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第5話 チートではないスキル

 村長の話を聞き終わって、3日ぶりに家に戻ると、留守中にアンジェラが遊びに来たらしい。

 しばらく姿を見ないので心配していたそうだ。


 翌日、俺はアンジェラの家を尋ねてみると、家の近くでのんびりしてるアンジェラを見つけた。

 前世の記憶が目覚めるまで気づかなかったが、どうしてミノタウロスの男はモンスターっぽい姿なのに、女はツノは生えているものの人間っぽい容姿なんだろう?

 あらためて、人間の視点でアンジェラを見るとすごく魅力的じゃないか。

 特に、その豊満なバスト。これはまぁ、牛族の女すべてに共通のことなんだが。


 そして、男から見るととても小さい。たぶん、人間としての普通サイズなんだろうが、男がでかすぎるんだろうな。

 小さいから、か弱く見える。実際は男とさほどかわらない能力を持ってるから驚きなんだ。

 母さんとかも、あの小さい体で大きな岩を放り投げてたのを見たことあるし。


 そういう世界ってわけだから、納得するしかない。


「アンジェラ」

 俺が声を掛けるとアンジェラは嬉しそうな顔をして手を振ってくれた。


「バルト、どうしたの~?」

「アンジェラが俺の留守中に尋ねてきてくれたって聞いたから」

「あれ、そうだっけ~?」

 あいかわらず、どこか抜けた感じでおっとりしてるな。そこがまた可愛いんだが。

 先日尋ねてきた割には特に用とかは、なかったらしい。それなら、それでいいや。

 会いたくなったから会いに来る。自然でいいじゃないか。


「あ、その草より、こっちの葉っぱがギザギザの草のほうが美味しくて栄養もあるぞ」

 前世の記憶が戻るとともに、閻魔さんからもらったスキルも目覚めてくれた。


 「鑑定」スキルらしい。

 周りのすべてのものの詳細な情報がこれで理解できる。

 これまで、すべて「草」って認識だったんだが、当然のようにこの草原にはいろいろな種類の草が生えている。

 草の種類ごとに栄養価も違えば味も違うんだ。

 一部の草には毒のあるものもあったようだ。致死性の毒のある草こそないが、よくよく思い出してみれば時々お腹を壊していたのは、その毒草を気にせず食べていたせいらしい。


「本当だ。こっちの草のほうが美味しいね~」

 アンジェラは美味しそうに俺の教えた草をもぐもぐしている。可愛いじゃないか。


 この鑑定スキルなんだが、草や物は詳細な情報がわかるので、他の獣人を見たらステータスみたいなものがわかるのではと期待したんだが、名前と種族と性別くらいしかわからなかった。

 名前も知ってる獣人しか表示されないし、獣人に対しては役にたたないスキルだな。


 他に身についたスキルとしては、「アイテムボックス」がある。

 これはすごいと思ったが、アイテムボックスに入れても重さは感じるし、持ちすぎると重くて動けなくなる。

 見えない大きなカバン程度の使い方しかできないじゃないか。

 まぁ整理しないで出し入れできるから、便利といえば便利なんだが、まったくチートではないな。


 そして、最後にこれは少しだけ感動したスキル、「魔法」だ。

 なんと四大元素魔法が使えるようだ。


 火属性魔法「ファイヤー」 対象に火をつけたり、温めたりできる。

 水属性魔法「ウォーター」 200リットル程度までの水を出せる。

 土属性魔法「アース」 体と同じくらいの大きさの土や砂を出せる。

 風属性魔法「ウィンド」 自分の周りに風を起こすことができる。


 すっごく微妙なラインナップだよな。生活が少しだけ便利になる感じだ。アイテムボックスの時にも思ったけど魔法名が英語ってのもなんか微妙な感じだし……

 干ばつとか起こったら水属性魔法はとても役立つかもしれないが、後は水を汲んだり、風呂を沸かしたりするのが便利って程度じゃないか。


 「世界のバランスが崩れない程度のちょっとしたスキル」って言ってたけど確かにこれらじゃ、世界のバランスは崩れそうにないな。

 少なくとも戦闘の役には立ちそうもない。戦闘とかなければないに越したことはないんだが。

 まぁどのスキルも確かに便利で使えるスキルであることは間違いないから、ありがたくもらっておくことにしよう。


「この草、美味しいけど少ないね~」

 他事を考えてたら、手近にある葉っぱがギザギザの草をアンジェラが食べ尽くしてしまったようだ。

 他を探せばいくらでもあるだろうけど、移動するのは面倒そうだ。


「それじゃ、じっちの青っぽい先っぽの尖った草はどうだ?

 ちょっと変わった風味だから、好みによるかもしれないけど」

 実は俺はこっちの草のほうが好きなんだが、家族には評判はイマイチだったのだ。


「これ、美味しいね。わたしは好きかも~」

 ひとつまみしてアンジェラは嬉しそうにそう言う。

 俺と好みが一致していて何よりだ。


「でも、バルトのことのほうがもっと好きだよ~」

 平気な顔のまま恥ずかしいことを普通に言ってくれる。

 思わず俺の方が顔を真っ赤にしてしまったじゃないか。


 俺の顔が真っ赤になったのを見ても不思議そうな顔をするだけで、アンジェラは草を食み続ける。

 しっぽがリズミカルに振られているから、きっと満足なんだろう。


 こののんびりとした平和な日々が続いてくれることを俺は祈るだけだ。

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