第2話 先輩とカブトムシ(1)
「はーい!到着でーす!」
「はぁ……。いや、てか確認なんですけど、カブトムシを捕まえに来たんですよね?」
「え?元よりそのつもりだよ?」
不思議そうにこちらを見つめる先輩の、少し汗ばんだ額とこちらを覗き込んでくる仕草に妙な艶っぽさを感じる。ドキっとしなかったのか、と言われればそれは嘘になる。……いや、やっぱりただ虚を衝かれただけ、ということにしておこう。
「いや、じゃあ猶更なんでこの場所なのかなって思いまして」
そう、僕が先輩に連れられやってきたのは、何の変哲もない、ただの小さな公園だったのだ。そこにあるものと言えば、この夏の熱い日差しに照り続けられ、灼熱と化した滑り台くらいしかない。もし仮にあんなもの滑ったのなら、瞬く間に焼かれてしまうだろう。焼き豚ならぬ、焼き人間の完成といったところだ。
「カブトムシを捕まえたいんだったら、もっと木が生い茂ってるところにいけばいいんじゃないんですか?例えば、校舎裏にある雑木林とか」
「いやいや廣瀬くん、そんな場所にカブトムシが寄ってくるわけないじゃん。カブトムシはクヌギとかコナラから出る樹液を好むんだよ!」
えっへんと胸を張り、少し興奮気味に先輩はそう言う。
確かに周りを見回してみると、クヌギやコナラといった広葉樹が目立つ。本数はそれほどあるわけではないが、おそらく木の本数よりも木の種類のほうがカブトムシを捕まえるためには重要なのだろう。
個人的にも雑木林よりかは、カブトムシ以外の虫が少なそうな、こちらのほうが好印象である。
――――たまたまこの公園にクヌギとコナラがあって助かった。おそらく雑木林なんかに行くことになっていたら今頃全身、虫だらけになっていたことだろう。