クレイとユリアとリアルフ
翌日。
エミルは朝に弱いため、一人で登校する。
教室にいたのはフラントス……と、一匹の獣。
「おはようございます。」
「ああ。
……で、そこの獣はなんだ?」
艶やかな漆黒の狼の様な見た目。その両目は深い紅で、まるでフラントスと正反対。だが、魔獣にしてはすごくおとなしい。
「この子はリアルフです。
私の使い魔なので、安全だと思いますよ。」
「そうなのか。
にしても、おとなしいな。」
使い魔、か。使い魔は確か学園内でしか習えないはず。どうやってしたのか気になるが……もしかするとあの噂の力によるものかもしれない。
フラントスが頭を撫でれば、フラントスの手のひらにすり寄るリアルフ。
「……なあ、触ってもいいのか?」
「ガウッ、ガウ!」
「ええ、どうぞ。」
その様子を見て、触りたいと思ってしまい許可をとった。簡単に許可が下りて、寄ってきたリアルフを撫でる。触り心地がとてもよく、心が和む。すり寄ってくる様子はまさに犬で、弥生が飼いたいと言っていたのをふと思い出した。前まではそれだけで少しつらかったが、今はそうでもない。……ようやくあきらめがついたのだろうか。
「ふっ……随分人懐こいな」
「家族にはなかなか懐かなかったんですが……シュミリア様は特別、でしょうかね?」
「そうなのか?」
フラントスが言っている言葉に驚く。
俺から見て、リアルフは人懐こい犬だ。今だって、嬉しそうにすり寄ってくるし警戒心も何もない。そして、フラントスが俺は特別、といったことにも心がはねた。最近会ったばかりで他人行儀だったフラントス。うれしいのはうれしいが、どこか違和感があった。
初めて会ったときに感じた、弥生の面影。今の言葉にも、少し似たような雰囲気があった。フラントスはほほ笑んでいるが、どこか懐かしそうにも見えて。もしかしたら、とも思うが考えすぎだろうとその考えを打ち消した。