。初めて聞いたんだけど」


 私は高校時代からよくラジオを聞いていたのだ。

 きっかけは偶然テレビが使えない日に、母から渡されたこのラジオであった。

 そのまま適当にラジオを付けて、自分の部屋にいたのだが以外と聞いているうちに面白くなっていたのだ。

 それからは、勉強しながら付けたり色々なラジオ番組を聞いたりとしていた。


「本当に懐かしいな~昔はよく聞いてたけど、こっちに上京してからは全く聞かなくなっちゃたんだよね」


 私は昔を懐かしんでいると、ラジオからさっきの人の声が再び聞こえて来た。


「イェーイ! 一週間振りだな、元気してたか? それとも元気ありあまってるか? おれっちは、最高に元気だぜー!」

「うわ~何この人」

「おっと、名乗りがまだだったな。知っている人もいると思うが、おれっちはいつも見知らぬ人に向けていつも通りの自己紹介をするぜ! おれっちはカイザーレオン! レオンって呼んでくれ」

「カイザーいいのかよ」

「そして、パーソナリティーはこの人」

「いや、お前じゃないのかよ」

「どうも~佐藤です。紹介ありがとう、カイザーレオンさん」

「こっちは普通なのか。と言うか、テンションが緩い」

「いいっていいxて、さとうっち。いつものことでしょが! アシスタントのおれっちに任せとけ!」

「は~い。と言う訳で今日も始まりました、極みフライデーレディオ。この番組では、皆様からの雑談からリクエスト、お小言何でもお待ちしています。どしどし送って来てくださ~い。それじゃ、カイザーレオンさんメールアドレスよろしく」

「オッケ~! お便りは――」


 その後メールアドレスを呼んだ後、一度そのラジオ番組はCMに入る。


「あははは! 何この番組、面白いな~。今こんなのやってるんだ。てか、あのテンション高い人パーソナリティーじゃないの? アシスタントなのに仕切り過ぎだし、絶対逆でしょ!」


 そして私は、笑いながらその後もその番組を聞き続けた。

 何故かそれを聞いていると、辛かった事など思い出さず笑いがどんどんと溢れ出てくるのだった。

 その番組は基本的に、佐藤とカイザーレオンと言う2人がお便りをもとにフリートークするだけであった。

 どうやら、毎週金曜日の深夜に配信している番組らしく、もう2年近くやっている以外にも長寿番組であると分かった。

 私は偶然今日初めて聞いたが、長く続いている理由が何となく分かった気がしていた。

 それは2人のトークと、多くのリスナーからのお便りだと思った。

 聞いていて全く飽きないし、それどころか引き込まれる魅力があり、私も既にはまってしまっている。


「よしゃ! 次のお便り行くぜ! ペンネーム、眠りにつきたいネムさん。お便り、サンキュー!」

「ありがとうございま~す」

「私は最近彼に浮気れたのですが、彼はもうしないと土下座で謝ってくるのですが、信じてもいいのでしょうか。佐藤さん、カイザーレオンさんの意見を教えて下さい。う~ん、恋のお悩みメールのようだぞ佐藤っち」

「そうだね~。こういうのはいつも難しいよね。男って意志が弱かったりするしね」

「てことは、佐藤っちは、許して信じてやれってことかい?」

「う~ん、結局の所は彼女さんがどこまで信じてやれるかって事だと、俺は思うんだよね。個人的な意見としては~だけど」

「なる、なる。そう言う事ね。ちなみにおれっちは、どっちでもいいと思うぜ!」

「え~カイザーレオンさん、それは適当過ぎでは? もう少しまともな答えをしないと、責められちゃうよ」

「ノンノン! 適当じゃないよ! 結局の所決めるのは彼女。おれっちも佐藤っちの様に熱く語ったら、彼女の気持ちはそっちに偏りかねないだろ。だから、おれっちはあえて言わないのさ!」

「なるほね~カイザーレオンさんなりの考えってわけか。でも、一言くらい言ってあげてもいいじゃない?」

「う~ん、佐藤っちがそこまで言うならだな……そうだな、決められないなら色んな奴の意見を聞くのを進めるぜ! 親、友人、ネットとか色んな奴の意見を聞いて自分なりの答えを出せば納得できると、おれっちは思うぜ!」


 カイザーレオン、思っていたよりまともな事も言える人なのね。

 私はただテンションが高く、盛り上げようとしている人だと思っていたので、少し印象が変わった。

 そこで私は飲み物が無くなったので、新しい飲み物とおつまみにお菓子でも出そうと立ち上がった。

 そして私がラジオの前に戻って来ると、見覚えがある話をしていた。


「そう言えば恋愛相談で思い出したけど、今日ここに来る前に外食してたら、あるカップルが喧嘩してる所に遭遇したんだ。すると彼女の方が店から出て行こうとするんだけど、彼氏が止めるんだ」

