23食目 雨に歌う花~紫陽花~
六月です。
休みの日に川沿いを紫陽花を愛でながらお散歩です。
その日は朝から天気も良くて、快調に歩いていました。
ひとくちに紫陽花といっても、色も形もこんなにあるんですね~
だけど――
ポツリ、
ポツ、ポツ、、
うわ、来るな。
雨だ。
梅雨前だけれど、この時期特有の急な天気の下り坂。
いつもは日雨兼用傘折り畳みの傘を持っているのに、この日に限って持ってない。
丁度、寒天工房の暖簾がみえたので、そこに駆け込む。
うん、三組ほど待っている。
この辺りに他に店はなし。
駅も遠い。
川沿いですからね。
ここではテイクアウトで買って帰ることはあっても、中で食べたことはない。
何故ならタバコが吸えないから。
常連さんらしき人が、中で名前を書いておいでと教えてくれたので、記入し、戻って、後ろに並ぶ。
店の脇には縁側があり、小さな屋根がついているので そこに座り、身を引いて雨をしのいだ。
ポツリポツリと降る雨は次第に大粒にかわって来る。
膝は濡れちゃうけど、まだましかな。
ポツン、ピチョン、
ポロロン、ポロン。
ぱたぱたと葉に雨を受けて 紫陽花が歓びの歌を歌っている。
″サァァ……″
大きな葉を空に広げ、花を揺らし、遊ぶ紫陽花は、キラキラと輝いて美しい。
あ、二組入った。次だ。
″ザアァァ――″
ヤバい、本降り。
軒下では間に合わず、暖簾の下に避難させてもらう。
先に注文をといわれ、豆かんを頼んだ。
糖質はいいのかって?
歩いたからいいんです。
本当ならクリーム白玉あんみつ食べたかったのに100歩譲りました。
黒蜜の量で調整です。
席に案内されると、温かいお茶が出て来てありがたや。
店内は雨の音は聞こえず、代わりに清流の音がする。
BGMだろうけど、たまに鳥のさえずりも。
お茶で人心地つき、まったりしていると
「お待たせいたしました」
ふおぉぉ///豆かん!
これでもかというくらい豆がのってる!!
これは大変、寒天を発掘せねば!!
スプーンを差し込み、寒天救出!
うわ、豆が、落ちる!!!
このとおり、寒天もたっぷりです。
黒蜜をかけ、豆と寒天を一緒にすくい、ひとくち、ぱくり。
″コリッ、、″
硬めの赤えんどう豆はコリコリとしょっぱくて、噛むと豆独特のほろりとした口触り。
かんてんはぶりんぶりんしている。
ちゃんと、寒天の味がする!
あま~い黒蜜と、しょっぱい豆、すっきりとした寒天がなんともいえないバランスを保っていて、うはぁ///幸せ(*´∀`*)
黒蜜、結局全部かけちゃいましたが、これから歩いて帰るからいいんです。
量は結構あったけど、ぺろりと食べちゃいました。
「長らくお待たせして申し訳ありませんでした」
「いえ、雨でしたし、動けませんでしから、雨宿りさせていただいたので、丁度良かったんです。ありがとうございます」
「こちら、サービスです」
お待たせしたから、と、サービスで焼き団子とアイスコーヒーが出てきた。
これは、サービスの粋を越えてるデショ!?
チョコもついてたんですよ(←持って帰った)
お団子は糖質が……
しかし、そんな事は言えません。
残すことも出来ません。
お姉さんの好意を無下にすることはしたくない。
「ありがとうございます!」
お団子は焼きたてみたらし団子。
″パリッ″
うわあぁ、外側、パリッパリ!
そして、
″もちっ″
中はふんわり温かく、もっちり柔らかい。
ん~///なんだこれ!!
おもちよりも優しくて、つるりとした焼き団子は、上品な噛み心地。
″ぱりっ、もちっ、、″
みたらしは甘いだけではなく、甘じょっぱくて、お団子の焦げ感と引き立てあっている。
最高ですね!
「ご馳走様でした」
帰りにお持ち帰りの寒天と心太の徳用パックを購入。
タレと黒蜜をサービスしてくれた。
タレとか海苔とか黒蜜がついてないから安いのに、セットと同じ内容になっちゃってますよ、お姉さん……
「ごめんなさいね、豆のいいのが入ってこなくて」
いやいや、とっても美味しかったです!!
「また来ます」
「ありがとうございました」
店から出ると、雨は上がっていた。
日常の中にある、ちょっとした非日常。
癒しの空間。
そこも、異世界だった。
さて、現世に戻ってきましたワタクシ、食べた分、歩いて帰ります!
◇◆◇◆◇
″自分はこうだ″と決めつけないで
ひと色なんてあり得ない。
可能性は無限大。
人も、花も。
陽に輝くアジサイの花――




