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【207】 もしも
木漏れ日のなか
振り向きざまに
いたずらっぽく
笑うキミを
掴まえようとすると
走り出してゆくキミを
もっと強く抱きしめて
そのまま離さなければ
夏の午後の砂浜
転ばぬようにと
差し出したその
繋いだ手と手をずっと
握りしめていたならば
木枯らしの中を
向かい風の中を
朔風にも負けず
ふたりで乗り越えて
ゆけたのだろう
目まぐるしく変わりゆく
世界の中で支え合って
進んでゆけたのだろう
その時は気づかぬままに
過ごしてしまったと
通り過ぎた季節を想う
今はもう戻らないあの日
過ぎてから気づくあの時
キミのいない今日
お読み下さりありがとうございました。