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マネーライフ:悪役貴族の人生やりなおし計画  作者: Richard Roe
第二章 雑に始まる学園編、でも学園生活なんかより迷宮に潜ることを優先する
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それから

 帰ってきた地上。成長した体格。


 同級生たちは、クーガーの変化にぎょっとすることとなった。

 たった一週間で身長が伸びて、筋肉が少し増えているのだ。どれだけ成長期なんだ――と周囲が唖然としたことは言うまでもなかった。


 一方で、ほぼ同時期に姿を消したビルキリスは、さほどではない。体格がそれほど変わったわけでもなく、身長がそれほど伸びたわけでもない。強いていえば、迷宮内での食事量の増加からか、少しだけ肉付きがよくなったような気もするが――その程度である。

 そもそも表向きにはビルキリスは、病に伏して一週間ほど休んでいたということになっているので、体格が変わっては困るのだ。

 その意味では、注目を浴びたのは良くも悪くもクーガーのみであった。


(まあ、一週間じゃなくて700日間だからね。二年近くだよ、二年)


 クーガーの変化は、外見だけの範疇には留まっていない。きちんと実力的な面も大きく伸びているのだった。


 毎日行ってきた、スポーツ科学に基づく腹筋→腕立て伏せ→スクワット→……という循環式サーキットトレーニング。

 毎日のようにミミズ狩りを行って魂を集め、魔石を食べ、少しずつ増強してきたクーガー自身の魂の器(経験値)

 他にも地下ダンジョンに潜る際、自然と鍛えられてきた風魔法の技術や、ミミズ狩りの際に練習してきた数々の下級魔術などがあるが――全てはクーガーの血肉となっている。


 精密な魔術を得意とするビルキリスがずっと側にいたことも大きい。彼女に色々と魔術のコツを教えてもらって、クーガーの魔術は以前よりも格段に巧くなったのである。


 付け加えるならば、契約を結んだ亡霊パウリナも、魔術に造詣が深いので、クーガーは色々な知識を学ぶことができた。

 失われた古代魔術や妖精魔術に至っては、詳しい文献などが少ないため、ビルキリス共々これ幸いと色々聞き込んだのだった。

 そのおかげで、例えば、妨害魔術や特殊な無詠唱魔術などを磨くことが出来たのである。

 恐らく、古代魔術や妖精魔術に限定すれば、クーガーたちは同級生の誰よりも詳しいであろう。


 精悍な肉体。成長した魔力。そして磨きをかけた魔術の技巧と知識――クーガーはまた一歩、確実に強くなったのである。






 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△






 おんぼろ寮が悲惨なことになっていた。元からおんぼろで悲惨だったが、よりひどくなっている。


「帰ってきたら寮室がいきなり何者かに荒らされてるんですけど」


 おんぼろ寮に帰ってくるのも二年ぶりだ、と感慨に浸りながら足を踏み入れると、そこは既に荒らされ放題になっていた。

 理由は不明である。一週間放置してたとはいえ、普通こんなに荒れるはずがないのだ。

 つまり、何者かが侵入して荒らしたということに他ならないだろう。


(まあ、よく考えたらこのおんぼろ寮じゃ、防犯機能もあってないような物だもんな……)


 クーガーは苦笑いした。鍵もなく、縄を結ぶだけの扉。これでは縄を切ればすんなりと侵入できてしまう。

 ひどい話だ、とクーガーは思った。

 残念なことに、部屋に置きっぱなしにしていたクーガーの衣服や金貨が綺麗さっぱりなくなっている。盗まれてもいいやと思ってこの寮に置いていたものだったが、まさか本当に盗まれるとはクーガーも思っていなかったのだ。

 おかげで、このおんぼろ寮で生活するのが少し怖くなったほどである。


(よし、こうなったら犯人を徹底的に懲らしめてやろうじゃないか――)


 荒らされた部屋の中でクーガーは、にやりと悪いことを企むかのような笑みを浮かべるのであった。






 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△






「まずは落し穴のトラップ。これは王道だな。この中にミミズを大量に入れておくのもいいかもしれない」


「他にも扉を開けたらミミズたっぷりのたらいが落ちてくるのも面白いな」


「どうせならあれだ、このおんぼろ寮の中をダンジョン化させておこうか。ミミズを放し飼いしておけば凄いことになるだろう」


「さあ、泣きわめく姿が楽しみだな。今度来たら、素っ裸にひんむいて、手足を縛って、ミミズを大量に体に這わせてやる。ミミズ責めでたっぷり可愛がってやろうじゃないか、ははははは――」


「! ……誰だ!」


「……え、ビルキリス……王女……?」






 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△






 ビルキリス王女は顔を真っ赤にして、「……どうしてもですか」と蚊の鳴くような声を出していた。

 クーガーは絶句してしまった。


「違います違います違います! 殿下、違います!」


「素っ裸にひんむいて、手足を縛って、ミミズを大量に体に這わせること。……クーガー、あなたはそういったことを嗜んでいらっしゃるのですね。深く、深く勉強になりました。王族として、人の営みの一面に触れられたような気がします」


「流石にこれは人の営みじゃないです!」


「きっと、5000兆あります、なりませんか、と私にとんでもないことを要求するのでしょう」


「5000兆あってもならんでしょうそれ!」


「……」


「いや本当に違いますから……殿下にはそんなことしませんから……」


 ――ひどい誤解であった。

 なまじ、クーガーが屋敷幽霊(パウリナ)にひどいことをしている姿を見ているからなのか、ビルキリスは随分と警戒しているらしい。ミミズを常備してることも悪い方向に働いた。あと、彼女にド変態だと思われていることも負の要因であった。

 おかげでクーガーは弁解に時間を要したのだった。


(毎度毎度タイミング悪くビルキリスが来てるだけなんだけどな……。毎回タイミングが悪いからなのか、凄い誤解を受けている気がする)


「……なるほど、泥棒に入られて家財を奪われたのですね。確かにこの古い寮では、防犯対策も堅牢ではないでしょう」


「そうなんです、泥棒に入られてしまったので、ならば仕返しをしてやろうと考えてましてね……」


「分かりました」


 ビルキリスは静かに一つ頷くと、その端正な唇をわずかに笑ませて呟いた。


「私も一緒に住みましょう」


「そうなんですよ仕返しを――え?」


「一緒にここに住みます。それで解決するのではないでしょうか。貴方の防犯対策も、私の毒殺防止も、両得をはかれるのではないかと」




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