寡黙な彼と、感情がパンク気味の彼女
「それ、ホントに!?」
「ほんと、ほんと!」
「今度みんなで行こうよ」
私達が昼休みに教室で盛り上がっているところに、のっそ、のっそと大きな体を揺らして柔道部の部長がやって来た。
「ちょっといいか?」
野太い声で彼が言う。
(いつ見ても、でけーぇ)
私の前に立つ彼は見上げるほどの巨体だ。こちらは座っているのでなおのこと大きく、上を向いたままだと首が疲れてくる。
「そこ、俺の席」
見下ろす彼はぼそりと一言だけ喋った。
私が彼の席に座っておしゃべりしていたので、自分が座れず困ったのだろう。
「だから何?一緒におしゃべりしたいワケ?」
私は言ってやった。
クス、クス、クス・・・・・・
友達が横で声を殺して笑っている。
「いいよ、混ぜてやっても。けど・・・・・・ひゃわっ!!」
思わずかわいい声を出してしまった。
彼はいきなり私の脇を抱えたのだ。そして、ひょいとまるで子供でも持ち上げる様に私の事を力づくでどかしてしまった。
「いきなり触んな!バカ!」
彼は私の事など無視して席に着いた。腕組みをしてまるでこちらを相手にしていない。
「セクハラだ!セクハラ!責任とれ!」
クス、クス、クス・・・・・・
友達はまだ横で笑っている。
「笑うな!」
「アンタさぁ、言葉はきついけど、分かりやすいよねぇ」
「あぁ、それ分かるぅ」
「は?」
二人はニヤニヤしながら行ってしまった。
私もしょうがなく自分の席に着いた。私の席は彼の隣だ。
その彼から見えないように反対側の手で小さくガッツポーズをした。
(よし!今日も会話出来た!)
今日の作戦は上手くいった。私が彼の席に座っていれば、自然と彼は私に話しかけるしかなくなる。
(うち、天才!)
この為に友達にはジュースをおごって、ここでダラダラと喋っていたのだ。一人で座っていては流石に怪しまれてしまう。
私は彼を盗み見た。
(気付いてないやろなぁ、うちの淡い恋心なんて。ああ、切ないわぁ、せつない)
彼は私の視線に気付くことなく真っ直ぐ前を向いたまま腕を組み、微動だにしない。
こちらに気付いていないのをいい事に、もう少し覗き見る。
彼の指に目が止まった。毎日柔道着を握りしめて練習しているせいか、彼の指は見るからに皮が厚く太い。
(なんなん!?さっきの指の感触!めっちゃ、ごっつかった!!まるでアレ!ジャガイモの細長い方のやつ・・・・・・何だっけ?そう!メークイン!お前の指はメークインかっ!って今度言ってやろ。あんなんで揉まれたら私の胸どうなるんよ!やばいやばいやばい!ていうか、さっきほぼ揉まれたし、脇チチ全部持ってかれたし!)
さらに盗み見る。
その太くゴツイ指が握っている腕に目が止まった。
(制服、ぱっつんぱっつんやん!また太くなったんと違う?もしかして制服の下にでっかい方のペットボトル入ってるん?見るからにカッチカチやし。あれやん、ペットボトルのサイダーをフタ締めたまま振っておいたぐらいパンパンやん。触ってみたいわぁ・・・・・・さっきうちは触られたんやし、触り返したって・・・・・・あかん、あかん!そんな事したら好きやって気付かれてまう)
流石に私の視線に気付いたのか彼がこちらをチラッと見た。
「なに見てんだよ!」
「ああ、スマン」
彼はまた前に向き直った。
(ああ゛~ッ!!うちのアホ!なんで普通に喋れへんのやろ?違うねん、ホンマはいっぱい喋りたいねん。昨日帰ってから何してたん?とか、好きな食べ物なに?とか、普通に聞けばいいのに。好き避けとか小学生か!もーっ!!なんならアンタの方からその太い腕で抱きしめたってええし、うちはエニタイムイズOKや!ふぉーみー!!)
私の溢れる思いとは逆に無反応な彼を見ていたら急に寂しくなってきた。
(なんで、うちの周りにはチャラい男しか寄ってこんのやろ?うちの見た目のせい?金髪は地毛やっちゅうねん!ハーフなんやからしょうがないやん。うちは寡黙でたくましくて硬派な男が好きやねん。パパもいつも言ってるもんな”男は黙ってじょうわんにとうきん”って。ジョウとワンって誰?別に誰でもいいけど、黙ってるだけでジョーもワンも逃げ出すくらい強い男が好きやねん。守ってほしいねんうちの事)
たくましい彼は私の理想そのままだ。
(はぁ、ええなぁ・・・・・・どないしたら、もっと仲良くできるんやろ?せや!うちも柔道部に入ったらええんちゃうか?そしたら毎日練習で堂々と触る事出来るし。同じスポーツで共通の話題も出来る!・・・・・・でも、うち柔道詳しくないからなぁ、確か寝技が48手あるんやったっけ?ようしらんけど。彼に手取足取り教えてもらったら仲良くなれるんとちゃうか?)
ガタンッ!
私の妄想を破って、彼がその大きな体をのっそりと動かし私に向き合った。
「な、なんだよ!」
「あのさぁ・・・・・・」
(え!?なに??怒ったん?違うねん!!うち、怒らすつもりないよ!)
「顔、赤いぞ」
「は?なっ!ちょっと熱っぽいだけだよッ」
「それに、こっち見ながらずっと口が半開きだし」
「べっ!別に癖だよ癖!アホ面だって言いたいのかよ!」
仏頂面の彼が珍しく微笑んで言った。
「お前、俺の事好きだろ。バレバレだぞ」
(く―――――っ!!バレてたぁ!!)
あははははっ!!
向こうから友達が爆笑する声が聞こえた。
恋愛ショートショート第3弾です。
これからこのシリーズで少しづつ書き溜めていこうと思ってます。
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