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第3話 村長の秘密

「村長のところに行ってくる」

 翌朝、俺は両親にそうことわって出かけた。

「行っておいで」

 別に理由も何も聞かれない。行きたいところがあれば行けばいい。

 何か俺が行きたくなっただけと思ってるんだろう。

 まぁ間違ってないが。


 途中でおなかがすいたら適当に草を食む。

 別にこの草原はどこで誰が食べようと構わない。

 さすがに他の人の家の真ん前で誰かが食事をしてたら気になるだろうけど、そうでなければ別に誰の土地ってわけでもないからな。


 村長の家はこっちの方向。

 それだけの知識で適当に歩いてるので、まっすぐ着くはずもない。


 適当にある程度の距離を歩いては、誰かに会う度に、

「村長の家の方向ってこっちだっけ?」

 と適当に聞いてみる。稀に「知らない」って人もいるが、たいていは、

「いや、あっちだよ」

 と方向を修正してくれる。


 少し行き過ぎて逆戻りすることになったが、太陽が登り切る前に村長の家に着くことが出来た。


 村長はもうずいぶん年取っている。牛族の寿命は約50年、村長の子どももすでに独立して村長の家は奥さんとの二人暮らしのようだ。

「こんにちは、村長さん」

 俺が挨拶すると、村長は、

「どちらの子じゃったかな?」

 そう尋ねてきた。前に会ったことがあるが、そうそう子どもの顔までは覚えてないであろうからムリはない。


「アルギスの長男のバルトです」

「ほう、大きくなったのー。それでなんのようじゃ」

「この世界のことを知りたくて……」

 俺は正直にそう尋ねた。


「ほー、珍しいことを言う子じゃのー。

 そのようなことを言ってくる子は初めてじゃ」

 やはりそうなのか。

 牛族って皆のんびりしてるから、こんなこと考えるやつ自体が珍しいんだろう。

 そして実際に行動に移すやつとかは皆無なんだろうな。


「もしや、お主は前世の記憶持ちなのか?」

 いきなり村長に確信を突かれて俺はドキリとした。

 なんてことを言い出すんだ。でも前世の記憶持ちってそんな知識を持ってること自体、村長って何者?

 もしかして村長も……


「いやいや、わしは違うぞ」

 また俺の言いたいことを先回りして……


「どうやら図星だったようじゃな。わしは違うがわしの死んだ父親がそうでな。

 稀にそういう前世の記憶を持った者が現れるんじゃ。

 そうした者はこの世界のことを知りたくなるらしく、わしの父親もいろいろ調べたようじゃ。

 わしは小さい頃からあれこれ聞かされたので、いろいろと知っておる」

 そういう事情だったのか。どうやら、村長に聞きに来たのは大正解だったようだな。


「わしには不要の知識で、わしの子どもたちにも半分も伝えてない。

 興味なさそうだからな。

 だが、お主が聞きたいのなら、わしの記憶にある限りの話をしてやろう」

「是非、お願いします」

 話を聞かせてもらえるようだ。目的を達成できそうだな。


「よかろう。だが、わしの話はずいぶんと長いぞ。

 このまますべて話すと何日もかかる。

 一度帰って、親にちゃんと話してから来るのじゃ。

 話が終わるまではわしの家に泊まるがいい」

 確かにそのとおりだな。「村長のところに行ってくる」って言ってきたけど、普通に聞けば今日のうちに戻ってくると思ってるだろうな。

 村長の家は遠いから、毎日少し聞いては帰るってのを繰り返していたら、話を全部聞くのにどれだけかかるかわかったものではないだろう。


「わかりました。一度帰って、また明日出直してきます」

「んむ、それがいい」


 俺はとりあえず、家に引き返すことにした。

 不思議なもので家の方向だけは昔からわかるんだよな。帰巣本能というものだろうか。

 俺は迷わずに家に向かって歩き始めた。


 明日来る時のため、少し行っては振り返って目印などを求めるが、草原は景色が変わり映えしなくてなかなか難しいものだ。「村長の家こちら」って感じの標識でもあればいいんだが。

 さすがに材料もないし、そんな標識をたてることもできない。

 稀にある岩や、誰かの家などを目印に覚えながら、家路についた。


 当然、途中でおなかがすいたら草を食んで、時々昼寝などをしながら。

 のんびり時間をかけて家に帰ったため、家に着いたのは日が暮れる寸前であった。

 確かにこんなことをしていたら、何日かかっても話がほとんど進まないな。

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