「お~お、凄い現場に出くわしてるね佐藤っち」

「でも彼女は止まらず店を出るんだよ。彼氏もその後を追って、外で何やら話していると突然彼女が持っていたバックで彼氏をぶん殴ったんだ」

「わぁ~お! 凄いね。そう言うのおれっち、ドラマとかでしか見た事ないよ」

「俺も一緒だったよ。いや~理由は何だか分からないけど、そう言うの見ちゃうと女性は怒らせたら行けないな~と思っちゃうよ」


 こ、この話って……私じゃない?

 そこで私は今ラジオで自分の話がされているんじゃないかと思い始めた。

 まだそうだと決まった訳じゃないけど、自分が経験した事とほぼ同じ事が何処かで起こったとは考えずらかった。

 その後話を聞いていると、パーソナリティーがそれを見たのが私とあいつが外食していたレストランである事が分かり、完全に私とあいつの話だと理解した。

 そう分かると、私は急に恥ずかしくなりベットへと顔をうずくめて悶絶した。

 あ~こうやって第三者からの視点で語られると、とてつもなく嫌と言うか恥ずかしい……しかも、ラジオで話されるとかムリ……

 私は何とも言えないこの感情を枕に顔をうずくめて、叫んだ。


「でも色々あるにしろ、殴るまでしなくてもいいとは思わないかい?」

「はぁ~? 何言ってんのコイツ。あんたは何にも知らないだ・ろ・う・が!」


 そう言い出したパーソナリティーの佐藤に、私はラジオに向かって文句を言った。

 だが、そんなの伝わるはずもなく佐藤は自分の想像がままの事を口に出し始める。


「ほら彼も何か彼女に言いたかったと思うんだよ。でも、彼女は話も聞かずに出て行くから彼は追うよね。それを彼女はバックで殴るってなると彼氏も可哀想じゃないか?」

「可哀想なわけあるか! あいつは彼女がいながら、他に彼女作った二股野郎だぞ」

「もしかしたらだけど、彼女が彼氏に図星をつかれて、その反動で手が出ちゃったって言う可能性もあるかもね」

「んなわけ、ないでしょうが! どう見ても、あいつが悪い!」


 言いたい放題の佐藤に、私は怒りが収まらずラジオに向かってずっと反論し続けていた。


「おうおう、佐藤っち。変なスイッチ入ってるよ!」

「あ~悪い悪い。ああいうの見ると変に考察したくなるんだよね~」

「もしかしたら、その張本人が聞いてるかもしれないだろ?」

「いや~どうかな。こんな深夜ラジオ聞くような人には見えなかったけどね~。あ、いい意味でね」

「な~にがいい意味でね。だ! 聞いてるっつうの! まぁ、偶然だけど……あ~何か言いたい放題誰かに言われるのはモヤモヤする……」


 私は先程まで感じていた恥ずかしさは消え、今は勝手に私が悪者扱いされる様に言われた事に腹立たしくなっていた。

 だが、この気持ちを相手に直接言ってやりたくても言えず、晴らす事が出来ず余計にいらだち始めた。


「くそ~こいつに直接言ってやりたい。私が何を言われて、あいつが何をしたのかを!」


 私がベットの上でジタバタしていると、放っていた携帯に頭をぶつける。


「いっった~い。忘れてた……」

「オッケ~イ。そんじゃここでリクエスト曲行くぜ! 曲は流れてからのお楽しみだ! それと、お便りもまだ待ってるぜ! どしどし送ってくれよ!」

「そうだ! それよー!」


 私はその言葉で、この気持ちを思いをお便りと言う形でぶつけてやればいいのだと思い付く。

 幸いにもこの番組は生放送で、まだ番組もやっている。

 なら、今からメールを作って送ってやればいいんだ。

 昔も何度かラジオにメールを送った事はあったので、初めではない。

 私はそうと決めたら、直ぐにパソコンの電源を入れその間にひび割れた携帯でラジオ番組を調べた。


「待ってろよ佐藤。全部伝えてやっからな!」


 そして私は無我夢中で、パソコンで今日の出来事を細かく書きだした後、ラジオ番組サイトをパソコンで改めて開いた。

 そのまま書かれていたメールアドレス宛てに、今思えば絶対に読まれないだろうと思う程の長文を送りつけた。

 その時の私は冷静ではなく、ただ何も知らない奴に言われたい放題と言うのが許せないと言う気持ちだけでそれを作っていた。


「はぁ~……何か、物凄い達成感がある……」


 私はベットへとそのまま倒れて、ボーっとラジオをそのまま聞き続けた。

 最初はそれを読んで、謝罪して欲しいと思っていたが、それは徐々に変わっていた。

 今は読まれて欲しい訳ではなく、ただ何があったのかだけでも知ってくれればいいと言う気持ちに変わりつつあった。

 そしてラジオは何事もなく進み、番組も残り10分を切った頃だった。

 私は少し前からウトウトとし始めていて、あまりラジオ番組の内容が頭に入って来ていなかった。


「ん? おっと、ここで急にお便りですか? もう10分もないのに、珍しい! え~と、何々……」

「あまりこの時間でお便りはないですね~。何が来たんですか、カイザーレオンさん」

「おぉ~佐藤っち、これは凄いぞ」


 そこで私は目を覚まして、うたた寝していた事に気付き、もう寝ようとラジオを消そうとした時だった。


「え、本当に聞いてたの? あの喧嘩してたカップルの1人が」

「そうじゃなきゃ、こんな長文送ってこないっしょ! スタッフも驚いたし、どうするか迷った結果渡す事にしたらしい」

「いや~まさか本当にリスナーにいたとは……しかもこんな長文であの時の事を送って来るとね」

「……っ!? も、もしかして私のあの長文読んでる?」


 私は思いっきり起き上がり、さっきまでの眠気も何処かへと消えてしまうほど目が覚めた。

 その後2人は私の長文をあまり口には出さずに読みながら、感想的な事を口にし始めた。


「なるほね。そんな事があったのね~いや~そりゃ、あんな俺が色々と言ってたらこんなの送りたくなるよ~」

「そうねー! 佐藤っちはこれを読んで何を思った?」

「一言、自分勝手に言い過ぎて悪かったと言いたいね。これからは少し言い過ぎるのを自重するけど、あくまで個人意見としてこれからは受け取って欲しいね」

「オッケー! これを送ってくれたリスナーさん! 今も聞いてくれているか分からないけど、佐藤っちを許してやってくれ!」


 その時、私も少しムキになり過ぎてやり過ぎてしまったと少し反省した。

 別に謝って欲しかった訳じゃないし、今考えるとあの時の感情に任せて色々と暴走していたな、私。

 何か申し訳ない気持ちになってしまい、私はラジオを聞き続けた。


「そろそろエンディングで、変な雰囲気になっちまったが、ここでいつものおれっちから言葉だぜ!」


 言葉? もうラジオが終わる時間なのに?

 私はラジオが終わる寸前に何を言うのか気になり、じっとラジオを見つめる。


「皆、誰しも成功も失敗もしているだろう! だけども、それで終わりじゃねぇぜ! その体験を、経験をどう活かすかだぜ! この先死ぬまで人生の選択は続くし、その数だけ体験も経験も増え続ける! いつまでも後悔、成功にしがみついてても何も変わらないぜ! だから、これをきっかけに新しい何を始める事をおススメするぜー!」

「でたね~今日も雰囲気に合わない、熱いカイザーレオン語録。これがないと、締まらないよね~」

「イェーイ! それじゃ皆、最後にいつもの行くぜー!」

「それでは~また来週の金曜日にお会いしましょう。よい週末を~」

「バイバイサタデェイ! ネクストフライデー! イェーイ!」


 そうして、今まで聞いていたラジオ番組が終了していくのだった。

 そしてラジオからはCMが流れ始める。

 私は暫くラジオの前に居た後、ラジオのスイッチを切った。


「ふふふ、何最後の挨拶。バラバラじゃん……それにああいう言葉、毎回やってるの?」


 カイザーレオンと言う結局の所、どう言う人物か分からないままであったが、どうしてかその人が最後に言った言葉が心に響いていた。

 意味があって言っているのか、それともただ思い付いた言葉を言っているかも分からない。

 ただその時私は、何だか背中を押してもらったような気になっていたのだ。

 彼の何気ない言葉だし、そんな意図はなかったかもしれないけど、誰もその意味は分からないからこそ、私は勝手にそう受け取って解釈した。


「うぅっー……何だかスッキリした気分。夜更かしし過ぎたし、そろそろ寝よ」


 私は電気を消し、再び深い眠りについた。

 その後私は、元彼の思い出は全て捨て、新しい携帯を買って新しい日々を過ごした。

 あれかと言うもの、劇的に何か変わった事もないが、私は昔の様にラジオを聞く様になった。

 そして今日も仕事を終え帰宅してから、真っ先にラジオのスイッチを入れる。


「極みフライデーレディオ! 今日も始めるぜ~!」

本作品にご興味をお持ちいただきありがとうございます。

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